第15話 変化する想い

★side:笹内薫


「はぁー」


 私は海斗君に家まで送って貰った後一人で考えていた。


「海斗君……」


 私は今凄くドキドキしていた。


 海斗君ってば真剣な顔であんな事を言ってくるなんて……

 自分に自信がない私はあんな事を言われたこともなかったのでどうしたらよいか分からなかった。

 海斗君は海斗君で嘘を言っているようには全く見えなかったし……

 あそこまで真っすぐに見つめられるとドキドキしちゃったな。


「恥ずかしいな……」


 海斗君は初めて話した時からずっと可愛いとか綺麗とか言ってくれるんだよね。

 真にも言われたことないのにな……

 

「それにしても変に思われてないといいけど……」


 海斗君があんな事を言ってくるからそれ以降私はずっとおかしかった気がするな。

 大体海斗君と何を話して帰ったかすら覚えてないくらいだから……


「こんなにドキドキするんだったらもしかして……」


 今では少し落ち着いているけど海斗君にあんな事を言われた時の私は今までにないくらいドキドキしていた。

 私は真の事が好きだったはずだ。

 今は違うのかと言われたら自信を持って違うとは言えないと思う。

 おそらく多分まだ好きだ。


 それでも海斗君への思いは日に日に強くなっていってるし今では好きになっているんだと思う。

 今どっちが好きかと言われたらいくら考えたところで答えが出ない……それが今の私の思いだ。

 真とは長年の付き合いだしね……

 でもそのくらい海斗君と一緒に居て楽しいを思うし嬉しい気分になる。


「明日からちゃんと話せるかな……」


 今日は凄く恥ずかしくてまともに顔が見れなかったけど大丈夫かな?



 それから二日が経った日の夜。


「んー」


 あれから薫の様子がおかしい。

 俺と目が合ったと思ったら顔を反らされるし、かと思ったら俺の方を見てくるんだよな。

 

 多分俺の事を意識してくれているんだと思うがどうだろうか。

 そうだったら嬉しいが……


 それともう一つ変化があった。

 

 どうやら何らかの形で山崎と仁美が接触したみたいだ。

 二人が昨日と今日で話している姿をみかけたので間違いないだろう。


 どのくらい仲が深まったのかは分からないがまだ仲が良いとまでは言えない様子ではあった。

 だけど山崎が鼻の下を伸ばしているのは間違いなかった。まぁ、仁美も薫ときららに負けないくらい可愛いもんな……


「それにしてもどうするかな?」


 薫が俺に話しかけてこない以上俺から話しかけてみるのも良いと思うのだが、薫の気持ちが落ち着くまで待ってみても悪くないとも思っている。


「まぁ、今日は金曜日だし月曜日まで待ってみるか」


 もしかしたら連絡が来るかも知れないしな。

 それでも何もなかったら流石に俺から話しかける事にしよう。


 そんな事を思っていたらスマホの通知が鳴った。


 内容を確認しようとしたらそれは薫からの連絡だった。


『海斗君』

『どうしたんだ薫?』

『今時間ありますか?』

『全然大丈夫だぞ』

『それじゃあちょっと話しても大丈夫ですか?』

『勿論良いぞ』

『それじゃあ電話かけますね』

『分かった』


 それからすぐに薫から電話がかかってきた。


『こんばんは海斗君……』

『あぁ、こんばんは。それでどうしたんだ?』

『取り敢えず昨日と今日はごめんね……私ってば海斗君の事を無視してるみたいになっちゃって……』


 薫は落ち込んだ様子の声でそう言ってきた。


『大丈夫だぞ』

『私は別に海斗君の事を無視したかった訳じゃないんだ……』

『それは俺も分かってるから気にしなくても大丈夫だって。薫が無視なんてする訳ないと思ってるしな』

『そっか……良かった……』


 俺がそう言うと薫は安心した声でそう言ってきた。


『それが心配で連絡してきたのか?』

『うん……もし無視されてるって海斗君が勘違いしてたら嫌だったから……それに土日の間ずっとそればっかり考えちゃうんだろうなって思ってね』


 この感じだと俺の想像以上に悩んでいたっぽいなこれ……


『そっか。でも俺は何とも思ってないから気にすんなよ』

『うん……頑張って連絡してよかったよ』

『それでさ……薫は何でそんな事になってたんだ?』


 俺は知っているがあえてそう聞いてみた。


『そ、それは……海斗君があんな事言うから……』

『あんな事って?』

『だっ!だから……海斗君があんな真剣な顔で私に向かって、か、可愛いって……それに一番って……』


 薫は滅茶苦茶動揺してそう言ってきた。

 電話越しでも何となく分かるけど顔が赤くなってそうだな……

 

