第27話 薫と話す

「いらっしゃいませ!……あ!薫ちゃんと海斗君!来たんだね!」


 薫と一緒にきららが働いているカフェに入ると接客をしていたきららがそう言って来た。


「きららちゃん!来たよ!」

「うん。いらっしゃい二人とも!お昼だからこれからお客さんも増えてくるころだけどゆっくりしていってね!」

「じゃあそうするよ」

「うん!」


 そうして俺と薫はきららに席に案内されてから席に着いた。


「海斗君は何食べる?」


 席に着いてメニューを見た薫がそう聞いてきた。


「そうだな……じゃあ俺はオムライスにしようかな。薫は何にするんだ?」

「私は海斗君と同じものを食べたい気分だから私もオムライスにしようかな!」


 薫は笑顔でそう言って来た。


「じゃあそうしようか」

「うん!」


 それから店員さんを呼ぶときららが再び来た。


「ご注文はお決まりでしょうか?」


 仕事中のきららは丁寧な言葉遣いでそう言って来た。

 そんなきららに対して薫が言った。


「えっと。そえれじゃあオムライスを二つお願いします!」

「かしこまりました!それでは少々お待ちください」


 そう言ってきららがオーダーを取って戻っていった。


「きららちゃんしっかりしてるね」

「まぁ、そうだな。バイト中だし今さっき他のお客さんもきたしな」

「それもそうだね。でもやっぱりカッコいいよねきららちゃんって」

「カッコいいか……そうかもな」


 それから暫くしてオムライスが来た。


 今回はきららではなく他の人が持ってきたが、さっききららも言ってたしお客さんが増えてきたからだ。

 このお店は雰囲気も良いので平日、休日関係なくお昼は結構お客さんが多いらしい。


「おいしそうだね海斗君!」

「そうだな。早速食べようか」

「うん!」


 そう言って薫が一口食べた。


「ふわふわしてておいしいよ!海斗君も食べて」

「分かったよ」


 それから俺と薫はおいしくオムライスをいただいた。



 ――オムライスを食べ終えた俺たちは外を歩いていた。


「余りきららちゃんとは話せなかったね」

「まぁ、仕方ないだろ。前回と違ってお昼ってのもあってお客さんが結構いたからな。それに薫は学校では毎日話してるし」

「そうだね。まぁ、オムライスはおいしかったから良いかな」

「確かにおいしかったな」

「それにしてもきららちゃんって無理してないと良いけど……」

「無理?」

「うん。もうカフェでバイトしてるのはバレたからって他の場所も掛け持ちしてるって教えてくれたの……」

「なるほどな……」


 無理してるかしてないかで言えば本人的にはしてるとは思っていないのだろうが、疲れはたまって行ってるのだろう。

 ただおばあちゃんとおじいちゃんの為に!その気持ちだけで頑張っていたはずだ。


「私が心配した時は大丈夫って言ってたんだけどね……」

「まぁ、本人も欲しい物があるって言ってたしな……」

「それもそうだね」


 きららの事は助けてあげたい気持ちもあるけどきっかけがないのに踏み込むわけにも行かないからな。

 もう少しちゃんと考えてどうしてあげるのが良いのかを考えないとな。


 それよりも今はちゃんと俺の事を薫に話すことから集中しないとだよな。

 薫には出来るだけ隠し事はしたくないから……と言っても流石に転生に関することは言えるわけはないんだけど……

 それでもお金の事は今日話すって決めた訳だしちゃんと家に着いたら話そう。


「薫?これからどうする?」

「そうだね……本当はどこかに行こうかなって思ってたけど、もう海斗君のお家に行こっか。二人っきりでゆっくり過ごすのも良いなってさっき思ったんだ」


 丁度良いな……笑顔でそう言う薫に対して俺は言った。


「分かったそうれじゃあ家に帰ろうか」

「うん!」



 ――家に着いた俺たちは俺の部屋で座って話していた。


「薫。ちょっと話しておきたいことがあるんだけど良いか?」


 俺は今がいい機会だと思いお金の事とかを話すことにした。


「良いよ?どうしたの」

「今日とかさ、俺の家に泊まるためにいちいち学校に着替えとかそのほかも色々と持ってきたんだろ?」

「うん!そうだよ」

「それって大変じゃないか?」

「まぁ、そうかもね……荷物が多いから何持って来てんだって真とか他の人にも聞かれてたし」

