第32話 宮里対策
「はぁー」
俺は学校の休み時間にため息を密かに着いていた。
理由は簡単で明らかに山崎の様子が変だからだ。
朝から様子を見ていたのだが明らかに考え事をしているのかぼーっとしている事が多い。
それでいてきららと話している時は動揺しているのがはっきりと分かる。
LUNEで薫が教えてくれたが、何かを言おうとしてやめているそんな感じだと言っていた。
「まぁ、そうだよな」
これではっきりとしたが宮里にきららを遊びに誘えと言われているのだろう。
あの感じを見ると山崎はきららをアイツに合わせるつもりなのか?
実際の所は分からないがとにかくゆっくりとはしていられなそうって事は間違いないな。
とにかく俺は今日宮里と接触する必要がある。
山崎がきららを合わせるつもりと仮定したとしてもいつ動くのかは分からないからな。
それより宮里兄をどうしようかな?
ゲームだと山崎が断り続けたらあっさりと引いたのだが、その際に宮里に罰を与える事はなかったんだよな。
でも俺はそんなあっさりと終わらせる気はないかなら……大体これ以上被害が出ないようにアイツを放置して置くべきでもないし。
◆
その日の午後、俺は早退してとある場所に来ていた。
学校で考えた結果俺が直接宮里弟に会う事はやめてここに来た。
「ここで合ってんだよな?」
ゲームで見た裏設定で書いてあった記憶を頼りに宮里兄が仲間たちといつも集まっている場所に来ていた。
そこはそこまで大きくは無い空きビルであいつらは基本学校をほぼサボっているのでたぶんいるだろう。
まぁ、居なかったら居なかったら他の方法をとるだけだ。
俺が空きビルの中に入るとそこには4人の男がいた。
その中には明らかにがたいの良い俺よりでかい男……名前は知らないが宮里兄が居た。
「おい!だれだてめぇ?」
「ここに何の用だ?」
「誰かの知り合いか?」
俺を見た宮里兄以外の男がそう言って来た。
「あぁ、すいませんね。ただちょっと宮里さんに用がありまして」
俺は喧嘩をしに来たわけではないのでへりくだり過ぎない程度にそう言った。
「はぁ?てめえ何言ってんだよ?」
「そうだぞ?この人がどういう人か知って言ってんのか?」
「ほんとだよな?馬鹿かおまえは?」
「お前らは黙ってろ!」
男三人が俺に対してそう言うと宮里兄はそう怒鳴った。
「「「は、はい!!!」」」
「それでなんの用だ?お前は確か王豪海斗だよな?」
王豪海斗の記憶だと宮里兄の事は全く覚えていないのだが、宮里兄は俺の事を知っているのか?
それにしてもゲームでは喧嘩っ早いってあったのだが、以外と話してみるとそんな様子もなさそうな感じがするな。
「そうですね」
「そうか。それで何の用だ?まさか喧嘩しに来たのか?」
「それは違いますよ。俺はもう喧嘩はやめましたから」
「ふはは、あの王豪がね……」
俺の言葉に宮里兄は大きな声で笑ってそう言った。
やっぱりゲームでの印象と結構違うな。
いや……そう言えばゲームでのこいつはあくまでも弟の宮里目線と山崎目線でしか語られてなかったから違ってもおかしくはないのかもな……
「俺の事を知っているんですか?」
「噂でちょっとな。でもその噂とはだいぶん違うな」
「それはそっちも同じじゃないですか?」
「そうかもな。でも俺は俺に敵意がある奴か俺みたいな不良以外には基本手は出さないからな」
そうだったのか……俺もそうだが噂だから誇張はされがちか。
……いや、それだったら俺は何判定なんだ?
「不良って事は俺にも手を出す対象って事ですか?」
俺はあくまで堂々とそう質問をした。
「それはこれから次第だな。それでなんの用だ?」
何というべきか……まぁ、回りくどいことはしないでそのまま言うか。
宮里兄と争うのはめんどくさいしな。
「とりあえず俺に敵意はありません。そして今日来たのは宮里さんの弟について聞きたいことがありましてね……」
俺がそう言うと宮里兄は眉間にしわを寄せた。
「あの屑の事?」
「屑?」
屑って言うって事はアイツがしている事を知っているのか?
