第8話 伏線回収のお時間!

邪眼の力を手に入れてから、俺はその力に頼りすぎることを恐れていた。だが、いつもニャルラトホテプの冷静な声が、俺を引き戻す。


「力に溺れるな。」


彼の言葉が、無意識に俺を抑えていた。だが、それと同時に、俺が手に入れた力は、決してただの力ではないことを感じていた。心の中に渦巻く、異次元の力。それはただの目に見える力ではなく、深遠なる存在と繋がるための鍵に過ぎなかった。


それから数日後、俺は自分が何をすべきか、少しずつ理解し始めていた。だが、何かが足りない――そんな気がしていた。



その日、学校に足を運ぶと、異常な空気を感じた。なんとなく、周囲の様子がいつもと違う。クラスメートたちは、どこか冷たい目で俺を見るようになっていた。あの邪眼の力が原因なのか、それとも別の何かがあるのか、はっきりとは分からない。ただ、何か不気味なものを感じ取ることができた。


「どうした、阿佐間?」


突然、後ろから声をかけられた。振り返ると、そこに立っていたのは、かつての仲間――今は敵として立ち向かってきているダゴン秘密教団の一員である、**上原(うえはら)**だった。


「上原?」俺は少し驚きながらも警戒を強めた。なぜ彼がここにいるのか、心の中で疑問が渦巻く。


「いや、驚かせてすまない。」上原は少し苦笑いを浮かべていたが、その目はどこか計算しているような冷徹さがあった。「実は君に、伝えなければならないことがある。」


「伝えなければならないこと?」


「君が手にした邪眼の力、あれにはある秘密が隠されている。」


俺はその言葉を聞いて、心の中で何かが引っかかった。隠された秘密?それが何を意味するのか、すぐには分からないが、何か大きな計画があることを感じ取った。


「実は、お前が手に入れたその力――その邪眼の力には、封印されていた別の力が宿っている。それは、ニャルラトホテプが隠したものだ。」上原の言葉が、俺の体を一瞬で凍らせた。


「ニャルラトホテプ?」


「そう、彼の力を手に入れたお前が、このまま力を使い続けると、その力が暴走することになる。」


その言葉に、俺の心は動揺した。ニャルラトホテプが隠した力……それが俺の体に宿っている?その力が暴走したらどうなる?いや、そんなことは考えたくなかった。だが、上原の冷たい眼差しが、その事実を確信させる。


「それだけではない。」上原は続ける。「君がその力を使えば使うほど、君の精神もまた蝕まれていく。もしかしたら、お前自身がその力に飲み込まれてしまうかもしれない。」


その言葉に、俺は再び背筋を凍らせた。俺が使った力は、すでにその次元に達しているのか?心の中で異次元の存在と繋がった瞬間、何かが変わった気がしていた。それが暴走することを恐れていたが、まさかそれがこんな形で浮上してくるとは思わなかった。


「なぜ今、そんなことを?」


俺はその問いを上原にぶつける。しかし、彼の表情は変わらない。


「だって、君がその力を使い続けることで、俺たちの目的にも近づくことになるからさ。」上原の冷徹な笑みが、少し歪んで見えた。


「お前の目的?」


「そうだ。君がその力を使いこなせば、全てがうまくいく。だが、それができなければ、君はただの道具に過ぎない。」


その言葉が胸に突き刺さる。上原が言う通り、俺はもしかしたら単なる駒に過ぎなかったのかもしれない。だが、それでもこの力を手に入れた以上、逃げるわけにはいかない。


「お前が言っていることが本当だとしても、俺は……俺の力を使って、この先進んでいく。」


「それがいい。」上原は満足げに頷きながら、最後にこう付け加えた。「だが、覚えておけ。お前がその邪眼の力を完全に使いこなすためには、いずれその代償を払うことになるだろう。心しておけ。」


その言葉を胸に刻みながら、俺はその場を立ち去った。しかし、心の中でその言葉が何度も響き、俺の足取りを重くさせた。


――だが、逃げることはできない。これはすべて、俺が選んだ道なのだから。


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