第36話 突然の出来事
――それから三日後の土曜日
「海斗君!」
「お!薫終わったか」
「うん!」
――俺が薫の通っている塾の前で待っていると薫が塾から出てきた。
「いつもありがとうね」
「彼氏だし当然だ。それじゃあ帰るぞ」
「うん!帰ろうね」
そうして俺は薫と歩き出した。
「そういえば海斗君!金曜日に仁美ちゃんにも海斗君と私が付き合っているって事を教えたよ!」
「そうか。それで仁美の返事はどうだった?」
「んー、それがね……仁美ちゃんは余り反応はなかったかな?」
「反応がなかった?」
「うん。そうなんだ!ってちょっとだけ驚いたくらいだったかな?それ以外に変わった事はなかったかな?きららちゃんの時みたいに何かを聞かれるとは全くなかったね。聞いた感じだと恋とかは余り興味がなさそうだったね、仁美ちゃんらしいけど」
意外だな……仁美は恋愛アニメとかも良く見ていたと思うしそう言った話題に興味はあると思ったんだけどな?
いや……意外ともいえないかもな。仁美はオタク趣味を誰にも言う気もなければ、自分のキャラを崩さないから興味があってもどうでも良い振りをしていると考えたら納得も行くか。
少なくとも恋バナに興味がないって事はなかったと思うしな。
「まぁ、でもそれで薫の印象が悪くなるとかはなかっただろ?」
「うん!それは無かったよ。でも仁美ちゃんってば海斗君にライバル意識を燃やしているみたいだったよ!」
「ライバル意識ね……」
「うん。それくらい海斗君にテストで負けたのが悔しかったみたいだね」
「なるほどな。まぁ、そのくらいだったら大丈夫だけどな」
「まぁ、そうだね。仁美ちゃんからしてもその方が勉強を頑張れるだろうしね!海斗君も負けちゃだめだよ!」
薫は笑顔でそう言って来た。
「薫がそう言うんだったら絶対に負けられないな。でも薫も頑張れよ」
「うん!私も頑張るからね!その代わりに私に勉強を教えてね」
「それは当然教えるぞ」
俺たちがそんな事を話しながら歩いてい時の事だった。
「あれって……」
「どうした薫?」
「あれってきららちゃんだよね?」
「ん?」
薫がそう言って指を指した方向を見るときららが立ってきょろきょろしていた。
それも顔は凄く不安そうだった。
「きららだな……」
「凄く慌ててるけど何かあったのかな?」
俺はこの時凄く嫌な予感がしていた。
ゲームだとこんなに早くそのイベントが起こる事は無かったのでまだ大丈夫だと思っていたのだがこれは……おそらくあれだよな……きららの格好を見てもそうじゃないのかと想像が出来てしまう。
ていうかそう言えばきららは金曜日は学校を休んでたじゃん……
「なぁ薫?最近のきららの様子で変わった所はなかったか?」
「え?んーどうだろう?金曜日は学校を休んでて連絡してみたけどただの風邪だから全然大丈夫って言ってたけど?もう治ったのかな?」
「風邪か、そうか……」
宮里の件を解決できたと思ったら連続でこれか……
余りにも急すぎるけど人間が急に倒れるのはおかしな話じゃないしな。
とはいえまだ確定ではないからもう少し様子を見ようか。
「それにしてもきららちゃん何してるんだろうね?ちょっと露出が多いけど……待ち合わせかな?」
「どうだろうな?」
「んー彼氏はいないって言っていたし好きな人も……居ないっていってたっけ?じゃあ本当にどうしたんだろうね?話しかけてみる?」
「いや……」
俺たちがそんな事を話しているときららが動き出した。
「え?」
薫が驚いたようにそう言った理由はきららが明らかにサラリーマンらしきおじさんの腕を掴んで声をかけたからだ。
「……」
「あれって……」
俺はやっぱりかと思いながら無言だが薫は続けてそう言った。
おそらく薫も感じ取ったのだろう……きららとサラリーマンの様子からも二人が知り合いって訳ではなさそうだ。
そしてそれから直ぐに二人は歩き出した。
「薫……ついて行ってみよう……」
「う、うん……そうだね……」
今きららの元に行ってみても良いのだが、俺たちの勘違いの可能性もない訳ではない。
後を着けるのはちょっとあれだけど今はそんな事も言ってられないしな。
そう思った俺は薫にそう提案した。
◆
――それから暫く歩いた。
二人を付けるとそこはホテル街だった。
ここまで来たらもう確定だな……
「か、海斗君……き、きららちゃんって……」
薫はきららがパパ活をしているんだと思いひどく落ち込んでいる様子だった。
「薫……薫が思っている事は何となく分かるけどとりあえず落ち着こう」
「う、うん……」
「良く見て分かると思うけどきららの様子を見ても明らかにこう言う事に慣れてる感じじゃないだろ?寧ろ初めてで怖がっている感じじゃないか?」
俺がそう言うと薫は言った。
「た、確かに……そう言われてみたらそんな感じがするかも……」
「だろ?だったら止めに行かないか?」
「止めに……そうだね!きららちゃんがなんでこんなことをしているのか分からないけど止めなきゃ!」
俺たちがそんな事を言っているときららはラブホテルに入っていこうとしていた。
「薫!急ぐぞ!」
「うん!」
そう言って俺と薫は走った――
「きららちゃん!!!待って!!!」
「え……」
薫がそう言うときららは顔を真っ青にしていた。
「きららちゃん!」
「な、何で二人が……こ、ここに……そ」
「きららちゃん何でこんなことを……」
「何で……私も分からないよ……でもこうするしか……そうじゃなきゃ……」
きららはそう言いながらその場に泣き崩れてしまった。
薫はそんなきららを抱きしめて慰めていた。
一方でサラリーマンのおじさんは何がなんだか分からない様子だった。
「えっと……取り敢えずこの子は高校生ですよ?」
俺がそう言うと俺の言いたいことが理解できたのかサラリーマンのおじさんは汗をかきながら走ってどこかに行った。
――それから少しだけ移動して暫く薫がきららを慰めていた。
「大丈夫?きららちゃん」
「う、うん……」
「良かったら私たちに何があったのか話してくれる?助けれることがあるかもだしさ……」
「む、無理だよ……二人に出来る事なんて……」
今のきららは心に余裕がある訳もなくそう言って来た。
内容を知っている俺からしあらきららがそう思うのも無理はないよな……そう思った。
そして俺は取り敢えずここは薫に任せようとひとまず黙っている事にした。
「それでも話して欲しいな……友達だから心配だよ……」
「……」
「ゆっくりでいいからさ……私たちも一緒に考えられるかもだし、心の支えにはなるから……」
薫が再びそう言うと、暫くしてきららは軽く頷いた。
「うん……」
「ありがとうねきららちゃん!海斗君……ここからだと海斗君の家は遠くないし行っても大丈夫?良い場所がないからさ」
「そうだな……流石に外で話せる内容でもなさそうだしそうした方が良いかもな……きららもそれで大丈夫か?」
「う、うん……」
「分かった。それじゃあ俺の家で話そうか」
それから俺たちは俺の家に移動した。
その間は三人共無言だったのだが、ただただきららのすすり泣く声だけが聞こえて来ていた。
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