第2話 転生したら邪神が養ってくれる件 下
ダゴン秘密教団の連中を蹴散らした俺は、いつものように家に帰ることにした。自宅は学校から歩いて15分ほどの場所にある古い木造の一軒家だ。見た目は普通だが、中身はちょっと違う。邪神たちの力で強化されたおかげで、防御力が洒落にならないほど高い。爆弾が落ちてもビクともしないらしい。
玄関を開けると、居間のテーブルには、いつものように奇妙な食事が並べられていた。
「おかえり、阿佐間融。今日の夕食はダゴン様特製のシーフードスープだ。」
出迎えたのは、見た目は普通の女性だが、実際にはクトゥルフ神話の邪神に仕える下僕、というか使者のような存在だ。名前はミスカトニック。邪神たちが俺の世話係として派遣してきたらしい。
「ダゴンが料理したのかよ……食べても平気だよな?」
俺はスープを見下ろしながら半ば呆れた。スープの中には見たことのない生物の触手が浮かんでいるが、なぜか美味そうに見えるのが不思議だ。
「大丈夫よ。ダゴン様の料理は人間の健康にも配慮されているわ。もちろん、味も最高よ。」
恐る恐る一口飲んでみると、これが意外とイケる。海の味が濃厚で、なんだか高級レストランのスープみたいだった。
「……うまいな。ダゴンって意外と器用なんだな。」
「当然よ。ダゴン様は海の神だもの。」
俺はスープを飲み干し、椅子に深く座り直した。今日もまた、退屈しない一日だった。
◆
夜になると、俺は家の一角にある「儀式の間」に向かった。この部屋は邪神たちとの契約や召喚を行うために用意された特別な場所だ。壁一面に謎の文字が描かれ、中央には不気味に光る魔法陣が刻まれている。
今日の目的は、最近頻繁に俺を狙ってくる「ダゴン秘密教団」について、直接ダゴン本人に相談することだ。
「ダゴン、来い。」
俺が短く呪文を唱えると、魔法陣が青白く輝き、巨大な影が現れた。
「呼んだか、我が友よ。」
現れたのは、半魚人のような見た目をした巨大な存在。だが、その声は落ち着いていて威厳がある。ダゴンは俺をじっと見つめ、軽く頷いた。
「何用だ?」
「最近、お前の教団がやたら俺の学校を襲ってくるんだけど、何とかならないか? 正直、鬱陶しいんだよな。」
ダゴンは腕を組んで考え込むような仕草を見せた。
「我が教団が暴走しているのか……。すまぬ、それは私の監督不行き届きだ。今後は抑えるよう手を打とう。」
「頼むわ。こっちはただの高校生なんだからさ。」
俺が苦笑すると、ダゴンは愉快そうに笑った。
「お前ほどの高校生はそうはいないがな。だが安心せよ、我が力を預けた以上、お前に害が及ぶことはないよう計らう。」
そう言って、ダゴンは姿を消した。
◆
翌日、学校に行くと驚くべき光景が広がっていた。校門の前に立っていたダゴン秘密教団の連中が、全員深々と頭を下げているではないか。
「阿佐間融様! 我々は本日より、貴方を敵対することなくお守りする所存でございます!」
「……は?」
何が起きたのか理解するまでに少し時間がかかったが、どうやらダゴンが本気で手を打ったらしい。おかげで学校生活は一気に平穏になりそうだ。
「まあ、いいか。」
俺は肩をすくめ、教室に向かって歩き出した。邪神の力を得たこの人生、まだまだ楽しめそうだ。
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