朔美さん……ブルマって……
「なんか今日も疲れたわね……」
「だな。璃砂は魔力切れになってたし」
「むしろ透はなんで魔力切れにならないのよ。私よりも戦闘している時間も長いし連戦していたわよね」
ログハウスのリビング。戻ってきたら椅子を並べた上にリッカが寝かされていたので、急遽4人は余裕で座れるサイズのソファを追加で設置した。ケンシンがやってくれれば良いのに……とも思ったけど、恐らく俺と璃砂の居住スペースを勝手に弄るのを躊躇った感はある。
ちなみに俺と璃砂はソファに並んで座っていて、リッカは璃砂が膝枕をしている。璃砂がしている理由? 猫耳をモフモフしたいだけだろうな。リッカが嫌がってないから構わないだろう、うん。
そんな璃砂はもう魔法少女の変身を解除して、長袖ジャージにハーフパンツという格好に戻っていた。
朔美は2階にある自分の部屋を確認しに行ってる。設定じゃなくて、確認の理由は単純。俺や璃砂みたいに日本時代の部屋をそのまま持ってきたからだ。そそくさとひとりで向かったってことは俺たちに見られたくなかったのかなぁ……なんて。まさか汚部屋……? とまではいかなくても散らかっているのかもしれない。
「戦闘スタイルの違いじゃねーの? 俺は剣に氷柱を飛ばすとか消費量が少なそうじゃん。璃砂は砲撃してるし」
「……言われてみるとそうね。邪神の話だと私の方が魔力多いらしいけど、保たないってことか」
「でも使えば使うほど魔力量も伸びるんだろ? 今はキツイかもしれないけど、将来的には正解じゃね? むしろ俺のほうが考えないとマズい気がする」
「ふにゃ!?」
リッカの奇声が聞こえたけどスルー。どうせ璃砂に耳の先を弄られたとかだろうし。
「部屋の再現というより、コピーしたみたいな感じですね。まんまでした」
「「…………」」
リビングに入って来た朔美の姿を見て会話が止まってしまう俺と璃砂。えっと……さっきまでの冒険者スタイルじゃなくなっているのは、問題ない。問題は彼女の今の格好だった。
「どうしました?」
わかっていてやっているのか、天然なのか判断に迷うが……高確率でわざとだろうなと思えるのがすごい。
「えっと……なんでブルマ?」
璃砂の困惑全開の質問。そう、朔美はあろうことかブルマを履いていた。上も半袖の白Tシャツと体操服姿だ……。
「璃砂ちゃんがジャージにハーフパンツですし、透くんも部屋着は体操服ですよね?」
確認するように問うてくる。
「まぁ璃砂と同じ格好だな。気温で変わるけど」
「なのでわたしも体操服で合わせようかと思いまして。幸いなことに母が買ってくれたブルマを持ってましたから。ちゃんと紺色で、サイドには白の2本線が入っているモノですよ」
なんて言いながら横を向いたせいでブルマに包まれたお尻のラインが丸見えという……。朔美の色白でスラッと長い脚にブルマの紺色が映えている。にしても本当にスタイルいいよな。ケンシンにも負けていない。
「ブルマってリアルで初めて見たわ」
「俺もだ……璃砂も履いてみたらどうだ?」
試しに言うだけだ。実際、璃砂のブルマ姿は破壊力がヤバいと思うし。
「……私は絶対に無理」
うん、知ってた。璃砂は嫌がるだろうなと。ただ望みがありそうでもある。
「璃砂ちゃんの『無理』って『透のために1回は試してみようかしら?』って意味ですよね」
「うっさい!」
「そこで否定しない璃砂ちゃん好きですよ」
「ひにゃああ!?」
リッカ可哀想に……完全に八つ当たりで耳の付け根をグニグニと揉まれていた。
「……脚フェチの前でよくそんな風に太もも出せるわね。恥ずかしくないの?」
「わたし陸上部ですよ? うちの高校の女子陸上部のユニフォーム知ってますよね?」
「……ブルマだったわね」
「大会とかで知らない人にカメラを向けられるのに比べたら、仲の良い友達に見られるくらいなんでもないです」
朔美ってさ……なんかすげー闇を感じる瞬間が結構あるよな……しかも触れづらいタイプのやつ。
「……なんかごめん」
璃砂も気まずそうに謝るし。
「気にしてないので大丈夫です。家族に見せたときに1回しか履いてないのが勿体ないと思っていたので、ちょうどいい機会なのでこのまま部屋着にしちゃいます」
さっきは流しちゃったけどさ『母が買ってくれたブルマ』って……そっちも気になるんだよなぁ。どうせ璃砂も同じく気になってるだろうし、話を振ってくれるだろ。そんな期待を込めつつ隣に座っている璃砂をチラ見する。
「……まぁ、朔美の好きにすればいいんじゃない?」
璃砂のヤツ……俺の視線の意図を理解しているくせに締めに入りやがった。その目が言っている「自分で聞けばいいじゃない」と……仕方ないか。
「朔美……あのさ」
いざ聞くとなると切り出しずらいな……親族と上手くいってないのがわかってるし……家族とはどうなんだ?
「なんですか?」
「……『母が買ってくれたブルマ』とか『家族に見せたときに1回しか履いてない』ってのが気になって」
「私も気になるわね」
璃砂さぁ……。
「言葉の通りですよ? イラストレーターの母が、お仕事で貧乳ヒロインのブルマ姿を書くことになりましてね?」
「ふむふむ」
「それでわたしがブルマ姿で色んなポーズを取っただけです。母の指示で体育の前にする準備運動みたいのをやったり、ラジオ体操したりですね。参考資料づくりです。父が撮影係だったので柔軟系の動きは少し恥ずかしかったですね……特にお尻の食い込みかたを比較したいとかで、前屈とかスクワットを後ろから撮られるのは流石に……」
そのときのことを思い出したのか頬を薄っすら染める朔美。
「……」
なにも言えねえ……。両親が創作系だとそうなるのか? 璃砂は自分がそうなった場面を想像したのか、苦い顔をしている。
「あ、もちろん同意の上なのでわたしとしては全然平気です。お小遣いもくれましたし。そんな画像が大量に入っているドライブも両親が亡くなったときに破壊してるので流出の心配もありません……破壊してなかったら流出してた可能性が高いのが酷い話ですけどね」
吐き捨てられるように付け加えられた最後の言葉があまりにも……親族か……ほんと苦労してたんだな……。
「そういえば1度だけそれ関係で両親に本気で怒ったことありましたね」
「そうなの? 聞いてる限りでは仲睦まじい感じに思えたけど」
「バニーガールの衣装を娘に着せて、母が大笑いしたことがあったんです。普通、娘の胸元を見て涙が出るまで笑います? どう考えても遺伝じゃないですか!」
手に何かを持っていたら投げつけているような勢いだった。
「それなのに『朔美よりはある!』って意地になって自分までバニー衣装着て並んでくるんですよ? それを見た父の感想も最低です『母娘共にスク水のが似合うんじゃないか?』って! 信じられないですよね!?」
「そ、そうだな」
「え、ええ……」
俺たちには同意する以外の選択肢がなかった。
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