第43話 きららの仕事(下)

★side:弘識きらら


「ここは前も入った海斗君の部屋だね」


 私は今海斗君の家の中を見回っていた。

 海斗君と薫ちゃんの部屋は隣なので覚えやすい。

 

 海斗君の部屋は前にも入ったけど凄く整っていて凄くきれいだ。

 今も扉が開いていたので覗いて見たけど相変わらずって感じ。

 まぁ、海斗君は綺麗好きって言っていたのでその影響だろう。

 

 私も遠慮なく入っても良いって言われていたけど今日は掃除もしなくていいと言われているので入るのは止めておこうかな。

 でも私が掃除をする時は本当に頑張ってしないとだね!

 海斗君が満足するくらい頑張らないと!


 私はそう思いながらそのまま家の中を歩き回っていた。


「ここの部屋も沢山使っている部屋って書いてあるな……」


 今までいくつもの部屋を見て来たけど全く使ってない部屋だっていくつもあった。

 そう言った部屋は本当に棚すらなく掃除は簡単そうだ。

 

 そう思いつつもその部屋を開けた。


「おお!」


 その部屋の中はランニングマシーンやダンベルとか後は良く名前は分からないけど良く筋トレしている人が使っているような器具がいくつかあった。


 そう言えば薫ちゃんが言ってたっけな?

 海斗君が最近筋トレの為に器具を増やし始めたって……元々家にあったけど新しく買い替えたものもあるって言ってたな。それも嬉しそうに……薫ちゃん曰く薫ちゃんと付き合い始めて海斗君は薫ちゃんをより守れるように筋トレに力を入れなおしてくれているって喜んでた。あの時の薫ちゃんの顔は本当に嬉しそうで私までなんだか嬉しくなったんだっけ。

 私が恋をしたことがない分薫ちゃんから話を聞くのが楽しみで結構私の方から海斗君とどんな感じかを聞いちゃうんだよね。

 

 私がもし恋をするんだったらどんな人なのだろうか……

 今ままではそんな事を考える余裕がなかったけど今だったらそんな事を思っても大丈夫なんじゃないだろうか……

 私は男友達も昔から多めだったけど恋を出来そうな人はいたかな?

 どうせだったら薫ちゃんみたいに本気で自分を愛してくれる人が良いよね。

 薫ちゃんがいつも言っているみたいに自分を守ってくれて安心感のある人……それでいて優しい人。

 

「……」


 私がそう考えた時に思い着いたのが海斗君以外に居なかった。


「ダメダメ!」


 私は慌ててその考えを振り払った。

 大体海斗君は薫ちゃんの恋人だし、薫ちゃんから聞く話は当然海斗君の話だからそう思っちゃっただけだ!

 それに海斗君とはまだ知り合ったばっかりだしね。

 感謝こそしているとは言えそれが恋かと言ったらそうではないと思う。

 まぁ、私にそのうち誰かに恋を出来る日が来ればいいな……

 

「よし!そんな事は今は考えないでいいや。それに大体の部屋を見終わったしそろそろ二人の所に戻らないとね!」



 俺はきららが家を回っている間、薫と隣り合ってソファーに座っていた。


「海斗君!これ見て!最近私が良く見てるんだけど可愛いよね!」

「これってなんだ?」


 薫がそう言ってスマホを見せて来たのだが、それは動画配信サイトでペットの犬や猫などを紹介したり一緒に遊んで戯れる感じの動画だった。


「確かに可愛いな。薫って動物が好きなのか?」

「うん!特に猫がね!でも私アレルギーがあって一緒には暮らせないんだよね……その分動画を見て楽しんでるんだ」


 そうだったんだな……ゲームをやってても知らなかった情報だ。

 ていうかだからこの家にも猫のぬいぐるみをいくつか持ってきたのか。


「なるほどな……まぁ、アレルギーがあるんだったら仕方ないな」

「恥ずかしい話だけど小さい頃はどうしても一緒に暮らしたいってお母さんとお父さんに泣きついて凄く困らせちゃってたんだよね……」


 薫は恥ずかしそうにそう言って来たので俺も笑って返した。


「それは薫のご両親も大変だっただろうな」

「そうだったらしいね。大きくなってからその話をされて凄く恥ずかしかったもん。でもその時は代わりにって猫のぬいぐるみを買ってくれてその時はそれでも嬉しかったんだよね」

「そのぬいぐるみが今二階にあるぬいぐるみか?」

「そうだよ!その時はぬいぐるみを二つ貰ったからそのうちの一つは今この家にあるやつだね。後の二つは自分で新しく買ったものだね」


 確かにそう言われれば一つだけ明らかに古い感じのものがあったっけな?

