第10話 あれれ〜オッドアイになってる〜

契約を結んだ後、俺は一人で部屋に戻った。部屋に入ると、奇妙な静けさが広がっていた。普段と何も変わらないはずなのに、どこかが違う。何かが、俺の中で変わったのは確かだ。


「ハスターとの契約…本当に、あれで良かったのか?」


俺は無意識に自分の手を見つめていた。手のひらに浮かぶ微かな青白い光。それは、あの瞬間にハスターから受け取った力の証のように感じられた。しかし、何よりも違和感を覚えたのは、自分の目だった。


「なんだこれ…」


鏡の前に立つと、目の前の自分が異様に映った。そこに映っているのは、俺ではあるけれど、どこかが違う。目が、なんだかおかしい。左目と右目で色が違うのだ。


「オッドアイ…?」


鏡の中で、俺は目をこすった。確かに、左目は普通の黒色だが、右目だけが深い緑色になっている。その色合いは、まるで夜空に浮かぶ星々のように神秘的で、どこか異世界から来たような輝きを放っていた。


「こんなこと、あっていいのか…?」


俺は少し戸惑いながら、目を閉じたり開いたりしてみた。すると、右目の緑色がさらに鮮明に浮かび上がり、眩しく感じるほどだった。何度目をこすっても、変わらない。


「まさか、ハスターの力の影響…?」


その瞬間、頭の中である感覚がよぎった。それは、あの邪眼の力と同じような感覚だ。ハスターとの契約後、何かが俺の体の中で目覚めたのは確かだ。その力が、俺に変化を与えたのだろう。


「まあ、最初から思ってたけど…僕ってどうしてこう、普通じゃないんだろうな。」


あきらめたように自分に言い聞かせる。だが、どうしても心の中で不安が芽生えてきた。オッドアイの力は、ただの変化に過ぎないのか、それとも新たな力が目覚めた証なのか。


そのとき、ふと思い出したことがあった。以前、邪眼を手に入れたときに感じた、あの冷たい力。もし、このオッドアイもその力の一部なら、もう一つの能力を得ることになるのかもしれない。しかし、同時にそれは危険を伴う力でもある。制御を誤れば、暴走してしまう。


「うーん、どうしようか。」


俺は再び鏡の前で、右目をじっと見つめた。その緑色の瞳は、ただのオッドアイではないような気がした。まるで、何かを探し、見抜こうとするような視線を持っている。その瞬間、頭の中である言葉が浮かんできた。


『視界の先にあるものを、すべて見通すことができる』


その言葉が、まるで俺の体に刻まれたように響いた。オッドアイには、それがあるのかもしれない。視界の先にあるものを見通す力。それは、ただの予感ではない。実際にその力を試すべき時が来ているように感じた。


「試してみるか。」


そう決意した俺は、部屋の窓を開けて外に目を向けた。夜の街は静まり返っていて、街灯の光がどこか幻想的に見える。しかし、その平穏な光景も、俺のオッドアイが見た先では全く異なるものになるのかもしれない。


「見通してやる…」


深く息を吸い込み、右目をじっと集中させた。その瞬間、何かが視界に入った。街の中を歩いている人々が、まるで透明になったように見え、さらにその下に潜む黒い影のようなものが浮かび上がった。それは人々が隠している本当の姿、またはその内面から浮かび上がる闇の部分のように感じられた。


「これが、オッドアイの力…!」


その力は予想以上に強力で、俺の視界に存在するすべてのものが次々と暴かれていく感覚があった。人々の表情、心の中の葛藤、暗い欲望――それらが、俺の目の前に次々と現れてくる。


だが、その力には限界があるようで、数秒も経たないうちに、目の奥に鋭い痛みを感じた。まるで、力を使いすぎたときのような鈍い痛みが広がる。


「やっぱり、使いすぎは危険だな…。」


俺は目を閉じ、その痛みをやり過ごしながら、力を使うことに対して少し警戒心を抱くようになった。しかし、同時にその力がどれほど強力で有用であるかも実感した。


「まあ、今後は慎重に使うしかないか。」


俺はふうっとため息をつきながら、オッドアイの力を再び封じ込めることを決意した。そして、この新たに手に入れた力が、俺の人生にどんな影響を与えるのか、まだ知らないままであった。


だが、一つ確かなことがある。このオッドアイは、俺にとって重要な力であり、今後の戦いにおいて決して無駄にはならないだろう。


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