第14話 嫌な予感ほど当たるよね
きららが居なければいいんだけどな……
まぁ、いたところで薫が言いふらす訳ないし大丈夫だとはおもうけどな……当然俺もね。
でもそうだとしても働いている理由を完璧に分かっている俺からしたらちょっと気まずい感じがするんだよな。
俺はそんな事を考えながら薫とカフェに入った。
「雰囲気いいな……」
「そうだね。」
店の中は外の外見と同じく古風というかレトロな感じがより感じられ、音楽がそれをより一層そう思わせる雰囲気だった。
店の中を見るとお客さんは俺たち以外にはいなかった。
まぁ、学校が終わってから割とすぐに来たので中途半端な時間帯だからっていう事も理由なのかな?
そんな訳で俺たちは女性の定員さんに案内されて俺と薫は向き合う形で席に着いた。
「何を注文するんだ薫?」
「私は初めて来るカフェだと絶対にブラックコーヒーって決めてるんだ」
前世の俺が高校一年生の事はブラックコーヒーなんて飲まなかったんだけどな。
大学生になってからコーヒーの良さを知ったんだしね。
「そうなのか?」
「うん。別に特別な意味はないけどね」
「じゃあ俺もそうしようかな。他は何か頼むか?」
「ううん。今日はそれだけで良いかな」
「じゃあそうしようか」
そうして俺たちの注文を受けるために店員さんが来たのだが……はぁ、やっぱりそうなるんだな。
そこにいたのは弘識きららだった。
途中まで友達と帰ってからバイトに来たのかな?
ていうか凄い驚いた顔してるなきららは……
「え?薫ちゃんと……海斗君!?」
「あ!弘識さん!」
なんかこの展開最近もあったよな……
ただ違うのが二人の表情だけってことだな。
前回のきららは素直に驚いていた感じで今のきららは不味いと思っている表情だ。
薫はシンプルに仲良くなっただけあって表情が明るめだ。
ていうか今思ったんだけど俺と薫からしたらきららがバイトの許可が出てないなんて事分かるわけないんだよな……
入学したばかりで定期テストもしてないわけだからな。
そう考えたら別に何も問題ないのかも。
俺がそんな事を思っていたらきららが頭を下げて言ってきた。
「私がバイトをしている事は内緒にして!!!二人とも!!!」
いや……凄く慌ててるな。
まぁでも、きららの立場からしたら慌てるのも無理ないか……バイトがばれたらまずいもんな……
確か俺の記憶によるとおじいちゃんとおばあちゃんはバイトをしちゃダメだって思ってなかったと思うしな。
そんなきららを見て店長さんらしき人にきららは呼ばれて注文だけ受けてからその人のところに行った。
結構声大きかったからな……お客さんがいなかったのは良かったな。
「何だったんだろうね?弘識さんってバイトの許可出てないのかな?」
「さぁ、どうだろうな。そうかもしてないし他に理由があるのかもな」
薫がそう言ってきたが俺からいう事でもないのでそう返事をした。
てか俺が知ってたら普通におかしいしな。
「まぁでも、私的にはそうだとしても学校に言うつもりもないしんだけどね」
薫は真面目な性格だが友達を凄く大切にするタイプだから当然そういうと思っていたよ。
「そうだな。俺も同じかな」
――それから少ししたらきららがブラックコーヒーを二つ持って来た。
「お待たせしました……」
きららは苦笑いしながらそう言ってブラックコーヒーを俺と薫の前に置いた。
「ありがとう弘識さん」
「ありがとうな」
「うん。それとね。店長に友達が来てるんだったらお客様が少ない時間帯だし一緒に話してても良いって言われたから一緒に座ってもいい?」
「俺は良いぞ」
「私も大丈夫だよ」
俺たちがそう言うときららは薫の隣に座った。
そしてきららが少し気まずそうにしているので俺から話し出した。
「さっきの大丈夫だったのか?店長さんに呼ばれてたけど」
「うん。それは大丈夫だったよ。ちょっと怒られちゃったけどね」
「そうか。だったらいいけど」
そんな会話のあとすぐにきららが言った。
「それでバイトの事なんだけどね……内緒にしてもらって大丈夫かな?」
「もちろん大丈夫だよ!」
「俺も元々いうつもりないな」
ていうか言う友達すらいないんだけどな。
俺たちがそう言うときららはほっと胸をなでおろして言った。
「良かったー。ありがとう二人とも!」
「それより弘識さんってバイトの許可出てないの?」
「実はそうなんだよね……私って中学の頃からあまり成績が良くなかったから下りなかったんだよねー」
「そうなんだね。じゃあバレる危険をおかしてまでなんでバイトしてるの?」
俺は分かっているのであえて何も言わずに二人の会話を聞くことにした。
でもおそらくきららは本当の事は言わないだろうな……
いくら薫が相手だとしても今まで誰にも言えなかった事を出会って間もな過ぎる薫には言えないだろうな。
「えっと……ちょっとどうしても欲しいものがあってね……どうせだったら自分で稼いだお金で買いたいなって思ったから」
「そうなんだね。偉いね弘識さんって!」
「あ、ありがとう。薫ちゃん……」
笑顔でそういう薫に対してきららは気まずそうにしていた。
だましている事に罪悪感でも感じているのかな?
