第31話 山崎真の答えと安堵

★side:山崎真 


俺は日曜日の午後、アイツ……宮里に指定された場所に来た。


「何で薫なんだよ……」


 どう考えても薫をあいつと合わせたくはない。

 でもアイツの兄を話に出されるとどうすればいいのか分からない……

 アイツの兄によって病院送りにされた人だったいるって聞くし、本当かどうか分からないけど二度と歩けない体になった人も居るって聞いたこともある。

 

 あいつの言う事をを断ったら俺がそうなる可能性もあるんだと考えたら息も出来ないほど怖い。

 何かあれば警察に言えば良いじゃんて思うかも知れないが何かあってからじゃ俺が歩けなくなってる可能性もあるんだ……それじゃあどう考えても遅いし。


 俺が拒否すれば俺が歩けなくなるかも知れないがかと言っていう事を聞いたら薫がどうなるかなんて明らかだし……


「マジでどうすれば……」


 あいつは薫を諦めて欲しければ今日来いって言っていたが、正直何を考えているのかが想像もつかない。

 だけどどうせろくでもない事なんだろうな……


 俺がそう思って待っていたら宮里の奴が来た。


「よぉ真!ちゃんと来たんだな!」

 

 宮里は会って早々にニヤニヤしながらそう言って来た。


「それで一体何なんだよ……」

「まぁまぁ、まだあったばかりなんだし落ち着けよ」

「……良いから早く話してくれ」


 俺がそう言うと宮里は会い変わらすニヤニヤしながら再び口を開いた。


「それじゃあ幼馴染を今度連れて来てくれるか?」

「それは……出来ない」

「それじゃあ俺の兄が真に会いに行くけど大丈夫か?次会うときには歩けなくなってるかもな」


 その言葉を聞いて俺は急に怖さが増してきた。

 実際に言葉にして言われると恐怖感が全く違った。

 

 二度と歩けなくなるとか想像するだけで吐き気がするくらい怖い……

 そうじゃなくても病院送りにされる事は間違いないだろう。

 何で俺がそんな目に合わないと行けないんだよ……


 俺がそう思って震えていると宮里が言った。


「まぁ、そんなに嫌だったら幼馴染は諦めてやるよ」

「ほ、本当か!」


 俺はそれを聞いて希望を感じた。


「あぁ、そんなに幼馴染を俺と合わせたくないんだったらな。でもその代わりお願いがあるんだけどそれは絶対に聞いてもらうぞ?」

「それは、薫とは関係ない事なんだよな……」

「あぁ、お前の幼馴染とは関係ないぞ」

「それに俺にも何もしないんだな?」

「そうだな。真に何かをする事はないぞ。ちゃんと言うとおりにしてくれるんだったらな」


 それだったら何とかなるか……

 俺にも何もしないってんだったらな。


「その頼み事ってなんなんだよ……」

「あぁ、それだったらそんな難しい事じゃないぞ?ただ真さぁ、前に一緒に歩いていた子がいるだろ?たぶん学校の帰りかな?」

「一緒に歩いていた人?」


 男……の事を言っている訳じゃないよな。

 それだったら薫か弘識さんだけだが……


「そうだ。あの金髪の可愛い子だよ。幼馴染の代わりにその子を俺との遊びに誘ってくれよ」


 薫の代わりに弘識さんをって事か!?

 弘識さんをこいつの合わせるなんて絶対にしたくないぞ……

 なんだったら俺は最近だと薫より話している日もあるくらいだし何よりあんなに可愛い子をこんな奴に……


 俺がそう考えていたら宮里は言った。


「どうした?もしかしたら幼馴染よりその子の方が大切なのか?それだったら幼馴染でも良いんだぞ?」

「そんな事はない……」


 どっちが大切かと言えば小さい頃から一緒に居た薫だ。

 でもどっちも好きだしどうすれば……


「その金髪の子を紹介してくれればそれだけでもうお前らとは関わらないって約束するよ」


 弘識さんを紹介すれば俺と薫は助かる……

 それに弘識さんを紹介しても酷い目に合わない可能性も……

 でもこいつが約束を守らない可能性も全然ある……

 

