第35話 南川仁美との会話
(キーンコーンカーンコーン)
今日最後の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴って放課後となった。
「ねぇ?ちょっと良いかしら?王豪君」
皆がわちゃわちゃしている中、俺が帰る支度をしていた時珍しく学校で話しかけられた。
俺がちゃんと話せる人と言えば薫ときららしかいないが二人は学校では話さない様にしているので当然違う。
そうして俺は鞄から目を話して声の主を確認した。
(まぁ、学校で話しかけてくる人だったらこの人だけだよな……)
俺は彼女を見てそう心の中で思った。
「仁美か……どうかしたのか?」
「急にごめんなさいね。でもどうしても確認して置きたい事があってね、ちょっとだけ時間を頂戴」
仁美は何かを言いたそうだったのだが……何となく分かる気はする。
きっと今回のテストの事、あるいは入試で新入生代表スピーチを降りた事だろう。
「別に大丈夫だがなにかあったか?確認して置きたいことってのは?」
「そう。それじゃあ早速聞くけど入試トップって王豪君よね?」
やっぱりそうだよな。
確かゲームでもこの中間テストから関わる事が増えてくるのが仁美だったしな……まぁ当然ルートによっては
「まぁ、そうだな。それがどうかしたのか?」
「そう……やっぱしそうよね。噂がどうとかは全くどうでも良いとしても凄く意外ね……そう、あなたが……」
「それはそうかもな。良く言われるな」
実際に俺が一位を取って驚いた人は凄く多いだろうしな。
ちょっと失礼な物言いと思う人も居ると思うが当然だと思う。
俺がそう思いながら言った後、仁美は少し難しい顔をしてからちょっと怒ったように言ってきた。
「それじゃあ、王豪君は何で新入生代表スピーチを辞退したの?」
「逆に聞くが俺が代表スピーチをしたら皆がどう思うと思う?」
仁美からしたら一位で新入生代表スピーチをしたかったんだろうな……俺に譲られた事を悔しく思っている……そんな感じだったかな?ゲームの知識だがそうだったと思う。
「私は別に何も思わないけどそうね……王豪君の言っている事は確かに理解は出来るわね……でも絶対にテストでは負けないようにしようと思ってたのに満点なんて取るなんてね……まさか今回も負けるなんて」
仁美は悔しそうにそう言っていた。
そうなんだよな……ゲームでもそうだったがテストで王豪海斗に負けると凄く悔しそうにするんだよな。
アニメが好きで頭が良く曲がった事が嫌いで凄く真面目、それでいて負けず嫌いってのが仁美の特徴だ。
まぁ、あれだな、南川仁美っていう女子は負けず嫌いなんだよな。
薫も言っていたけど中学生の頃からテストでは常に一位だった仁美からしたら二位を取った事が凄く悔しい感じか。
ゲームではその負けず嫌いの性格のせいで王豪海斗の機嫌を損ねて狙われるルートもあったくらいだ。
「話ってそれだけか?」
「そうね……もう大丈夫。でも次は絶対に負けないから覚悟して置いてよね」
仁美はそう言って薫やきららの元に帰っていった。
覚悟と言われてもなって感じではあるんだが……だからと言って当然負ける気もないけどな。
因みに今日はきららのバイトが休みの日なので三人で遊びに行くらしいので俺は一人で帰った。
三人が仲良くなっていっていたのは分かっていたが、きららと仁美も俺の知らない所で凄く仲良くなっていたみたいだった。
まぁ、時間の問題だとは思ってはいたので驚きはしないが思ったよりも早かったなとは思った。
◆
――その日の夜薫から電話がかかってきた。
『海斗君。いま大丈夫?』
『大丈夫だぞ』
『今日仁美ちゃんと話してたよね?』
『そうだな。ちょっとだけだが話したぞ』
『仁美ちゃんったら今日遊んでいた時ずっと海斗君に負けた事を悔しそうにしてたから、もしかしたら海斗君に対して強い言葉遣いを使ってたんじゃないかって心配になってね……仁美ちゃんって普段言葉遣いが強いから勘違いされがちだけど凄く良い子だから……』
確かに言葉遣いは強かった気はするかな?余り気にしてなかったから覚えてないけどな……
薫の言う通り仁美ってヒロインなので見た目は薫やきららと同じくらい可愛いのだが、凄く真面目な学級委員長でちょっと近づきがたいと言うか勘違いされがちなんだよな。
ちゃんと授業をしていない人が居たら強く注意したり、男女関係なく不真面目な生徒に対して真っすぐと注意するので怖がられたりもしてた気がする。そんな感じで真っ直ぐな性格なんだよな……それだから人によっては冷たく感じられたりもしてたりもしてたかな?
王豪海斗に対してもそうだったしな。
そう言えば仁美がきららの事も注意していた事もあったが一緒に居てきららが不真面目な子ではないと感じて仲良くなったのかな?
きっと薫は仁美とも仲が良いから、俺に仁美に対して悪い印象を持ってほしくないんだろうな。
別に俺的には全然気にする事でもなかったし良いんだけど。
ていうか仁美だけは王豪海斗とちゃんと会話を試みてたんだよな。
『それだったら全然大丈夫だぞ、俺は別に気にしてないからな』
『それだったら良かったよ。それとさ……私ときららちゃんと仁美ちゃんでこれから一緒に居る事が多くなると思うんだ』
やっぱり三人は凄く仲良くなったんだな……まぁ、少し前から三人で昼を食べて居るところも見たりしてたしな。
ゲームでもそうだったけど三人って凄く相性がいいんだよな……薫も楽しそうだし三人の仲がいい事に越した事はないよな。
『そうなのか?まぁ、良いんじゃないか。薫は元々仁美と仲が良かったしな』
『うん。それでね、海斗君さえ良ければ仁美ちゃんにも私が海斗君と付き合っている事を言っても大丈夫?きららちゃんには教えていて仁美ちゃんだけに教えなのもちょっと嫌だなって思ってね……それに仁美ちゃんは口が堅いからさ』
まぁ、俺が隠した方が良いって言ってる理由は、俺と一緒に居る事で印象が悪くなるかもって理由だし仁美だったら言っても大丈夫かな。
言いふらす性格でもない事もそうだけど、前提として俺の事を嫌ったりしている様子もなかったし……
それに前も思ってはいたけど俺が隠した方が良いとは言っても、薫が話したいんだったら俺は止めるつもりもないからな。
『そう言う事だったら言っても良いぞ』
『ありがとう!それじゃあ明日早速教えちゃうね!それと明日は塾があるからよろしくね!』
『分かった。それじゃあまた迎えに行くな』
『うん!いつもありがとうね。それじゃあお休み海斗君』
『お休み薫』
そうして俺はお薫との電話を終えた。
「凄く嬉しそうだったな」
薫の声を聞いていて思ったが仁美に言える事が嬉しいんだろうな。
まぁ、仲が良い好きな友達には隠し事をしたくないんだろう。
「なんにせよ薫が笑顔なら俺はそれで良いからな」
俺はそんな事を思いながら寝る支度をしていた。
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