第18話 薫とのお出かけ
「もう少しでつくな」
時刻は一時三十分。集合時間は二時なのでまだ三十分ある。
そんな事を考えながら集合場所が見える場所まで来たのだが……既に薫は来ていたようだ。
「もっと早く来ればよかったな……」
そんな事を思いつつも薫の方を見ると、普段と違って凄く気合が入っている感じだった。
勿論普段も凄く可愛いのだが、今日はそれ以上に可愛く見える……
その証拠と言って良いのか分からないけど、薫に魅入っている歩行人や立ち止まっている人、二度見している人が何人もいる。
まぁ、当然と言えば当然だよな……あれだけ可愛ければ皆、特に男だったら誰でもな。
そんな事を思いつつも薫に近づくと、こちらに気付いた薫が手を振って小走りでこっちに来た。
「こんにちは海斗君!」
「あぁ、こんにちは。待たせちゃってごめんな」
俺がそう言うと薫は笑顔で返事をした。
「大丈夫だよ海斗君!私も今来たばっかりだからね。それに集合時間より三十分も早いんだから」
「そうだな。ありがとう。当然普段も可愛いけど今日の薫は何時も以上に滅茶苦茶可愛いな」
俺がそう言うと薫が頬を赤く染めて目を反らし照れながら言った。
「そ、そうかな……」
「そうだぞ。薫だっていろいろな人からの視線を感じたんじゃないか?それは薫が可愛いからだぞ?」
「……あ、ありがとう……でも私はか、海斗君以外の人にそう思われても嬉しくないよ……」
恥ずかしそうにそんな事を言ってくれる薫は本当に可愛いと思った。
でも俺以外とは山崎の事もそうなのかが少し気になったが本当に少し思っただけなのですぐに頭から消えていた。
「そっか。それなら俺は薫からカッコイイと思ってもらえるように頑張らないとな」
俺が冗談っぽくそんな事を言ったら薫は少し黙ってから、先ほどよりも顔を真っ赤にして小さな声で言った。
「わ、私はか、海斗君の事をす、凄くカッコイイと思ってるよ……」
「そっか。それは本当に嬉しいな。ありがとうな」
「う、うん……」
「それじゃあ映画館まで行こうか」
俺は笑顔でそう言って薫に対して手を出してみた。
それに対して薫はおどおどしてからゆっくりと俺の手を握ってくれた。
俺の手を握った薫は今だ顔が真っ赤だ。
一度一緒に寝たとはいえ、人前でだとやっぱり恥ずかしいのかな?
「それじゃ行こっか」
「うん……」
そうして俺と薫は手をつなぎながら映画館まで向かった。
◇
――映画館に着いた俺と薫は一緒に席を選んでいた。
「どの席にする?やっぱり後ろの方が良いか?」
「そうだね。私は後ろの方が良いかな」
「じゃあ後ろの席にするか」
「うん、こ、ここにしませんか?」
俺がそう言うと薫はそう言って指をさした。
「良いのか?」
俺がそう言うと薫は俺の事をちらっと見た後目を反らして無言でうなずいた。
俺が良いのか?そう聞いた理由はそこがカップルシートだったからだ。
正直に言って俺からカップルシートにするかと提案しようと思っていたのだがそれよりも先に薫の方から言ってくるとは……
マジでびっくりだけどかなり嬉しい。
「じゃあそこにしようか」
「うん……」
今日の薫はいつもとちょっと違うんだよな……先日までは結構目を見て話してくれていたのに今日は余り目が合わないというか反らされてるんだよな。
まぁ。二人っきりで出かけるってのが初めてだしそれのせいなのかな?
