第21話 薫との勉強会の約束
――薫と付き合い始めてから次の週の金曜日。
付き合い始めて一週間が経つが俺の学校での生活が変わった訳ではない。
基本は一人で授業を受けて一人で昼を食べて過ごす、そんな学校生活だ。
勿論それが嫌だとか、悲しいとかではないのでなんの問題もない。
なぜなら一応この高校は休み時間になるとスマホの使用を許可されているので休み時間の度に薫から連絡が来て話もしているし、放課後は途中で合流して一緒に帰っている。
俺たちの中で仮にそれでばれたらしょうがないと言う結論に至った。薫が一緒に帰りたいって言ったのでそうした。
まぁ、元々塾の迎えに行ってる時は別にマスクとかもしてなかったってのもあったしな。
後変わった事と言えば薫がきららと更に仲良くなったって事かな?
なんか休み時間とかは常に一緒に居る気がするな……まぁ俺としても薫が凄く楽しそうだから良いんだけどな。
それと良く分からないのが山崎の事だな。
きららルート一直線で行くのかと思ったのだが、最近は仁美と仲を深めているような印象が深い。
勿論きららと薫と話している時もあるのだが、きららと山崎の距離感が縮まっている様子が全然ないんだよな。
いや……もしかしたら薫がきららと仲良くなりすぎてってのも原因なのか?まぁ、分からないな。
そんな訳で俺からしたら山崎が誰に好意を向けているのかが全然分からない。
もしかしたら全員って可能性もあるが……ってかその可能性が高いんじゃないかって思っている。
残念ながら薫はもう俺の彼女だから山崎のハーレムエンドってのは既に不可能なんだけどな。
そう言ってはいるが今の山崎を見ていると前提としてハーレムエンドとかあり得な気がする。
だってハーレムエンドルートの山崎は男らしいし優柔不断でもないんだよ……
まぁ考えても仕方ないか。
◆
――その日の夜、俺は薫の塾の迎えに来ていた。
「海斗君!今日も来てくれてありがとう」
薫が俺を見つけると同時に笑顔でそう言って駆け寄ってきた。
「当然だろ。恋人になったんだからどこでも駆けつけるって」
「えへへ。ありがとう。海斗君の彼女になれて良かったよ」
薫はそう言って俺の腕に抱き着いていた。
彼女になってからの薫はゲームでもそうだったが本当に甘えるようになるんだよな。
そんな所が薫の更に可愛い所だと思う。
「俺も薫の彼氏になれて嬉しいぞ」
「そっか。それじゃあ海斗君、帰ろうね」
「そうだな」
そうして俺たちは手をつないで歩き始めた――
「そういえばもう少しで中間テストの時期だな」
テストは来週の木曜日と金曜日で七教科ある。
「そうだね。海斗君って勉強できるの?」
王豪海斗は当然勉強が出来ているしなんなら授業も簡単だしな。
ていうか入試テストで一位だったんだよな……記憶によると新入生代表スピーチは速攻で断ってたけどな。
その代わりに代表スピーチをしたのが入試テスト2位の南川仁美なんだよな。
まぁ、俺が知ってるのはゲーム知識があるからであって別に入試テストの結果は公表はされてないんだけどね。
「そうだな。一応入試テストは一位だったな」
俺は薫相手に嘘をつく必要はないと思ったので正直に言った。
「え!?そうなの!?でも新入生代表スピーチは仁美ちゃんがしてたけど?」
薫は驚き不思議そうな顔でそう言って来た。
「まぁ、あれだな……俺が代表スピーチって余り良くないと思って辞退したんだ」
当然王豪海斗は面倒くさいからって理由だったが、俺がそうだったらそうするのでそう言った。
このくらいの嘘だったらいいよな……
「そうなんだね……びっくりだよ。それじゃあ仁美ちゃんが2位って事?」
「まぁ、そうなるのかな」
そういえば薫もテストでは毎回トップ10くらいには入っていたっけな。
俺がそんな事を考えていると薫が少し拗ねてように言った。
「私が勉強を教えてあげようと思ってたのに……」
まぁ、俺が勉強出来るなんて誰も思わないよな……
先生ですら驚いているくらいだったしな。
「それはごめんな。寧ろ俺が教える側かもな」
「それはそれで嬉しいかも……」
俺がちょっとからかうようにそう言うと薫が小さい声でそう言った。
「もしよかったら一緒に勉強でもするか?」
