第33話 宮里兄弟

★side:宮里誠也(宮里誠二の兄)


 俺は王豪海斗から話を聞いて凄くイライラしていた。


「おいお前ら。あの糞野郎の事を知ったのはいつからだ?」

「俺は……半年くらい前ですね」

「俺もそのくらいです」

「俺はもっと前で詳しい時期は覚えていませんが一年以上前かと……」

「チッ!そうか」


 少なくても一年以上前からあの糞野郎は俺の名前を使って好き勝手してたって訳か。

 昔から弱い者いじめが好きで陰険な奴で気に食わなかったが、俺自身もまともと言ったらずれている生き方をしていたから無視していたが……いや、実際はどうでも良かっただけだが俺の名前を出していたのなら話は別だ。

 別に俺の名前を使われて印象が下がるのは当然どうでも良いがそこまで調子に乗られたら絶対に今までの付けを払わせなきゃな。


 ていうかあいつは家だと常にびくびくしている癖に俺が居ない所だとそんな事を出来るのか。

 あいつにそんな勇気があったのはちょっと意外だな……まぁ、当然それが許す理由とはなりえないがな。


「おいお前ら!知り合いにもあの糞野郎の事を聞いて詳しい情報を集めろ」

「「「はい!」」」


 俺は三人にそう言ってあの糞野郎の学校が終わって放課後になるまでに詳しい情報を集めさせた。



★side:宮里誠二


「なんか今日の誠二さんって機嫌が良さそうですね」

「それは俺も思いました、何かあったんですか?」


 俺はあのギャルをもう少しで抱けると思っていて気分が上がっていたのだが、取り巻き二人がそう言って来た。

 こいつらは元々は俺に興味がなかったはずなのだが、俺の兄を知ってからは急に俺にすり寄ってきた。

 まぁ、俺としても別にこいつらの事はどうでも良いし、パシリとしても使えたのであえて近くに居る事を許可している。

 

 でも最近では俺が抱いた女子を終わった後で良いので抱かせてくれとか言ってくるのは正直うざいな。

 何で俺が選んだ女子をお前らみたいなやつに抱かせないと行けないんだよ……本当に身の程を知って欲しいよ全く……

 まぁ、何時でも捨てれる馬鹿男たちだしもう暫くしたらまた兄を使って脅して大人しくさせれば良いだろう。

 俺からしたら本当にどうでも良い奴らだしな。


「なんでもない。それより今日はお前らと話す気分じゃないからどっか行ってくれ」


 俺がそう言うと二人は俺から離れて行った。


 実際に俺は折角あのギャルを思い出して良い気分になっていたのにあんな男どもに邪魔をされて気分が悪かった。

 

「それにしてもあの真の顔って本当に面白かったな」


 俺はあの青ざめた真の顔を思い出し、つい笑ってしまっていた。


 あの感じだと真は幼馴染もそうだがあのギャルの子も好きなのだろう。

 まぁ、当然かと言えば当然か……大体真からしたら手の届かない存在のはずなのに一緒に下校してくれてたんだからアイツが好きにならない訳がないよな。


 別に真に対して恨みがあった訳ではないがあのギャルと歩いている所を見たら流石の俺もかなりムカついたな。

 あんな奴があんな子と一緒に帰るなんて本当に身の程を知って欲しいよ。

 だれがどう見ても釣り合ってないんだよ……あの子みたいな子は俺くらいイケメンじゃないと釣り合わないだろ。


 まぁ、考えようによってはあのギャルと一緒に居たのが真で良かったのかもな。

 中学生の頃から思っていたがあいつは明らかにビビりだし変に憶病な人間なので兄を使って脅したら断れないだろうからな。

 現にあの時の真は断れない……けどどうしよう……そんな表情だったもんな。


 あの子を思い出したら今すぐにでも抱きたい、そう思ったらあいつに一週間も猶予を上げたのは間違えだったかもな……

 

 一週間真が苦しんで決断すると思ったらそれが面白くて長めに設定したのだが、失敗だったかもな。

 せめて三日くらいにしておくべきだった……あの子は今までの誰よりも可愛いから我慢出来ないかもな……

 

 もし我慢できなそうなら期限を速めても良いかもな。

 とにかく早くあのギャルを抱きたい……俺は今日の学校ではずっとそう思っていた。



 その日の放課後俺は一人で帰っていた。


「ははは、本当に苦しんでそうだなアイツ」


 俺は真にどんな感じだと連絡を入れると直ぐに既読は着いたのだが返信は遅かった。

 そして帰って来た答えがもう少し待ってくれ……それだけだった。

 おそらく考えに考えて送って来たのだろう。


「それにしても本当に兄には感謝しないとだな」


 あんな凶暴で誰にでも暴力を振るう奴が兄で俺は凄く嫌だったが、こんな時には凄く頼りになるしな……俺は勝手に利用させてもらうよ。

 実際にあいつが家族に暴力を振るう事は今までになかったがいつ振るうかも分からないし、そんな生き方をしているお前が悪いしな。

 ていうか今まで家族に手を出した事が無いってのが奇跡なんだろうな。


 俺がそんな事を考えながら歩いているととある人が見えてきた。


「は!?」


 その人物は俺の兄だった……

 そして俺は兄を見て速攻で隠れようとしたが、失敗して目が合ってしまった。


「……」

 

 俺の兄は何時も俺を見ても無視をするのが普通だったのだが、今日は何故か俺の方に向かってきていた。

 それも凄く怖い顔をしてだ……

 

 たまたまこっち側に用事があるだけだよな……きっとそうだな。


 俺がそんな感じで勝手に答えを出して納得しようとしていたらあっという間に兄は目の前に来た……そして止まってしまった。

 俺に用があるのかよ……なんでだ?今まではこんな事なかったじゃないか?