 その後も暫く宮里の話を聞いたり考えたりしていたが、俺は答えられずに結局猶予を一週間くれると言う形になったが、一週間後まで何もなかったら兄をよこすとの事だった。



 俺は家に帰ってから夜に考えていた。


「はぁ……」


 何でこんなことになってるんだよ……

 薫を紹介すれば俺と弘識さんは助かる。

 弘識さんを紹介すれば俺と薫は助かる。

 俺がどっちも紹介しなければ俺は兄に襲われるけど二人は助かる。

 

 いや……俺がどっちも紹介しなかったらアイツだったら直接薫か弘識さんを襲うんじゃ……

 アイツだったら全然やりかねない。


「だったら……」


 もし俺が紹介しなくても結局薫か弘識さんが襲われるんだって考えたらどっちかを紹介して満足してもらう方が良いんじゃ……

 そうすれば俺も助かるしな。


「いやでもな……」


 駄目だ、いくら考えてもどうすればいいのかが分からない。


 でも猶予は一週間しかない。

 やっぱり弘識さんを紹介するべきなのかもな……


 とにかくもう少しどうにかならないか考えてみよう。


 俺はその後も全然寝付けないでいた。



 ――次の日の学校。


 授業中俺は考えていた。


 宮里の事を考えすぎて勉強なんてとてもじゃないが手が付かない。

 当然ノートも取ってないしな。

 友達に話しかけられても上の空の事が多いらしい。

 薫達にもどうしたのって言われたしな……


 俺はいろいろ考えた結果弘識さんを紹介する事にした。

 薫を紹介は出来ないと思ったしどっちも紹介しないって選択肢は一番最悪だと思ったからだ。

 どっちも紹介しなければきっとあいつは俺を兄に襲わせてから薫と弘識さん、どっちも襲うと思ったからだ。

 そうなる位だったらアイツの思惑通り弘識さんを紹介して満足してもらった方が良いと思ったからだ。

 そうすれば俺も病院送りにされないで済むしな……それが一番良いよな……


 そう思って俺は今日何度も弘識さんに話しかけたのだが結局直前で言葉が詰まってしまって、誤魔化して会話をしてしまっていた。

 弘識さんに決めたとは言えやっぱり罪悪感が強くて言い出せなかった。


 ――そうして放課後になって家に帰っていた。


 今日は誰かと帰る気分じゃなかったので一人で帰っていた。


「結局言えなかったな……」


 今の気持ち的には弘識さんを紹介するのが一番いいと思う。

 そして何となくどれだけ待ってもその考えは変わらないと思う……やっぱり薫と弘識さんとでは過ごした時間が違うからな。

 弘識さんには申し訳ないけどタイミングを見て遊びに誘うしかなさそうだな……宮里はもしかしたら本当にただ遊ぶだけって可能性もあるしな……


 その時だったLUNEの通知が鳴った。


 内容を確認すると衝撃的な内容だった。


『もう紹介しなくていい、お前たちとももう関わない』


 俺はそのメッセージを送られて意味が分からずに連絡を返したり電話をしてみたがどうやらブロックされていたようだった。


「一体何があったんだ?」


 いや、そんな事はどうでも良いか!


「良く分からないけど助かった!」


 これで薫と弘識さんも助かったし俺も痛い目に合う事もない。

 ブロックまでされてるんだったら間違いないだろう。

 

 本当に訳が分からないがとにかく良かった。

 もう宮里の事で悩むこともない。


「良かった……」


 二人とも好きだしこれで安心だ。

 それに最近だと南川さんとも話すようになって好きになった。

 まぁ、前から可愛いなって思ってたしな。


「とにかくこれで安心して三人と遊べる」

 

 俺はそう思ったら昨日寝不足な事もあって安心して眠りについていた。

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