「私も今そう言おうと思ってた!丁度明日からテストが終わるまでは塾の予定も入れてないからね」
薫は嬉しそうにそう言った。
「そっか。それじゃあそうしよう」
「うん!なら早速明日とかでも良い?土曜日だしさ!」
「勿論大丈夫だぞ!場所はどうする?」
「えっと……海斗君のお家でも良い?……あ!でもするのは勉強だけだよ?そう言う事はちゃんとテストが終わってからだったらいっぱい出来るから……」
俺は別に何も言っていないのだが、薫は勝手に恥ずかしそうにしながら話していた。
勿論俺も勉強しかするつもりはなかったんだけどな……でもこう言ってくれるのは普通に嬉しいな。
「そっか。それじゃあテストが終わったらいっぱいしような」
まぁ、もちろん節度は保ってだけどな。
俺がそう言うと薫は顔を赤く染めながら頷いた。
付き合い始めて一週間のカップルが普通どんな感じなのか知らないがまぁ、良いだろう。
普通とか関係ないし俺たちは俺たちなんだからしたいようにすれば良いよな。
――それから暫く会話をしていた時。
「ねぇ?海斗君」
「なんだ?」
「勉強会なんだけどさ……もし良かったらきららちゃんも誘って良い?」
「え?きららも?」
「うん。きららちゃんさ、バイトしてるでしょ?」
「そうだな」
「それでね。今は勉強も頑張んないとって思っているらしいの……それできららちゃんも今日からテストが終わるまでバイトを休むらしいの……」
この展開はゲームでもあったな……
時期で言うと今回みたいに中間テストじゃなくて期末テストの時期なのだが薫と仲良くなって勉強も頑張ろうとして教えて貰うって場面もあったな。勿論その時は俺じゃなくて居たのは山崎だったけどな……山崎も一緒になって薫に勉強を教えて貰うって感じだった。
ここは現実世界だからゲームの知識で考えるのも良くないのかも知れないが、それ程薫ときららは仲良くなってるって訳か。
「それで教えてあげたいって事か?」
「うん……きららちゃんにはまだ言ってないんだけどね……凄く頑張ってるから協力してあげたいの……きららちゃんの事は大切な親友だし凄く好きだから」
「なるほどな……」
薫の性格上友達の事を凄く大切にするタイプなので本当にそう思っているんだろうな。
俺としては薫と二人の勉強会も捨てがたいけど別に断る理由は全然ないな。
それに俺は薫のお願いや意見は基本的に断るつもりもないし。
俺がそんな事を考えていると薫が言った。
「あ!もちろん海斗君が嫌だったら嫌って言ってくれて大丈夫だからね?」
「違うぞ。俺は別に嫌なんて思ってないぞ?ただ薫ときららって本当に仲が良くなったなって考えていただけだ。勿論俺は薫がそうしたいならきららも一緒でも大丈夫だぞ」
それにきららは全教科赤点だったと思うので薫一人だとちょっと大変だろうしな……
薫も勉強をしないとだろうし、それだったら俺もいた方が薫の為にもなるだろうから。
「そっか……ありがとう」
きららはそう言って安心した様子になった。
「でもきららには俺と付き合ってる事教えてないけど……一緒に勉強するって言っても大丈夫かな?」
「その事なんだけどね……きららちゃんには教えても良いかな?きららちゃんなら内緒にしてくれるだろうしさ」
まぁ、正直に言って何も問題はないと思う。
きららが言いふらすような性格じゃない事は良く分かっているし、何より今薫と一番仲がいいのはきららだろうからいずれはバレるだろうからな。てかきららは唯一俺と薫が仲が良いって分かってるから薫も教えたいのかもな。
「良いぞ」
「ほんとに?」
「あぁ、薫が信頼してるんだったら大丈夫かな。それに俺もそこまで話したことはないけどきららが言いふらすとは思ってないから」
「そっか。分かった。ありがとうね!」
俺がそう言うと薫はニコッと笑ってそう言った。
「でもさ、それはそうとしてきららは男子の家に呼んで来るのか?しかも明日って事は直前にだし」
「どうだろうね……その時はまた連絡するね」
「まっ、それもそうだな」
俺と薫はその後も楽しく会話をしながら帰っていた。
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