 別に俺は何もしてないぞ?


 俺に弱点があるとしたら間違いなく兄だろう……俺が中学一年生の頃当時兄が高校一年生だったのだが、その時に喧嘩を見てしまってから俺は兄が怖い。

 その時の喧嘩は兄が襲われて始まったとか言う噂だったがそんな事は関係ない……だってその相手の一人は病院送りにされて暫く歩く事すら困難だったって噂もあったからだ……実際に俺も兄がぼこぼこにしている所を見ちゃったせいで信憑性は凄かった。

 兄が俺に対しての感情が無って事は分かっているがそれでもだ……俺はそれ位兄の事が怖くて嫌いだ。


「おい!!!」

「に……兄さん……ど、どうしたんですか……」


 明らかに怒っている兄に対して俺は口が震えていた。


「どうしたんですかじゃねーだろうが!!!随分とふざけた事してくれたな?俺にビビってると思ってたんだが、実は舐めてたんだろ?何とか言ってみろよ!!!」


 兄は先ほどよりも怒気の籠った声でそう言って来て胸倉をつかんできた。

 な、なんのことだよ……俺は何もしてないじゃないか……


「ど、ど、どういう事……ですか?」

「しらばっくれてんじゃねーぞ!!!俺の名前を使って好き勝手やってたんだろ!!!もう分かってんだよ!!!」


 俺はそれを聞いて血の気が引いた。

 何で今更……今までは全く気付かれなかったのに……それも一年半だぞ……

 しかも俺は高校に入ってからは比較的に落ち着いていたので今回を含めないで一度しか兄の名前は使っていないはずだ。

 それなのになぜ……俺は基本兄の名前を出すときは女が絡むときだけなのに……


 俺は全身から冷や汗を出しながらそう思っていた。

 とにかくどうにか言い訳をしないと俺は終わりだ!


「そ、それは一体ど、どういうことですか?」


 俺は冷静になってそう言おうとしたが余りの恐怖で唇が震えてしまっている……いや、唇どころか全身震えていた。


「まだ言い訳すんのかてめぇ!!!もう俺の知り合いに聞きまわって皆知ってたんだぞ!!!それにお前と同じ中学だった弟を持つ奴がいてそいつにも事実だって聞いたぞ!!!今更良い訳が通用すると思ってんのか!!!」


 兄はそう言って次は胸倉をつかんだまま俺を壁に押し付けてきて俺の足が浮いた。


「い、いやで、でも……あくまで噂じゃ……」


 俺が無我夢中でそう言うと胸倉を話されたのだがその瞬間に兄の拳が俺の頬に飛んできた。

 そして殴られた俺はそのまま道に倒れこんだ。

 今まで一度も殴られた事のなかった俺は痛すぎて泣きそうだった。

 

「お前……まだ言い訳すんのか?」


 じゃあどうすればいいって言うんだよ!!!

 兄の名前を使っていたとか言えるわけがないだろうが!!!


「良い訳じゃなくて……」

「屑野郎が……」


 俺がそう言おうとすると今度は思いっきりお腹を蹴られた。


 苦しい……俺は口からよだれを垂らしながらも息が出来なかった。


 俺が屑?何で俺がこんな目に合わないと行けないんだよ……

 大体お前もろくな人間じゃねーか!

 そう思うと何故か怒りがわいてきた俺は息が出来るようになり、落ち着いてきたらつい言ってしまった。


「お前の名前を使ったからってなんだって言うんだよ!!!大体お前は日頃から暴力を振ってるんだか変わんねーだろうが!!!今更何言ってやがんだ!!!てめぇも屑だろうが!!!」

「そうか……」


 俺がそう叫んだら兄は俺を凄い剣幕で睨んでそう言った。

 そしてそれとほぼ同時に今度は腕を踏みつけられてボキッと音が鳴った。


「ぐわ"ぁぁぁぁぁ!!!!」


 俺は余りの痛さにそう叫んだ。

 間違いなく腕が折れた音だった。


「二度と俺の名前を使って好き勝手すんじゃねーぞ?」

「は"い"ぃぃぃ!!!」

「それとお前は長い階段から落ちたんだ?良いかわすれんじゃねーぞ?もし違う事を言ったらただじゃおかねーからな?」

「え?」


 それは一体……俺がそんな事を思たその瞬間だった、俺は何度も殴られていた。


 もうやめてくれよ……

 もう女とかどうでも良いからやめてくれ……

 俺は恐怖と後悔の中ボロボロになりながら気を失っていた。

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