 おそらく縫い直したような感じの……よっぽどそのぬいぐるみを買ってもらったのが嬉しかったんだろうな。


 俺たちがそんな事を話しているときららが帰って来た。


「ただいま!」

「おかえりきららちゃん」

「見終わったのか?」

「うん!とりあえずはね。それじゃあ二人は引き続き仲良くしててね。私はこれからご飯を作るからね」

「あぁ、ありがとう」

「ありがとうきららちゃん」


 帰ってきて早々そう言った会話をした後きららはキッチンに入って行った。


 ――それから暫くして


「二人とも出来たよ!!!」


 きららが勢いよくそう言って来た。


「分かった。直ぐに行くね!行こう海斗君」

「そうだな」


 そう言って俺と薫はソファーから立ち上がった。


 料理が並べてある机に行くとそこにはオムライスと味噌汁。

 そしていくつかのおかずが並べてあった。

 

「わぁーおいしそう!」

「そうだな。確かに美味しそうだな」

「さぁさぁ、二人とも冷めないうちに早速座って食べちゃってね!」


 きららにそう促されて俺と薫は席に着いて早速食べる事にした。


「「「いただきます」」」


 三人で手を合わせてから早速薫がオムライスを一口食べた。


「すっごく美味しいよきららちゃん!」

「本当?ありがとう!」

「うん!海斗君も食べてみてよ!」

「そうだな」


 そう言われて俺もオムライスに手を付けた。

 そのオムライスは凄くふわふわしていて口の中でとろけるようで凄く美味しかった。


「うん!滅茶苦茶おいしいな」

「だよね!」

「えへへ。そんなに言われると照れるな……」

「本当に凄いよ!これだったらきららちゃんのおばあちゃんやおじいちゃんも喜んでたんじゃない?」

「そうだね。って言っても当然おばあちゃんとかおじいちゃんに関しては私がまだ料理が下手な時期も知ってる訳だからまた違うのかもね」

「確かにな……でもそれだったら尚更嬉しいんじゃないかな。きららはおじいさんやおばあさんの為に料理を頑張ってたんだろ?」

「そうだね……」

「確かに……自分たちに為にって上手になっていくきららちゃんを見てきたおばあちゃんやおじいちゃんは凄く嬉しいと思うよ。自分の為に頑張ってくれるって本当にうれしい事だからね。」

「そうだね……私もそれは分かるな……おばあちゃんとおじいちゃんは昔から私最優先だったしね……それに今は二人だって私の為に動いてくれたし……」


 きららは嬉しそうかつ照れた様子でそう言って来た。

 それから俺たちは三人で夜ご飯を楽しんだ。


 ――それからきららが片付けを終えた後。


「片付けも終わったしそろそろ帰る時間だな」

「そうだね。私もそろそろ帰らないとかな。塾もない日だしお母さん達より遅く帰る訳にも行かないからね」

「そうだね帰ろうっか」


 俺たちはそう言って玄関を後にした。


「それじゃあどっちを先に送ろうか……」


 二人の家と俺の家は結構近いのだが俺の家は二人の家の丁度真ん中くらいの位置にある。


「それだったら薫ちゃんの方で大丈夫だよ!ていうか私は一人でも大丈夫!!!バイトがある日だったら今より遅い時間に一人で帰る事も珍しくなかったからね。前にも声をかけられた事はあるけど何とか逃げ切ったし大丈夫!私って運動神経は良いからね!!」


 いや……それは全然大丈夫とは言わないと思うんだけどな……ていうかそんな事もあったのかよ、ゲームではそんな描写は無かったしやっぱりゲームを基準にするのは止めた方が良さそうだ。


 それにきららが運動神経が良いのは知ってるけど、ゲームのヒロインって事もあり見た目は群を抜いて可愛い、そんな子が一人で出歩いて居たらそんな事もあるんだろう……やっぱり一人返すべきじゃないよな。俺としても全然手間ではないし。

 俺がそう思っていたら薫が言った。


「そうかも知れないけど女の子一人で暗い道を帰るのは危険だし折角だし海斗君に送って貰うと良いよ。海斗君もそのつもりだったでしょ?」

「まぁ、そうだな……家で働いてもらっている以上は何かあったら困るしな」

「ふふふ、だってきららちゃん。折角だしお言葉に甘えておこうよ!私だってきららちゃんが心配だしね!」

「んーそれじゃあそうさせてもらおうかな……それに家を隠す必要もなくなったし……」

「そうれじゃあ二人とも送っていくな」


 そうして俺はきららを家に送ってから薫を家まで送った。

 

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