薫もそうだがきららも凄く優しい性格だしたぶんそうなんだろう。
「私たちこれからもこのカフェに来て良い?弘識さん」
「それはもちろん大丈夫だよ」
「ありがとう!海斗君もこようね!」
「あぁ、そうだな」
お金を俺がきららにあげるのは簡単だけど絶対にきららは受け取らないだろう……大体そこまで仲良くないし訳だし……
おじいちゃんが倒れたら話は別かもしれないけど大体いつ倒れるかは俺も分からないしな……ルート事そのイベントは固定じゃないし。
でも薫もそうだが俺はきららにも仁美にも幸せになってほしいと思っている。
三人ともゲームの中でよく見てきた三人だからな……
難しい話だなこれ……
それから俺たち三人は軽く話してからきららが仕事に戻り、少ししたら俺たちも店を後にした。
「それにしてもまさかきららちゃんが居るなんてびっくりだね!」
薫は先ほどまでは弘識さんと呼んでいたが、仲良くなったしそろそろってきららに言われて呼び方を変えた。
「そうだな。俺も驚いたよ」
俺はもちろん驚いていないがそう返事をした。
「だよね。きららちゃんって偉いね。私なんてバイトすらしたことないし」
偉いか……それは本当にそう思う。
俺が同じ環境で同じようにするとなったら長く続かない気がするレベルだ。
前世の俺も両親が居ないでおじいちゃんとおばあちゃんに引き取られたしな。
まぁ、俺の場合はおじいちゃんとおばあちゃんがそこそこ裕福だったわけできららよりかは良い環境だと言えるけどな。
それにゲームをプレイしていて俺が一番共感できたヒロインはきららだった。
好きなヒロインで言うと三人とも同じくらい好きだったが共感で言えば間違いない。
「そうだな。凄い事だと思うな」
「凄いなーきららちゃんって……本当にカッコいいな。見た目も可愛いし……海斗君もそう思うでしょ?」
薫は俺にたいしてそんな質問をしてきた。
「そうだな。でも俺は薫も同じくらい可愛いと思っているぞ」
薫を堕とすだけなら薫の方がと言った方が良いのだろうけど俺はやめておいた。
こういう事では嘘つくのはちょっと気が引ける。
それに薫の場合は……
「わ、私なんかが……きららちゃんと同じくらい可愛いなんてありえないよ……」
薫は自分に自信がないタイプなのでこの返事は予想出来ていた。
「それはあり得ないな。俺が出会った中でも薫は一番かわいいと言ってもいいくらいだぞ」
「え?そんなわけ……」
薫はそう言って顔を反らした。
「薫。俺の顔を見てくれ」
「……」
俺がそう言うと薫は数秒後何も言わずに俺の顔を見た。
「俺は薫に対しては絶対に嘘はつかない。薫が自分に自信がないのは何となく分かるけど、俺からしたら薫は本当に可愛い。初めて見た時からそう思ってたから絶対にな。」
これは嘘じゃない。
俺じゃない王豪海斗はそんな事は思っていなかっただろうが俺は本当だ。
ゲームをプレイ中最初に見た時にそう思っていた。
まぁ、その時は二次元だったが今では三次元だなわけだし尚更そう思ってしまう。
俺がそう言うと薫はみるみるうちに顔を赤くして慌てて言った。
「そ、そ、そうなんだね……あ、ありがとう……」
「あぁ、だから薫はもっと自信を持っても良いんだぞ」
「う、うん……そう……かもね。か、海斗君のおかげでちょっと自信ついたかも……」
「そうか。だったら良かった」
その後は少し話したりもしたが薫は家に入るまでずっと恥ずかしそうにしていた。
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