第20話 今後の事と薫の心情
――薫がシャワーを浴びて帰って来てから俺たちは話しをしていた。
「ねぇ海斗君?私たちって学校ではどうする?」
「そうだな?どうすっかな……」
俺の悪評は相も変わらずで、転生してから一月くらいはかなり大人しくしているし授業も退屈ながらも出ているのである程度は良くはなってるとは言え、いまだに俺の事を見るとビビる人や怖がる人、人によっては嫌悪感を出してくる人すらいる現状な訳だしな……先生からの評価は大分良くなってるけどな。たぶん勉強が出来ているのでって事もあるんだろうけど。
そんな訳で今の状況で俺と付き合ってるなんて言ったら周りの薫を見る目が変わるのは想像に難しくない気がする。
大体薫と俺は正反対と言って良いほどだし皆が怪訝な目で見てくることは確実だ。
薫は良いっていうのかも知れないが俺のせいで交友関係が崩れるのはな……もしかしたら考えすぎかも知れないがその可能性は高いと思う。
悪評改善は時間がどうしても必要だし大体こんなに早く薫と付き合えるとは思ってもいなかったから本当にどうしようか。
俺がやった訳じゃないがそのレベルで王豪海斗は有名人だった訳なんだ。
家族も居ないし過去の事から性格も歪んで好き勝手してたんだよな……お金持ちってのがそれを助長させていたんだよ……
見た目から変えるにしてもこの世界の基準だと金髪とか黒髪とか別に大差ないんだよな……
俺がそんな事を考えていると薫が言った。
「やっぱり私の事が心配?」
「まぁ、そうだな……俺が悪い方向で目立ってるのは間違いないからな」
俺が申し訳なさそうにそう言うと薫は言った。
「最近の海斗君って授業もちゃんと出てるし学校にも毎日行ってる上に、悪いことも何もしてないから確実に噂は落ち着いてきてるんだよ」
「そうなのか?」
「うん。私の友達とかも最近は落ち着いてきてるねとか、優しい顔になてない?とかそんな事言う人もいるしね……」
そんな感じなんだな……もしかしたら意外と言っちゃっても大丈夫なのか?そう思いつつもやっぱりまずいよな……そんな考えに至ってしまう。
本当に厄介な過去だな。
まぁ、でも俺の中では第一が薫な訳だから最終的には薫の意思を最優先にしよう……俺はそう思って薫に意見を聞く事にした。
「薫はどうしたい?」
「私は……どうかな?確かに学校でも海斗君と一緒に居たいって気持ちはあるけど、海斗君が私の事を思って言ってくれてるのも伝わってくるしね……だから私は放課後に海斗君と一緒に居られれば今はそれでも良いかな……それに私自身も恋人が出来たって知られるのはまだ恥ずかしい気持ちもあるから。でもいずれはちゃんと皆にも知ってもらいたいって思いもあるよ!それに内緒にするって言うのもちょっと楽しそうだしね」
薫は恥ずかしそうに微笑みながらそう言った。
薫がそう思っているのならもう少しの間だけ二人の秘密にしておこうか。
「そっか。それじゃあしばらくは学校では今まで通りにしようか」
「うん」
そう言って薫は抱き着きて来た。
「あ!そうだ」
「どうしたの海斗君?」
俺はもう薫の事は完全に信用してるし家の鍵を渡しても良いかな。
なんだったら部屋もこの一部屋以外使ってないから好きに使って貰って構わないし。
「ちょっと待っててな」
俺はそう言って薫から離れて鍵を取りに行った。
「薫にこれを渡しておこうと思ってな」
そう言って俺は鍵を薫の手に乗っけた。
「これって……海斗君の家の鍵?」
「あぁ、何時でも来て良いぞ」
「良いの?私に渡しても……」
「勿論大丈夫だぞ。なんだったら勝手に自分の部屋を作ってくれても良いしな」
俺がそう言うと薫は嬉しそうにニコッと笑った。
「そっか。それじゃあ貰うね……暇な時とか会いたい時にいっぱい来ても良い?」
