第16話 笹内薫と山崎真

★side:笹内薫


「薫ーちょっと良い?」


 土曜日の朝、私はお母さんに呼ばれた。


 昨日私は海斗君との事があり緊張というかドキドキでベッドに寝転んだ後でも考えてしまっていてたので寝るのが遅くなってしまっていたので少し寝不足だ。


 海斗君に好きと言われたのは本当に嬉しかったし凄くドキドキした。

 好きなんて事は女子にはあるけど男子にはお父さん以外には言われた事がなかったしね……


 その時にはっきりに分かったけど私は海斗君の事が好きなんだと思う。

 いや、思うじゃなくて好きだ……だってあんなにドキドキしたんだから。

 でも私は答えが出せなかった。


 だって私の中にはまだどうしても真の事が残っていたからだ。

 幼稚園に通っている時から一緒に居て好きになっていたので付き合いがとても長いってのもあるんだろうけどね……


 海斗君の気持ちにすぐに答えられないのは本当に申し訳ないと思っているがやっぱり私はそういう事はちゃんと答えを出してから決めたい……そうしないと海斗君に対しても失礼だと思うしね。


「ちょっとまってーお母さん!今行く!」


 ――私は呼ばれたのでお母さんのところに行くために階段を降りた。


「どうしたのお母さん?」

「ちょっとこれを真君のお母さんに届けてきて欲しいの」


 私はそう言ってお母さんに袋を渡された。


「これを届ければいいんだね」

「うん。お願いね」

「分かった」


 私はそう言って出かける支度をしていた。




 真の家は私の家から凄く近いのですぐについた。


(ピーンポーン)


 私はすぐにチャイムを鳴らした。


 ドアが開いて出てきたのは真だった。


「薫?どうかしたか?」

「真のお母さんって今いる?」

「いるけど?」

「私のお母さんがこれを渡してきてって言ってたから持ってきたの」


 私はそう言って袋を真にたいして渡した。


「これを母さんに渡せばいいんだな?」

「うん。よろしくね」

 

 私がそう言うと真が言ってきた。


「分かった。そういえば薫はこの後何か用事あるか?」


 今日の予定は久しぶりに買い物に行こうと思っていたんだよね。

 なくなってきたノートとか筆記用具、それに時間のある時に読める小説とかを買えれば良いなって思ってたけど……


「今日はこの後ノートとか小説とか色々と買いに行こうかなって思ってたけどそれがどうかしたの?」

「そうなのか。じゃあ丁度良いし俺もいって良いか?」

「真も行くの?」

「あぁ、俺も新しいゲームソフトを買いに行こうと思ってたし丁度良いなって思ってさ」


 そう言われたが私としても別に断る理由もなかったので良いよと言おうと思っていた。

 海斗君との事もあるしちゃんと決めるためにも真とも話さないとだしね。


「私は大丈夫だよ」

「おっけー。じゃあ取り敢えずこれを母さんに渡して準備してくるから二分くらい待っててくれ。着替えて財布を取ってくるだけだからさ」

「うん。分かった」


 そういえば二人でどこかに出かけるのは高校生になってから初めてだな……

 真は友達とゲームをする事が増えちゃったしきららちゃんと一緒に居ることも増えたからな……

 

 あ……そういえば私は海斗君の事で頭がいっぱいで気にしてなかったけど真ってここ最近仁美ちゃんとも仲良くなってたっけ?

 まぁ、それは今は良いか……それより私自身が海斗君と真のどっちが好きなのかをはっきりさせないとだね。


 私はそんな事を考えながら真が準備を終えるのを待っていた。


 ――それから数分後真が家から出てきた。


「お待たせ。じゃあ行こうか」

「うん」


 ――それから私たちは買い物に移動した。


「真。このお店に最初に行くよ?」

「おっけー」


 そうして最初に来たのは小説や参考資料の売っている書店だった。


 私は入ったのち読みたい小説を探すことにした。


「ちょっと読みたいのを探すから待っててね」

「あぁ、俺もそこら辺でぶらぶらしてるからいいぞ。でも出来るだけ早くなー」


 真は本は漫画すら読まないので待ってもらうのはちょっと申し訳ない気持ちもあるけど、少しだけ待ってもらおう。


 ――それから数分間私は本を選んでいた。


「これはもう持ってるな……あ!これって前に友達にオススメされたやつだ!」


 私がどれにしようと迷っていると真が来た。


「薫ー決まったか?」

「ううん。もうちょっとだけ待ってね。ごめんね待たせちゃって」

「まぁ、良いよ。もう少しくらい待つから出来るだけ早くしてくれよ?」


 私がそう返事をしたら真はちょっとめんどくさそうにそう言ってきた。


「うん……」


 まだ十分くらいしか経ってないのにそんな言い方しなくてもいいじゃん……と私は思っていた。

 大体ついてきたいっていったのは真の方なのに……

 

