第26話 テスト終わりの放課後

(キーンコーンカーンコーン)


 チャイムが鳴って中間テスト最後の科目が終了した。

 

 クラスメイト達は一気に元気になってお祝いムードになって騒がしくなった。


 薫の方を見るときららと……今日は仁美も一緒に話していた。

 薫と仁美が仲が良いのは分かっているのだが、きららも仲が良いのだろうか?

 話している所は余り見た事が無かったが、見ている感じだと楽しそうに話しているので仲は良さそうに見える。


「まぁ、きららだもんな……」


 仲が良いのだろうか?そんな事を思った後にそうも思った。

 ゲームでもこの世界でも感じたのだが、弘識きららと言う人物は見た目がギャルっぽいのも含めて凄くコミュニケーション能力が高いのだ。

 それこそ知らない人と出会ってもすぐに友達になれるんだろうなってくらいにはな。

 そう考えたらきららだったらクラスメイト全員と友達になってても何もおかしくない。


 そんな事を考えていたら薫が二人とお別れして教室から出て行こうとしていた。

 その時に薫が山崎に話しかけられた。

 声は聞こえないがどうやら山崎が何かに誘っている感じだった。

 それに対して薫は表情を変えないで首を横に振っていたのであっさりと断ったのだろう。

 その後薫は歩いて去って行って山崎は帰って来た……そう思ったら今度はきららに話しかけに行った。

 きららはその時自分の席で帰る支度をしていたので今度は小さいが声が聞こえてきた。


「弘識さん……テストも終わったし良かったら一緒に遊びに行かない?」

「んー、ごめんね。行きたい気持ちもない訳じゃないんだけどね……私はこの後用事があるんだよね」


 山崎がきららをそう言って誘うときららは直ぐにそう答えた。

 俺はその用事がバイトだって事をしっている。

 昨日の帰り道に明日からまたバイトを入れているって言ってたもんな……本当に頑張ってるよな。


「そ、そうなんだ……もしかして……誰かと遊ぶとか?」

「ううん。詳しくは言えないけど遊びに行くわけじゃないよ」


 その返事を聞いた山崎はどこか安心した表情になっていた。


「そっか……まぁ、用事があるんだったら仕方ないよね」

「それじゃあ私は行くね」

「うん」


 そうしてきららが教室から出て行った。

 因みにきららにも学校では出来るだけ俺と仲が良さそうにしないようにしてもらっているので、学校で話す事は余りない。

 

 ていうか今の会話を聞いて思ったのだが……もしかしたら山崎って薫にも同じ事を言って断られたんじゃないのか?

 薫に断られたからきららを誘った、そんな感じがしたな。

 じゃあもしかして次は仁美か?


 そう思って山崎の方を見てみると案の定帰る支度をしていた仁美の元に向かっていた。

 まぁ、最近は仁美と仲良くしていたしな……きららルート一直線と思いきやそっちにも行くとは……

 