知っていて放置しているんだったら兄を使ってあいつを止めるのは無理そうかもな。
これは予想外だな。
俺が直接あいつを脅すのも良いかなと思ったが俺は今回の件が終わったらあんなやつに構ってる暇はないから、それじゃあアイツが今後同じ事を繰り返す可能性もあるなって思って兄の所に来たんだけどな……
「あぁ、アイツは女癖が悪い上に弱い者いじめをするのが好きだから屑じゃなかったななんだって言うんだよ?」
この宮里兄がどういう人物なのかははっきりと分かっていないがどうやら弟の事を嫌っているのはゲームと同じようだな。
この人も良く喧嘩をして自分より弱い奴をぼこしているだろうけど……まぁ、さっきの話を聞く限りだと誰彼構わずって訳でもなさそうだし良いか。
それよりきららの安全が最優先だしな。
「それであいつが宮里さんの名前を使って好き勝手してるのも知っているんですか?」
「はぁ!?それはどういうことだよ!!!てめぇらそれは本当か!!!」
俺がそういうと宮里兄は仲間の男たちに凄い剣幕でそう言った。
「そ、それは俺も聞いたことがあります……」
「自分も聞きました……」
「俺もです……聞いたことはありますね……」
三人は宮里兄に対して恐る恐るそう言った。
「おい!何でおしえないんだよ!!!」
「す、すいません……ただ宮里さんは弟さんの話をするのを嫌がってましたので……」
なるほど……確かに確証がなかっただけで宮里弟が兄を利用して女子に手を出したりと好き勝手にしているって噂はかなり広まっていたのに宮里兄が知らなかった理由はそう言う事だったのか。
弟の話を嫌がる宮里兄に対してわざわざ弟の噂話をする人が居ない訳だから宮里兄にその話が届くことはなかったのか……
こりゃ俺が今日来なかったらこの先もずっと知らなかったんじゃないか?
「チッ!!!まぁ、良い……とにかくあの糞野郎は絶対に許さねぇ。それでお前はそれを伝えに来ただけなのか?」
「そうですね」
「そうか……それじゃあ俺はあの糞野郎にお灸を添えないとだからな。行くぞお前ら!」
「はい!どの位やるつもりですか?弟さんなんですよね?」
「あんな奴弟なんて思ってねーよ!俺の名前を好き勝手使って来たんだ!二度とそんな事を出来ないように徹底的にたたき潰さないとな!!!」
宮里兄は凄く機嫌が悪そうに怒鳴りながら外に出て行った。
「ふぅー、うまくいったな……てか宮里兄はぶちぎれてたな。たたき潰すとか言ってたもんな」
最悪の場合は宮里兄と喧嘩をしてでも弟に制裁を与えてもらうつもりだったがそんな必要がなくて良かった。
俺がここまでして兄を動かしたかった理由は簡単だ。
たとえ俺が宮里弟に直接会って脅したとしても大人しくなるのは最初だけだろうと思ったからだ……大体俺も今回の件が終わったら宮里なんて奴を相手にする気もないしな。しばらくして俺が何もしないって分かったらアイツが再び動き出すのは目に見えている。
それにアイツに対して暴力で解決したら大変な事になりそうだしな……あいつは身長は平均よりも高いがガリガリなので俺が暴力を振るうと弱い者いじめでしかないし、そんな噂が広まったら悪評を薫と学校でも一緒にいれる為になくそうと頑張ってるのに台無しになる。
それに百パーセントとは言わないがほぼ確実に自分の名前を使われている事に対して宮里兄が怒るとは思っていたのでこの行動をとったのだ。。
今まで好き勝手やって来たんだあんな奴は一生兄の恐怖におびえて生きていくのが丁度良いだろう。
それにあそこまで宮里兄は怒っていたんだ、今回の件も普通の怪我じゃすまないだろうしな。
「まぁ、でもこれで間違いなくきららは安全になったな」
兄の威を借りて行動を出来なくなったどころか兄に恨みを買った訳だから宮里が今後好き勝手出来る未来はまず無い。
最初は俺が直接宮里に脅しをかけようと思っていたが結果こっちの方が正解だったな。
きららを助けるのはもちろん、今後の被害を出さないようと考えたらな。
「全く頭の悪い野郎だよな……」
一番怖い相手の名前を使うとかな……まぁ、自業自得としか言いようがないな。
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