「あぁ勿論大丈夫だぞ、でも親に心配かけないようにな」
「ふふふ、そうだね」
それから俺と薫は出前を取って朝食を済ませた後、楽しく会話をして午後から塾があるとの事だったので一度家に送り届けたあと薫は塾に向かった。
◆
★side:笹内薫
「海斗君……」
私は海斗君と一夜を明けた日の午後、塾からの帰り道を歩いていた。
因みに今日は外が暗くなる前に終わる日だったので迎えは呼んでいない。
「本当に良かったな……」
緊張していてちゃんと話せていなかったかも知れないけど思いを伝えられて良かったな。
一緒に居て楽しいし安心する……本当に海斗君と出会えて良かったと思う。
「それにしても彼女か……」
少し前までの私からしたら誰かの彼女になるとは思っていなかった。
いや、考えたことはあったけど仮になるとしても相手は真だと思っていたから尚更だ。
ちょっと恥ずかしけどそれよりも遥かに嬉しい……そんな気持ちになっている。
女友達の中には彼氏が出来て凄く幸せそうにしている子も何人もいたけど今だったらその気持ちが良く分かる。
心が温かくなってさっき会ったばかりなのにまたすぐ会いたくなっちゃう……そんな気持ちだ。
「早く海斗君が良い人だって皆にも分かって貰いたいな……」
学校でも仲良くしたいなって言うのもそうだけどそれ以上に海斗君が誤解されている事が余り好きじゃない。
いや、過去にしていた事はあった訳で誤解と言って良いのかは分からないけど、とにかく今の海斗君は違うんだって事を知って欲しい。
でもそうしたら海斗君ってモテちゃいそうだな……
海斗君が私を大切にしてくれているのはちゃんと伝わって来るし大丈夫だと思うけど、女の子にモテモテになる、そうなるとちょっと嫌だな。
「まぁ、でも大丈夫かな」
私は海斗君を信用しているし海斗君からも大切にされている事は伝わって来る……だったら私は海斗君の為になる事には全力で協力しよう。
だって海斗君が笑っていると私も自然と笑顔になれるしね。
そんな事を考えていると家の前まで着いた。
「薫?」
私の名前を呼ばれて振り向いてみるとそこに居たのは真だった。
「真?どうしたの?」
「どうしたって事はないけど、たまたま見かけたから声をかけただけだぞ」
「そうなんだね」
「おう。それで薫は塾の帰りか?」
「うん。真は?」
「俺はコンビニで飲み物を買って来たんだ」
真はそう言って右手に持っていたビニール袋を見せてきた。
「また夜通しでゲームをするの?」
「まぁな。折角明日は休みなんだし……」
いつもなら心配したりして体調管理をしっかりね?とかほどほどにしてしっかりと寝なよ?とか言っていたけど、今思ったら余計なお世話だったのかも、今考えてみるとそう思う。
だから、真が友達と夜通しでゲームしようがそれに私が口を出す事じゃない。
それに私はもう海斗君の彼女なんだし、幼馴染だからと言って真とはもう必要以上に干渉する気もないしね。
「そっか。楽しんでね」
「え?あ、あぁ……」
「それじゃあ、私は家に帰るね」
「薫……もうちょっと話さないか?」
「どうかしたの?」
「い、いや……特に用事はないけど……ほら!薫だったら何時もは心配してくれたりしたのに今日は違ったからさ……」
「そう?私はいつも通りだよ?それより友達とゲームの約束をしてるんでしょ?」
「そ、そうか……それもそうだな……じゃあまたな」
「うん」
そう言って私は家に入った。
そして海斗君の彼女になってから初めて真とは話してみたけど、私の中で真への恋心は全くと言って良いほどに残っていないんだと感じた。
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