『そっか。ごめんな。俺って思った事を正直に言っちゃうからさ』

『ううん……海斗君は謝らないで……私は嬉しかったから……ただ私は今まで一度も海斗君に言われたみたいに可愛いなんて言われた事がなかったから恥ずかしくてね……』

『マジで?薫が可愛いって言われたことないって以外過ぎるな……俺は世界一っていって良いほど可愛いと思ってるけど……』

『……』


 俺がそう言うと薫は黙った。


『薫大丈夫か?』

『う、うん……ただ世界一って……本気で言ってるの?』

『勿論本気だぞ?』

『そ、そっか……ありがとう……その……嬉しいよ』

『このくらい何回でも言うけどな』


 その後数秒間無言が続いた後薫が恐る恐る聞いてきた。


『か、海斗君ってさ……そ、その……好きな人っているの?』

『いるぞ?』

『そ、そうなんだね……』

 

 俺がそう言うと薫は何故か暗い声でそう言った。


『なんで声が暗くなったんだ?』

『い、いや……なんでもないよ……』

『そんな感じには聞こえないぞ?』

『……じゃ、じゃあ好きな人……聞いても良い?』

『え?そんなの当然薫だけど?』


 俺は当たり前だろと言わんばかりに即答した。


『え?え!?わ、わたし……!?』

『そうだけど?大体そうじゃなかったらあんなに可愛いなんて言わないだろ普通?』

『そ……それは……そうかも……』

『だろ?』


 それから暫く薫は何も言わなかった。

 音が何も聞こえてこない事から恐らくミュートにしているのだろう。

 

 それから以外と早く薫が喋った。


『そ、そうなの?』

『そうだぞ』

『そ、そっか……全然分からなかった……ごめんね』

『まぁ、俺も好きって言葉にしたのは今が初めてだからな』


 俺がそう言ったあと一息おいてから薫が言った。

 

『か、海斗君……そ、その……わ、私も、海斗君の事がす、好き……なのかも……なの』

『え?マジで?』


 これは意外だった。

 気にかけてくれている事は分かっていたが好きとまで言われるとは思っていなかった。

 正直に言っちゃうと滅茶苦茶嬉しい。

 

『う、うん……でも、もうちょっとだけ待ってて欲しいの……ちゃんとはっきりしてからにしないとだから……』


 この感じだと山崎の事もまだ好きっぽいな……

 まぁ、それは分かっていたことだから問題はない。


『それってやっぱり山崎の事か?』

『う、うん……そうなの、ごめんねはっきりしなくて……』

『いや大丈夫だぞ。ゆっくりでいいよ。俺はいつまでも待ってるからさ』

『あ、ありがとう……そんなに遅くならないように頑張りますね……』

『あぁ』

『そ、それじゃあ私はここら辺で失礼するね……』

『あぁお休み薫』

『お、お休みなさい海斗君……』

 

 そうして俺と薫との電話が終了した。


「ふぅー」


 そっか……薫も俺の事を思ってくれてたんだ……

 そう実感すると凄く嬉しく感じる。


 実は言うと昨日は違うが薫とはほぼ毎日LIENで連絡を取り合っていたのだがその時も可愛いとかその他にも色々と褒め続けていた。

 勿論堕とすためってのもあるが全部本音だ。


「学校で話せない分大丈夫か心配だったけど頑張ってよかったな……」


 まぁでもまだ決まった訳じゃないしこれからも頑張っていかないとな。

 大体付き合えたら終わりじゃなくてそこからも大切なわけだし。


 でも正直に言っちゃうと山崎の事は今ではそこまで警戒をしていない。

 薫に対して何も褒め言葉も言わない上に他の女子、最近では仁美とも仲良くしたそうにしてるし薫に対して雑に扱っている所も変わっていない。

 そんな奴に負ける自信は全くないし、負けるつもりもない。


 だって俺の方が薫を幸せに出来るからな……これは絶対に宣言できる。


「明日からも積極的に行こうか」

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