そう思いつつも薫と一緒に飲み物とポップコーンを購入してからシアターに向かった。
◇
「この席だな」
「うん。そうだね」
そうして腰を下ろした俺と薫だが思った以上に距離が近かったからか、薫は黙り込んでしまっていた。
映画が始まるまで時間ももう少しあったので、俺は薫の緊張を解きたいと思い話しかける事にした。
「そういえば薫って映画は良く見に来るのか?」
「え?いや、余り来ないかな?」
「じゃあ今日見る映画は元々見たかったのか?」
「そうだね。一応原作の小説を結構前に見ていて結構好きだったから気になってたんだ」
俺がそう聞くと薫は嬉しそうにそう答えた。
「なるほどな。それで来たかったんだな」
「うん。でも一人で来るのはちょっとなーって思ってたから海斗君と来れて良かったな」
俺はここで山崎の事が気になりはしたが良く考えなくてもアイツは恋愛映画なんて興味ないだろうし絶対に断っちゃうんだろうなって納得して聞くのをやめた。
「そっか。誘ってくれてありがとな。俺も薫と来れて嬉しいよ」
「うん!海斗君も来てくれてありがとう!」
先ほどとは違って砕けたように薫は言ったので緊張はほぐれたっぽいな。
「そろそろ始まるな」
「そうだね」
――そうして映画は始まった。
◇
「面白かったね!海斗君!」
「そうだな。確かにかなり面白かったな」
「だよね!それにしても海斗君ってば真剣に見てたね」
シアターを出た後一緒に歩きながら薫は笑ってそう言ってきた。
「いや。想像以上に面白かったからだよ。ていうかそれで言ったら薫の方こそだろ」
「ふふふ。そうだね」
正直に言って映画を見ながらキスみたいなシチュエーションになれるかなとか思っていたが、薫が余りにも真剣に映画を見ていたので俺もその考えを捨てて映画に集中していたのだ。
出来れば手くらいは途中で繋いでも良いかなって思ったが、薫が真剣に楽しんでみているのに邪魔するのもなって思いったからだ。
「そうだ。薫ってこの映画の原作の小説って今も持ってるのか?」
「当然持ってるよ!なんだったら一週間前に読み返したばっかりだしね」
「へー、こういうのって内容分かってても面白いものなのか?」
「それは当然そうだよ!勿論人によると思うけど私は関係なく楽しめるタイプだからね!それに小説は小説の、映画は映画の良さがあるしね!」
「そうなんだな……じゃあさ薫さえ良かったらその小説貸してくれないか?俺もちょっと気になってるからさ」
「え!読む!?勿論大丈夫だよ!今度持っていくね!!!」
俺がそう言うと薫は凄く嬉しそうにそう言ってきた。
まぁ、薫は読書が好きなので俺が読みたいって言ったのが余程嬉しかったんだろうな。
因みに一応言っておくが俺は薫を喜ばせたくて読みたいと言った訳ではなくて、実際にちゃんと気になったからいたのだ。
でもまぁ、そのおかげで薫が喜んでくれるなら尚更良かったとは思うけどな。
「あぁ、ありがとうな」
「うん!」
――俺たちはその後に外のベンチに座って話していた。
「この後どうする薫?」
「えっとね、海斗君……」
俺がそう聞いた後に薫は真剣な雰囲気でそう言ってきた。
「どうした?」
「私ね……色々と考えたの……」
「考えたって何をだ?」
「そ、その……海斗君が私の事を好きって言ってくれた事をだよ……」
「そうなのか……」
「うん……それでね。私はまだ答えを出せないって言ったでしょ?」
もしかしたらその事を申し訳ないと思っている感じなのかな?
薫の性格だったら全然あり得るな……全く気にしないでゆっくりと決めて貰って大丈夫なんだけどな。
俺はそう思ったのでそのまま伝えることにした。
「確かに言ったけどもしその事を気にして申し訳ないとか思っているんだったら全然気にしなくていいぞ?俺は薫を待つからゆっくりでいいからな?」
「ち、違うの……あ、いや、確かに申し訳ないって思ってはいたけど今はそうじゃなくてね……」
そう言って止まった薫は凄く緊張している様子だった。
「うん」
「そうじゃなくてね……その時の答えが出たから……今答えても良いですか?」
「分かった」
俺は真剣な顔でそう言った。
「わ、私も、じゃなくて……わ、私と付き合ってください……私は海斗君の事だけが大好きって昨日気づきました……これからもずっと海斗君と一緒に居たいです!」
薫は恥ずかしそうな表情から一気に勢いに任せてそう言ってきた。
先日はまだ答えを出せないと言われたばっかりだったので、俺はそんな予想外すぎる言葉を聞いてドキドキしていた。
この数日間で何があったのか少し気になりはするがそれよりも嬉し気もちが大きすぎたので聞くことはしない。
「薫?本当に?」
「うん。本当です……これが証拠です……」
俺が薫の方を見てそう言うと、薫もそう言って俺にキスをしてきた。
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