第17話 薫からのお誘い

「ふわぁー、することもないし今日はもう寝ようかな」


 土曜日の夜、俺は大きく欠伸をした後にそうつぶやいた。


(ぴこん)


 そんな事を思っていたら俺のスマホにLUNEが届いた。


 俺はスマホを手に取り、送り主を確認するとそこには笹内薫と書いてあった。


『海斗君。今大丈夫ですか?』

『全然大丈夫だぞ。何かあったのか?』

『えっと……今電話しても良い?』

『電話か。もちろん大丈夫だぞ』


 俺がそう言うとすぐに薫から電話が来たので俺もすぐに出た。


『こんな夜にごめんね海斗君……』

『いやいや、連絡くらい全然大丈夫だぞ。それでどうしたんだ?』


 俺がそう言うと薫はゆっくりと話し出した。


『えっと……海斗君。明日って何か予定があったりしますか?』


 明日どころか俺はいつも何も予定は無いんだがどうしたんだろうか。

 塾のお迎えかな?とも思ったけどそれだったらこんな言い方しないしないし最近ではもっと気楽に言ってくれてたもんな。

 今の薫はどこか堅いっていうか緊張してような声だしな……本当にどうしたんだろうか?


 俺はそんな事を考えながら薫に対して返事をした。 


『明日は別に何も用事はないけどどうかしたのか?塾のお迎えか?』

『ううん。塾は午前中だけだからお迎えは大丈夫なの……』

『そうなのか。それじゃあ他に何かあるのか?』

『えっと……よ、よ、良かったら明日私と一緒に遊びませんか?』


 薫は恥ずかしそうにそう言ってきた。


「え!?」 


 俺はそれを聞いてびっくりしてそう声が出ていた。


 まさか薫の方からデートのお誘いが来るとは思っていなかったからだ。

 ……デートで良いんだよなこれって?

 それにしても薫の声から察するに相当勇気をだして言ってくれたんだろうなこれ……凄く緊張してる感じだしな。


 俺はそう思い凄く嬉しくなった。

 勿論断る理由なんて全くないし俺も薫と遊びたい。


『俺と一緒に遊びに?』

『う、うん……ダメ……かな?』


 俺がそう聞き返すと薫は少し悲しそうにそう言ってきた。

 俺的にはそんな訳ではなかったのだが薫からしたら俺が乗り気じゃないと感じちゃったのかな?俺はそう思ってテンションを上げて答えた。

 

『もちろん良いぞ!寧ろ俺も薫と遊びたいからな!』

『あ、ありがとう……海斗君……』

『でも遊ぶって何をするんだ?』

『そ、そうだね……』


 薫はそう言った後、時間を少し空けていった。


『え、映画とかどうかな……今話題の○○とかさ……』

『映画か!良いね』

『その後の事は……まだ決めてないんだけど……映画が終わったその時に一緒に決めよっか……実は言うと今さっき誘って見ようって決めたから何も決めてないんだよね……ごめんね』

『謝んなくて大丈夫だぞ。俺は薫に誘われただけで滅茶苦茶嬉しいからな』

『そ、そうなんだね……』

『あぁ!』

『じゃ、じゃあ明日はそれで大丈夫?』


 急の事だしその時に一緒に何するか考えればいいかな。その時の気分とかもあるだろうしな。

 それに俺的には映画も良いけど何より薫と一緒に遊びに行けるって事が凄く嬉しいから薫がしたい事を出来ると良いいなって思う。



『そうだな。とりあえず映画を見に行くって事で』

『う、うん……』

『それで明日は何時からにする?』

『そうだね……じゃあ午後の二時とかでも大丈夫?午前中は塾だからさ』

『勿論大丈夫だぞ。それじゃあ明日の二時だな』

『うん。集合場所は……○○駅の南口でも大丈夫?』

『分かった。それじゃあそれで行こうか』

『うん……それじゃあ私は明日朝早いから寝るね』

『あぁ、お休み。楽しみにしてるな』

『うん……私も楽しみだよ……お休み海斗君』


 そうして俺と薫は電話を終えた。


「それにしても薫に何か変化でもあったんだろうか?」


 俺が好きと宣言したのが昨日でその時の薫は間違いなく山崎の事があるから答えは出せないと言っていたはずだ。

 山崎と俺。どちらかを選べる状態ではなかったという事だ。

 俺の事も好きと言ってくれていたが山崎の事も忘れなれては居なかったのだろう。

 まぁ、俺は最近仲良くなったばっかりだしな……それに比べて山崎とは確か幼稚園位からの付き合いだったと思うから十年くらいの付き合いだもんな……


 昨日の今日で大きな変化があったとは思えないがそこまで気にする事でもないのかな?


 大体前も思ったが今の山崎には負ける気がしないんだよな。

 きららや最近では仁美にも目移りしてる訳で負ける自身も全くないし。


「まぁ、でも今はそんな事は考えないで、明日はとにかく俺も楽しみつつ薫の事も楽しませないとな」


 薫と休日に出かけるなんて初めての事なんだからいい思い出にしてあげたいな。

 



 次の日の昼、俺は薫と遊びに行く支度をしていた。


「これで大丈夫だな」


 鏡を確認して身だしなみのチェックを終えた俺はそうつぶやいた。


「それにしても楽しみだな……」


 薫とは俺と言っていいかは微妙だが一応既に一緒に寝ている関係だが薫とちゃんとデートをするのはかなり楽しみだ。

 緊張はしないが気分が上がるそんな感じだ。


 実は言うと俺は薫に俺だけを見て欲しいので今日は積極的に行こうと思っている。

 それこそ今日で山崎の事を気にしないようになる……そのくらいに頑張ろうという気概だ。

 そんな訳で俺は身だしなみをいつも以上に気合を入れて準備をした。


「そういえば俺って薫にお金持ちって教えてなかったな……」


 俺は今日のデートの事を考えたらふとそんな事を思った。

 今日は全部俺が奢るつもりなんだけど薫は自分から誘ったから大丈夫だよって絶対に言うだろうな。

 まぁ、そこらへんは別に大丈夫か……俺が奢りたいっていえば薫も嫌だなんて言わないと思うし。


 てかいつお金があることを打ち明けようか……薫の事だからお金に釣られてなんて事は絶対にあり得ないってのは分かってるからいつでも良いと言えば良いと思うんだけどな……


「仮に打ち明けるとしても付き合ってからが良いのかな?」

 

 正直に言って別に大きな理由があって隠しているわけではないがそれでも付き合うとなったらいずれは教えないとだしな……

 でもそれはタイミングを見てでいいか……それで大きく関係が変わるって事もあり得ないだろうしな。


 俺はヒロインたちの事を良く知っているが、薫の反応は凄く驚いたものの余り気にしないってのがオチだろうな。お金も勿論大切だけどそれよりも中身を重視する子だしな。

 まぁ、これは薫に限らず仁美もそうなんだけどな。

 きららに関しては家の事情もあるのでいろいろと思う事はあるだろうが、それでもお金持ちだから好きになるって事はないんだよな。

 このゲームのヒロイン達はそんな感じで内面を最優先に考える子達だ。


「それはそうとしてそろそろ家を出るか」


 今家を出れば集合場所には大体30分前くらいに着く計算だ。


 そうして俺は家を出て待ち合わせ場所へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る