第13話 薫との放課後
そんな訳で俺は薫と放課後に一緒に帰えることにした。
「海斗君ありがとうね」
「え?ありがとうって……何がだ?」
「私と一緒に帰ってくれてだよ」
薫は少し微笑みながらそう言ってきた。
「大丈夫だって。薫と一緒にいると俺も楽しいしな」
「そっか。だったら私も嬉しいな」
「そういってくれると俺も嬉しいぞ」
「ふふ、そっか。それじゃあお互い様だね。あ!そうだ海斗君」
「なんだ?」
「この後って時間ある?それとも用事があったりとかですぐ帰らないとだめだったりする?」
この後どころか放課後なんて毎日暇なんだよな俺って。
特に趣味もないわけでいっつも家でスマホをいじってるだけだしな。
前世ではそこそこゲームをしていたが別に趣味ともいえるほどしてはなかったし、なんなら今はそこまでゲームをしたいと思わないんだよ。
勿論だが一緒に遊べるような男友達もいないしな。
「特に用事もないし家に帰っても全然俺は暇だぞ。何かあるのか?」
「それじゃあ私ね、行ってみたいところがあるんだけど一緒に行ってみて良い?」
「全然大丈夫だけど、薫が行ってみたいところ?それってどこだ?」
「うん。実は私って色々なカフェに行ってるんだけどね、今行きたいところが凄く大人っぽい店でちょっと一人で行き辛くてね……」
「なるほど。一人では行き辛いからそれで一緒に行ってくれる人が欲しいって事か?」
「うん。真に頼もうかとも思ったけど真は大人っぽいカフェには絶対に行ってくれないだろうから……前にカフェに誘ったら来てはくれたけどあまり乗り気じゃなかったしね……私も無理して連れて行こうとも思わないから」
確かにこれは完全にイメージだが山崎が大人っぽいカフェに行く姿は想像出来ないな。
逆に薫がカフェが好きって結構解釈通りではあるな。
「まぁ、それなら行こうかそのカフェに」
「良いの?」
「勿論大丈夫だぞ。薫が行きたいなら付き合うよ」
「ありがとう海斗君」
そうして俺たちはそのカフェを目指して歩き続けていた。
「そういえば海斗君。仁美ちゃんとは何を話していたの?一応学校では仲良くしないって言ってたから私は二人が話している所をみて廊下で待ってたんだけど」
「あー、それだったら全然大したことじゃないぞ。ただ今日はノートの提出があっただろ?それで俺が出してなかったから仁美が取りに来ただけだぞ」
「なるほど……そうなんだね」
「あぁ、薫は仁美ちゃんって呼んでるけど二人は仲がいいのか?」
「そうだね。少なくとも私は仲が良いと思ってるよ。高校からの付き合いでまだ短いけど、真といる時間が減ってたその時に仲良くなったんだよね。海斗君と仲良くなる少し前だね。入学して二日後くらいだったかな?」
「そうなのか。二人って仲良かったんだな」
「うん」
そういえば薫と仁美ときららって俺が知っている限りどのルートで進んでも仲良くなるんだったな。
きららと仁美はまだっぽいがそのうち仲良くなるんだろうな……たぶん。
そういえば山崎と仁美ってもう話したんだろうか?ちょっと気になるがまぁ、薫と一緒にいるし今気にする事でもないか。
「そうだ。海斗君って好きな事とか趣味とかってあるの?」
薫はいきなりそんな事を聞いてきた。
「急にどうした?」
「別にどうしたとかではないけど、ちょっと知りたいなって思っただけだよ」
好きな事や趣味か……やっぱりないんだよな。
一応王豪海斗の習慣が身についているから筋トレはしているが別に好きなわけではない。
ただの日課みたいなものでイメージで言えば週に数回する掃除と同じくらいの感覚だ。
綺麗好きだけど別に掃除が好きなわけではない……そんな感じのイメージだ。
「いや……これって言えるほどの趣味はないかな」
「そうなの?」
「あぁ、だから放課後や休日は基本毎日暇なんだよな。遊びに行く事もないし外出するときは買い物か外食だけだからな」
「そうなんだ……」
俺がそう言うと薫はちょっと寂しそうな顔になった。
「薫?どうした?」
「ううん。ただ海斗君が一人暮らしだって思い出して……」
あぁ、俺が毎日暇って言ったから余計な事を考えたのか?