「俺もこんな事をしてないで早く帰らないとな」


 実は今日は薫と二人で落ち合って二人で帰る予定なのだ。

 薫が先ほど一人で出て行ったのはその為だと思う。

 そんな訳で俺はこんな所で山崎の事を考えている時間はない。


「まっ、急いで行けばまだ俺の方が先に着くくらいの時間だろう」


 そう思って俺は急ぎ目に教室をでた。



 ――それから俺は急いで集合時間に向かった。


「まだ薫は来てないな」


 俺が急いで来ると薫はまだ来ていなかった。

 まぁ、俺と薫では歩幅も当然違うし、俺は急いできたから当然か……そう思って待つことにしたら、それから一分後に薫が来た。


「あ!海斗君!もういたんだね!」

「あぁ、今さっきだけどな」

「そっか。それじゃあ今日はいっぱい遊ぼうね」

「そうだな、遊ぶのは久しぶりだしな」


 そうして俺と薫は一緒に歩いた。


「海斗君、今日のテストはどうだった?」

「まぁ、昨日と同じ感じでかなり自信はあるな。薫はどうだったんだ?」

「私も良い感じだよ!結構自信はあるかな!」

「それなら薫が頑張って勉強した成果が出たんだな」

「そうだね!海斗君ときららちゃんと頑張った成果だね!」

「そうだな、二人とも頑張ってたもんな」

「それにね、きららちゃんともさっき話したんだけど勉強した科目は今日も出来が良かったみたいで赤点を回避出来そうだって喜んでたよ」


 やっぱり勉強した科目はちゃんと出来たんだな。


「そっか。それは良かった」

「だよね!きららちゃんも凄く頑張ってたもんね!」

「それに覚えが凄く良かったからな」

「うん!次のテストも一緒に勉強出来たらいいね」

「まぁ、それは薫が誘えばきららは喜んで受け入れんじゃないか?」


 受け入れるんじゃないか?とか言っているが実際は絶対に受け入れると思う。

 そのくらいきららも薫の事を大切な友達だと思っているっぽいしな。


「それもそうだね」

「あぁ」


 ――それから暫く歩きながら話していた時、俺は最近ちょっと気になっていた事を聞くことにした。


「そういえば最近山崎とはどんな感じだ?俺と付き合って仲が悪くなったとかだったらちょっと申し訳ないしな」


 薫からしたら恋愛感情が消えても家族同士で仲がいい幼馴染って事実は変わらない。

 それなら仲が悪くなると親同士も気まずくなるだろうし、薫自身も山崎と仲違いをしたい訳ではないだろう。

 それに薫を奪っといて何を言っているんだ?そう思われるかも知れないが俺は別に山崎に何かをされた訳でもないので山崎を恨んでいる訳ではない。

 ちょっと男らしくないなとは思うがただそれだけだ。


「んー、そうだね……真の事は気にしないでも良いかな?私も別に真の事が恋愛として好きじゃなくなっただけで嫌いになった訳ではないけど、だからと言って真の事を海斗君よりも優先するとかは絶対にあり得ないしね。それに幼馴染と言ってもただそれだけで、海斗君がもし気になるんだったら真とは今よりも距離を置くよ?」


 そうだったな……ゲームでもそうだけど薫は本当に心から異性を好きになったらその人を最優先でほかの男子には冷たいと言うか絶対に距離をとるんだったな。

 薫がそのつもりなら俺からいう事はなさそうだな。

 大体今の薫だったら俺が男とは関わるなって言えば本当に男子を無視しそうだしな……そんな事をしたら薫が良く思われないのは考えるまでもない。


「まぁ、その辺りは薫に任せるよ。俺は薫を信じてるしな」

「そっか。でも大丈夫だよ!私は海斗君以外の男子には絶対に触れないからね!」


 薫はそう言って腕に抱き着いてきた。


「ありがとうな薫」

「ううん。私は海斗君の彼女なんだから当然だよ!」


 俺がそう言うと薫は満面の笑みでそう言った。


「それじゃあ薫?この後はどうする?取り敢えずお昼ご飯でも食べに行くか?」


 今日はテストが三教科だったので昨日より早く学校が終わって今はまだ12時を回っていない時間帯だ。


「そうそう!実はねきららちゃんが今日あのカフェでバイトをしているみたいだから一緒にまた行こうよ!お昼ご飯を食べにね!」

「良いなそれ。それじゃああのカフェでお昼ご飯を食べようか」

「うん!それでその後は一緒にどこかに行ってから……その……お母さんには今日は友達の家でテストが終わった打ち上げをするから泊まるって言ってあるんだ……」


 これは俺の家に泊まりたいって事だよな。

 薫の母親に黙ったままなのはちょっと気が引けるがまぁ、たぶん大丈夫だろう。

 実は言うとゲームではヒロイン三人の家族は本人がそれを望むなら大丈夫ってスタンスなのだ……エロゲの世界だと両親が反対する展開は望ましくないからそのせいなのかもな。

 まぁ、ゲームではその対象が王豪海斗じゃなく山崎真だったのだが、たぶん同じなんじゃないかと思っている。

 一応薫の母親とは面識もあるし、今も塾の迎えに行っている事を知っている訳だから……そんな訳で薫の両親の心配は余りしていないのだ。


「そっか……それじゃあ薫、今日は俺の家に泊まるか?」

「う……うん……着替えは持ってきてあるから……」


 俺がそう言うと薫は恥ずかしそうにうなずいた。

 最近では慣れてきたと思っていたが、やっぱりまだ恥ずかしんだな。

 でも薫の初々しい感じも凄く良いなって感じる。

 いずれは慣れてなくなっていくだろけど、それはそれで良いなって思うし結局薫だったらなんだって可愛いんだよな。

 

 てかテストだけなのに薫はちょっと荷物が多いなって思ってたら着替えとか泊まるための物を持ってきたのか……

 俺の家に置いておいても良いんだけどな。

 勿論俺が買ってあげるし……薫が良いと言ってくれるならだけどな。

 

 ていうか俺は自分じゃお金の使い道がないからいくらお金を持っていても生活で必要なお金以外全くと言って良いほど使ってないんだよな。

 そう考えると薫に使いたいのだが……そのためには薫を説得しないとだよな。

 薫の性格上だと俺がお金持ちだと知ってもなお俺に必要以上に奢ってもらうとか、何かを買ってもらうとかしないだろうし。

 薫もそれが嫌な訳じゃないし気持ちは凄く嬉しいけど、申し訳ない気持ちが大きいから断るって訳だ。

 まぁ、だとしても俺がお金持ちだと告げる事が最初だな……そうじゃなくてもそろそろ言っても良い頃かなって思ってたから今日言おうか。

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