 私はそう思いつつも海斗君だったらどうなんだろうと考えていた。

 海斗君はいつでも私の事を尊重して大事にしてくれているのでおそらく笑顔でいつでも待つよ。みたいな事を言ってくれるんだろうな……そう思いつつまた選び始めた。

 

 ――それから私は小説を二冊選び終えてノートなども一緒に購入してから真のもとに行った。


「真ごめんね。終わったよ」

「やっとか。じゃあ早く行くぞ」

「うん」


 それから今度は真が行きたかったらしいゲームセンターがあったりゲームソフトが売っているお店に来た。

 良く分からないが真は凄く急いでいたみたいだった。


「じゃあ薫。ちょっと待っててな」

「うん。私もついていくよ」

「そうか」


 私は余りゲームとかはしないので一人で居るのもって感じなので真についていく事にした。


「よし!売り切れてない!」


 真はそう言って一つのソフトを手に取った。


「それが欲しかったソフトなの?」

「そうそう!結構売り切れてる店もあったらしいから」

「……それで私に急いでって言ってたの?」

「まぁ、そうだな。でもあったから気にしなくて大丈夫だぞ?」


 真はそう笑顔で言ってくるが私はそれだったら一人で来ればよかったじゃんと思っていた。

 私はせかされたから小説を選んでいる時に待たせている罪悪感を感じつつも焦って選んだのに……

 

 海斗君だったらこんなこと絶対にしないだろうな……


 私は真と一緒に居てもどうしても海斗君と比べてしまう……

 私は真以外の男の子と仲良くした事がなかったので分からなかったけどこうも違うんだね……そんな事を考えてしまう。


「そうだね……買えて良かったね」

「あぁ!」


 真は私の顔を一度も見ないでそんな会話をしていた。


 ――それからお会計を済ませた真が言った。


「ちょっとだゲーセンの方にも行っていいか?」

「良いけど余り長くは居ないでよ?まだ私の買い物は終わってないからね?」

「おっけーおっけー」


 そうして真と一緒に100円で出来るゲームがいっぱい並んでいる場所に来た。


「何をするの真?」

「んーそうだな……取り敢えず……」


 真がそう言いかけている時誰かがこちらに来た。


「お!真じゃん!」

「田中じゃん!何してんだ?」


 その人は隣のクラスの田中君だった。

 私は全然話したことはないが確か真と一緒にオンラインゲームなどを良くやっている人だったと思う。


「俺たちは皆でゲームをしに来たんだよ。格ゲーだったらレースゲームだったりをやって負けた奴がジュースを奢るって事にしてな」

「へー楽しそうだな!」


 真は凄く羨ましそうにそう言っていた。


「お前も来るか?……いや。一人じゃないなら無理そうだな」

「あー、薫?いってきてもいいか?」


 真は私にそう言ってきた。

 真の方から一緒に行こうと言ってきたのに……


「良いけど……私はどうすればいいかな……」

「あぁー、一緒に来ても良いし。待ってても良いし好きにしていいぞ?」


 好きにして良いぞって……私は知り合いとか全然いないし待ってるって言っても私だって他に買い物があるのに……


「……じゃあ私は帰ろうかな……」

「そうか?」

「うん……」


 私たちがそんな会話をしていると田中君が言った。


「本当に良いのか真?それに笹内さんも?」

「私は大丈夫だよ。この後丁度用事もあったしね」

「悪いな薫。それじゃあ今日はここでお別れしよう」

「そうだね」


 そう言って私たちは分かれた。


 ――私は真と離れた後に一人で歩きながら考えていた。


「はぁ」


 やっぱり真って私の事なんてどうでも良いのかな?


 海斗君と一緒に居た後に真と一緒に居るとそれが嫌でも感じてしまう。


 真が普通なのか海斗君が特別優しいのか私には判断できないが今日ではっきりと分かった。


 私は真と一緒に居るよりも海斗君と一緒に居た方が楽しいしドキドキする。

 それにこれからもどっちと一緒に居たいと考えると間違いなく海斗君だ。

 だって海斗君といるときは真の事は考えないのに、真と居るときは海斗君の事を沢山考えてしまう……


「私は海斗君と一緒に居たいんだね……」


 そうはっきりと分かった……私は海斗君が良いって……

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