第9話 ハスターと友達の契約を結ぶ
あれから数日、俺の心はまだ揺れていた。邪眼の力を手に入れたとはいえ、その使い方に戸惑い、暴走する恐怖におびえていた。そんなある日、予期せぬ人物が俺の前に現れた。それは、ハスター。クトゥルフ神話の中でも名高い存在で、宇宙的な力を持つ邪神だ。
◆
その日は、いつも通りの放課後。俺は特に用事もなく、家に帰ろうと歩いていた。だが、いつもと違っていたのは、どこからともなく感じる奇妙な気配だった。振り返ると、そこには現れるはずのない人物が立っていた。
「おお、阿佐間融。久しぶりだな。」
その声に振り向くと、目の前に現れたのは、ハスターだった。奇妙な、異様な存在感を放つその姿。目を合わせた瞬間、俺の中に何かがざわつくのを感じた。
「ハスター……。お前、なんでここに?」俺は驚きながらも、警戒を解かずに問うた。
「うん、君がどうしているか気になってね。」ハスターは軽く微笑んだ。その笑みは、どこか人間らしさもあり、しかし同時に深い空虚さを感じさせるものだった。「君、あの邪眼の力を手に入れたそうだな。」
「それが、どうした?」俺は慎重に言葉を選んだ。
「ふふ、別に悪いことじゃないさ。だが、君がそれを使いこなすためには、少しばかり手助けが必要だろう?」
その言葉に、俺は不安を感じた。ハスターが俺に近づいてきた理由は、ただの好奇心ではないだろう。
「手助け?お前が?」俺は警戒しながらも尋ねる。
「うん。」ハスターは何も気にする様子もなく、にっこりと微笑んだ。「だが、ただの助けじゃない。君に、私と契約してもらいたいんだ。」
「契約?」俺はその言葉に疑念を抱く。ハスターが契約を結びたがる理由がわからない。
「そう。君と私は、友達になりたい。」ハスターの言葉に、一瞬耳を疑った。
「友達?」俺はすぐに冷静になり、冷ややかな笑みを浮かべた。「お前と、友達?」
ハスターは一歩近づき、目を細めて言った。「君は、私の力を必要としている。だが、私も君を必要としているんだ。だから、友達になりたいんだよ。」
その言葉はどこかしら、不気味でありながらも、どこか真剣さを感じさせた。邪神とも言える存在が「友達」を求める――それがどういうことなのか、簡単に理解できるわけがなかった。
「本当に、友達になりたいのか?」俺は冷静に言葉を選びながら問い返した。
「そうだ。」ハスターは答えた。「私の目的は、君がその力を完全に使いこなせるようになること。君が邪眼の力を暴走させないように、そして、私の力も必要とする未来が来るかもしれない。そのためには、君との信頼関係を築く必要がある。」
「信頼関係……。」俺はその言葉を繰り返す。まさか、クトゥルフ神話の邪神が友達を求めるとは思わなかった。だが、彼の目は本気だった。
「だから、君が私と契約を結べば、私は君をサポートすることを約束する。君がその力を正しく使えるように、力を貸す。」
その言葉が、俺の心に重く響いた。ハスターは確かに強大な存在だ。その力を借りれば、邪眼の力をコントロールする方法を学べるだろう。しかし、契約を結んだら、その後どうなるのか、俺には予測できなかった。
「でも、友達になるって、どういうことだ?」俺は一歩引きながら尋ねた。
「ふふ、心配しないで。」ハスターは柔らかく笑った。「私たちは、互いに何も隠さず、助け合う関係を築く。私が君を支え、君は私の力を使う。それだけだ。」
その言葉に、俺は少し考え込んだ。確かに、邪眼の力を完全に使いこなすためには、ハスターの力が必要だろう。だが、心のどこかで、彼の真意を測りかねていた。
「じゃあ……契約する。」俺は覚悟を決めて、ついに言葉を口にした。
ハスターの目が、ゆっくりと輝きを増す。すると、彼の周りの空間が歪み、空気が震えるように感じられた。
「君の決断を、私は歓迎する。」ハスターがそう言うと、手を差し出した。その手は、空気の中に現れた光のように、不思議な輝きを放っていた。
俺はその手を取った。その瞬間、何かが俺の中に流れ込むのを感じた。それは、確かにハスターの力だった。そして、同時に俺の中に新たな力が芽生えたような感覚を覚えた。
「これで、君も私の友達だ。」ハスターの声が響き渡る。
その瞬間、俺の中で新たな力が目覚めた。ハスターとの契約が、俺にどんな未来をもたらすのか――それはまだ分からない。ただ一つ言えることは、この契約が俺にとって大きな転機となったことだ。
「これから、よろしくな、友達。」ハスターが満足そうに言った。
俺はその言葉に頷き、今後の展開に覚悟を決めた。
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