薫はおい立ちを知ってるわけだしな。
でも別に暇だけど寂しいわけじゃないんだよな。
「それは慣れてるし大丈夫だぞ。変に気なんて使わなくて良いからな」
「……うん。分かった……海斗君って私以外には一人暮らしって言ってる人居るの?」
「いや。いないな……ていうか今まともに話してる人が薫しかいないから前提として言う人がいないしな」
俺がそう言うと薫は恥ずかしそうに頬を染めて返事をした。
「そうなんだね……私もお世話になってるし海斗君も寂しくなったら私に電話でもなんでもしていいからね……」
いや……流石に可愛すぎるなこれ。
こんな表情でそんな事を言われたら男だったら誰でも薫の事好きになるレベルだ。
「じゃあそうさせてもらうよ」
「うん……」
その後は少し静かな時間が経過した後俺から話し出した。
「そういえば金曜日俺が帰ったあと大丈夫だったか?いきなり母親と遭遇しちゃったけどさ」
「お母さんだったら特に問題はなかったよ。私があらかじめ海斗君の事は話してあったしね。あ……でもあの事は流石に言えてないけど……」
薫は最後の一言を言うときに思い出したのか凄く恥ずかしそうに顔を赤く染めてそう言ってきた。
まぁ、流石にそれは言わないと思うが……でもそれだったらよかったな。
俺的には好印象なのかなって思っていたけど、実は印象悪かったとかだったらちょっと困るしな。
「そうか。なら良かったよ。薫のお母さんに嫌われでもしたら困るしな」
「そんな心配はいらなそうだったから大丈夫だよ。それにそんな事があれば私がお母さんを説得でもなんでもするしね」
「そっか。薫がそこまでしてくれるならもしもの時も安心出来るな」
それから俺と薫は雑談しながら歩いていった――
「海斗君。もう少しで目的のカフェにつくよ」
「そうか、楽しみだな」
「海斗君って普段カフェにいったりするの?」
「いや、カフェにはあまり行かないな……でもコーヒーは好きだから結構飲むな」
「海斗君もコーヒー好きなんだね」
「あぁ、結構好きだな」
薫もなのか?って聞こうとしたけど普通に考えて色々なカフェに行っているんだったら好きなんだろうと思ってやめた。
――それから数分後
「ここだよ!」
そのカフェはレトロ風のカフェで確かに凄く大人っぽいカフェで高校生がこなそうなカフェだった。
でも俺はこのカフェに見覚えがあった……
だってこのカフェはきららが一番働いている場所だからだ。
このカフェなら学生に見られる心配もないしって理由だったと思う。
その代わり先生が来やすいのではとかも思ったが生徒と先生では母数が圧倒的に違うのでって話だった。
俺はそう思い入って大丈夫かなと思った。
きららが薫にここでバイトしてると教えたって可能性もないわけではないがほとんどあり得ないだろうしな……
「海斗君大丈夫?何かあったのそんなに考えこんじゃって?」
俺が考えていると薫にそう心配された。
まぁ、大丈夫か……きららのバイト先はここだけじゃないし、薫が言うには今日のきららは友達と帰ったらしいし今日はバイトがない日なのかも知れないしな。
大体薫が行きたがってるのに今更やめるなんて絶対に言いたくないし行くの一択だなこれは。
俺はそう思いつつももしいたらごめん……ってきららに思いながらも返事をする。
「なんでもないぞ。ただ凄い雰囲気が良いなって思っただけだぞ」
「だよね!私もそう思うよ!」
「それじゃあ入ろうか」
「うん!」
そうして俺と薫はカフェに入った。
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