「だよな。だからもし薫が良かったら隣の部屋が空いてるしその部屋を薫の部屋にして色々置いておいても良いぞ?」

「え!?良いの?」

「もちろん。良いぞ。タンスとかベッドとか必要なものがあれば俺が用意しておくからさ」


 俺がそう言うと薫が言った。


「そういえば隣の部屋って何もない部屋だっけ?」

「あぁそうだな」

「だったら大丈夫だよ。流石にそんな事申し訳ないよ……それに家にある服とかをもって来て置いておくとお母さんにバレちゃうかも知れないしね……」


 服とかも買うつもりでいたんだけど、まぁ薫はそういうよな。

 当然そう返事が来ると分かっていた俺は言った。


「まぁ、そういうよな薫は……それからこのことに関係もしてるんだけどもう一つ言いたいことがあるんだ」

「うん……」

「実はな……俺って結構お金もちなんだ……もちろん自慢したい訳じゃなくて、だから気にしないでくれって言いたいんだ……」

「お金持ち?」


 俺の言葉にピンと来ていないらしい。

 まぁ、確かに家は大きいけど俺が高いものを身に着ける事もなかったし高い買い物をしてるところも見てきてないからな……まぁ、高い買い物って言ってもそれは俺の家にあるトレーニングルームにある器具とかだけなんだが、薫はあの部屋に行った事もないからな。

 

「ちょっと待っててくれ」


 俺は手っ取り早く伝える為に一番お金の入っている通帳を持ってきた。

 他にも数個通帳を持っているがこの通帳が一番入っている。


 俺はその通帳を薫に見せた。


「これは?」

「まぁ、見てわかると思うが俺の通帳だな……取り敢えず額を見て大丈夫だぞ」

「う、うん……」


 そう言って薫は通帳の額を見た。


「じゅ、十桁!?か、海斗君?これって……」

「まぁ、あれだな……俺って投資とかやっててかなり稼いでるんだよな……でも俺自身に欲がなすぎてお金の使い道が全くないんだよな……だから彼女だし薫の為に使いたいなって思ってるんだけど……」

「え……」


 それから少しして薫は冷静になった。


「分かった……取り敢えず海斗君がお金持ちなのは分かったけどね?だからと言ってなんでもかんでも買って欲しいなんて言うつもりはないよ?」

「んーじゃあ言い方を変えるぞ?俺はもっと薫が俺の家に来て欲しいから自分の為に薫の部屋を作りたいんだ」

「……ずるい言い方するね海斗君って」

「ダメか?」


 照れながらそう言う薫に対して俺はそう言った。

 それから薫はしばらく何かを考えてから言った。


「海斗君がそんなに言うなら分かったよ……でも必要最低限だからね?必要以上にお金をかけるとかは必要ないから!」

「んーじゃあそうしようか。でも服も家からは持って来れないなら買う必要があるよな?」

「そ、そうだね……」

「それじゃあ三着くらい服も買うけど良いよな?」

「三着も?一着で良いんじゃない?」

「まぁ、念の為だよ念の為」

「そ、そう……ありがとう」


 薫は申し訳なさそうだが嬉しそうでもあった。

 薫は決してお金に釣られるような子じゃないが、それでも自分の為にここまでしてくれる事を嬉しく思っているのだろう……薫はそう言う子だからな。


「じゃあ服は明日一緒に買いに行こうな。ベッドとかタンスとかはこの後ネットで注文しておくからさ」

「明日……うん、分かったよ。ありがとうね海斗君!」


 薫は笑顔でそう言って来た。

 正直薫の為だったらいくらでも使っても良いと思っているんだが必要以上は駄目って言われてるし流石にやりすぎは駄目だよな。

 

 それに明日服を買いに行こうって言ったけど薫に選んでって言われないと良いけど……俺も王豪海斗もファッションに興味ないのでその辺はマジで分らないんだよな……それも女子だと尚更な。

 今持っている私服も王豪海斗と昔関係があった女子が選んだ服だしな……まぁ、選んでくれたって言ったらドライな関係じゃないように聞こえるが、これは服を買って欲しいと言われた王豪海斗がじゃあお金を渡すからついでに俺の服も買ってきてくれ……そんなのりだったけどな。まぁ、その女子もちゃんと服を選んでくれたっぽかったけど。


 そんな訳で俺にファッションセンスは無いのだ……

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