第39話 その後

「それじゃあ二人ともありがとうね……」

「うん!おじいちゃんが早く良くなると良いねきららちゃん!」

「あぁ、きららが元気になったみたいで良かったよ」

「それじゃあまた今度ね。私はおばあちゃんと話してくるから」

「バイバイきららちゃん!」

「また今度な」

「うん!」


 薫と俺できららを家まで送った後そんな会話をしてからきららは家に入っていった。


「それじゃあ俺たちも帰るか」

「そうだね!」


 そうして俺と薫は歩き出した。


「きららちゃん顔が明るくなって良かったね!ありがとう海斗君!」


 薫は本当に嬉しそうな顔でそう言って来た。


「俺としても見過ごせない事だったしな。それにしても薫って本当にきららの事が好きなんだな」

「うん!なんていうかね……ちょっと言語化は難しいんだけど私って男友達は全然いないけど女友達なら結構多いんだよね」

「まぁ、そうだな。それは学校で見てても分かるな」

「それでね、きららちゃんって最初こそ印象は正直良くなかったんだけど、話して行くうちに他の人とは違う感じがしたんだよね……なんて言うか、そのくらい短期間で大切な友達になったんだよね……あ!もちろん他の友達が大切じゃないって訳じゃないけどね!とにかく説明は難しいけどとにかく凄く大好きな友達だよ!何より一緒に居て凄く楽しいしね!」


 これもゲームの強制力と言うか影響なのだろうか?

 俺はそうも考えたがそんな事もなさそうだ。

 今の薫の顔を見ても本当に幸せそうだし嬉しそうだ。

 この世界はゲームの世界でもあるけど俺たちからしたら現実の世界なんだしな……

 大体強制力が働いているとしたらおかしなことがいっぱいあるしそんな事は無いのだろう。

 まぁ、そんな事を考えてもどうしようもないか。


「そうなんだな。でも本当に良かったのか?」

「良かったって何が?」

「俺の家で雇うって事だよ」

「それは大丈夫だよ。でも私が泊まるときは早めに家に帰してね……」


 薫はちょっと恥ずかしそうにそう言って来た。


「まぁ、元々遅くまでいて貰うつもりもないしな」


 その後俺たちは俺の家で一緒に過ごした。



★side:笹内薫


 日曜日の夜私は考えていた。


「きららちゃん元気になったみたいで良かったよ!」


 海斗君と過ごした次の日、つまり今日の昼なんだけどきららちゃんから電話が来て凄く声が明るくなっていた。

 おじいちゃんもどうにかなりそうだしって凄く喜んでたな。


 きららちゃんは私にも感謝してくれているけど私は何もしてないんだよね……

 私の力じゃなくて全部海斗君のおかげだ。


 本当に海斗君は凄くてカッコいい。

 どんなことでも解決してくれて助けてくれる安心感がある。

 それに一緒に居て凄く幸せだしね。

 私も海斗君の為ならなんだって出来る。


「それにしても私ってちょっと変なんだろうか……」


 昨日の夜海斗君と過ごしている時に言われたんだけど、海斗君ときららちゃんが仲良くなっていくことに抵抗は無いのか?そう聞かれていた。

 

 私としてはきららちゃんは凄く大切な友達でこれからもずっと一緒に仲良くしたいと思っている。あの時は大げさに言ったかも知れないけどきららちゃんには本当に幸せになって欲しい、私はそう思っている。

 なのでもし海斗君の事を好きになる事があればきららちゃんも……海斗君と……そんな事を思ってしまう私が居る……

 当然海斗君の意思が最優先なのは間違いないんだけどね。


 今私が一番大切な人は海斗君だけど友達、親友として一番大切な人は間違いなくきららちゃんと仁美ちゃんだ。


 とはいえ私の知らない女の子が海斗君と仲良くしている姿を想像したら凄くもやもやするんだよね……私自身も良く分かってないけどそう思える位きららちゃんの事が好きなんだと思う。


 そんな訳で昨日は海斗君が望むならって答た。

 でも海斗君は私の事が大好きだから今はそんな事は全く思っていないと言ってくれて、それが凄く嬉しかったんだよね。

 

「なんだか分からなくなってきたな……」


 でもまぁ、私が海斗君の事が大好きだって事は間違いないんだからとにかく私は海斗君と一緒に居よう。

 と言うよりも海斗君と一緒に居ない未来を考えたらとてもじゃないけど耐えられない……それこそ生きていけるのだろうか……そう思うくらいには私は海斗君の事が大好きだ。

 当然他の男子と……そんな事を考える事すらあり得ないし考えたくもないし海斗君以外はあり得ない。

 これからもずっと……それこそ一生海斗君と過ごしたいな。


 取り敢えず今後の事なんて分からないけど今はとにかく海斗君と一緒に居れる事やきららちゃんや仁美ちゃんと楽しく過ごせる事を大切にしよう。

 

 私はそう思いながら眠りについた。



 ――日曜日の夜、俺は考えていた。


「取り敢えず解決出来て良かったな」


 薫の元に電話が来た時に俺も一緒に居たのだがきららは凄く明るくなっているみたいだった。

 ゲームだときららが山崎にこの問題を解決してもらっていたのだが、その時は山崎が親に相談して親戚などに聞きまわってやっとの事でお金をどうにかして、その後はきららと一緒にバイトをしたりとかで一生懸命にお金を返すために二人でバイトをしていたはずだ。ルートによってはそこに薫だったり仁美だったりが混ざっていたがな。

 とにかくそこまでしてくれた山崎に対してきららが惚れてったので今回の事で感謝こそしていると思うが俺に事を好きになるって事は無いだろう……多分な。

 薫は俺が望むならきららと仲良くなっても良いと言っていたが、俺からきららにアクションを起こすつもりは全くない。と言っても優しく接するのは間違いないが薫の頃みたいに堕としに行くつもりはなっていう意味だ。

 

 俺としてはゲームで沢山見て来ていたのできららや仁美の事も良く知っているが、だからと言って薫みたいに心から好きと言うわけではない。

 とはいえゲームでは三人共凄く大好きだったのは間違いないんだけどな。


「まぁ、そんなに深く考えなくても大丈夫か」


 薫が最優先な事は当然これからも変わらないしな。

 今の薫は凄く幸せそうだし俺的には薫が幸せそうならそれでいい。

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