第11話 弘識きららの苦労

★side:弘識きらら


「おじいちゃん、おばあちゃん!ただいまー」


 薫ちゃんと海斗君と別れた後、私はバイトを終えて家に帰ってきた。


「お帰りなさいきらら。いつもごめんね……」

「お帰り、本当にすまないな……」


 私が家に帰っておばあちゃんとおじいちゃんに挨拶をすると二人はそう言ってきた。

 

「ううん。大丈夫だよ!私はバイトするのが楽しいしね!」

「私たちがもっとお金があればいいんだけど……」

「そうだな……」


 二人は落ち込んだ表情になっている。

 でも私からしたら二人は私のために本当に頑張っているし体を壊さないかがすごく心配だ。

 幼い頃に両親を亡くした私からしたら二人以外の家族はいない。

 二人は昔からずっと私を可愛がってくれていたし両親を亡くした私をずっと支えてくれていた。

 私はおばあちゃんとおじいちゃんが居なかったら生きていけなかっただろうしね。 


 そんなわけで私はおばあちゃんとおじいちゃんの事が世界で一番大好きだ。

 それは今までもこれからも絶対に変わらないと言い切れる。

 二人には長生きして欲しいしこれからもずっと一緒にいたい。


「大丈夫だよおばあちゃん、おじいちゃん!私は元気だしね!それより早くご飯食べよう!」

「そうね」

「そうだな」


 そうして私はおばあちゃんおじいちゃんと一緒に楽しくご飯を食べてからお風呂に入って自分の部屋に戻った。


「はぁー、今日も疲れたなー」


 私はほぼ毎日バイトが入っていて土日に関しては午前と午後でバイトをはしごする事も少なくない。

 明日も午前と午後の二回バイトが入っているし、大変といえばかなり大変だ。


 でもおばあちゃんとおじいちゃんの為だと思うと不思議とやる気が出るんだよね。

 

「まぁでも、やっぱり疲れはたまるんだよね……」


 家に帰ってくるとすぐに眠くなるし学校でもうとうとしちゃう事もある。

 バイトの許可を取るために勉強を頑張りたいけど時間がないのでそうも行かない。

 大体私はもともと賢くないのにね……

 だから私がバイトをしている事は絶対に知られないようにしている。

 学校の許可を取ってないのでバレたら大変だからね。


「学校といえば……」


 私はクラスメイトの友達に私の家に遊びに行っていいかと聞かれていた。

 その時は笑ってカラオケの方が良くない?って誤魔化して何とかなったがやっぱり不安だな……いずれバレちゃうんじゃないかって。

 

 私は中学生の頃も一度も友達に家を教えたことがない……だって家が貧乏だと知られたくないからだ。

 貧乏が恥ずかしい……そんな事は全く思っていないが、周りの目は違うんだと思う。

 だって昔から何故か私は皆にいい暮らししてそうとか羨ましいとか言われてきたからだ。


 いつからか私の事が憧れると言ってくれる人が多くなっていった。

 そんな事を言われるととてもじゃないけど貧乏とは言えなくなっていた……もし言ったら皆に幻滅されるんじゃないか怖かったからだ。

 今までいた友達も私から距離を空けるんじゃないかってね……そんな事になるとは思いたくないがどうしても怖い。


 私も当然女の子だから自由に遊んで自由にいろいろなものを買ってるクラスメイト達を羨ましいと思った事も多い。

 友達と一緒に自由におしゃれして買い物をする……そんな関係を何度も夢に見てきた。


「まぁ、そんな事言ってても仕方ないよね……それより明日もバイトで大変だし早めに寝ないとだね」


 そういえば私は最近の学校では楽しみがある。

 勿論もともとの友達と一緒に居るのも楽しいけど、最近仲良くなった真と薫ちゃんと話すのが結構楽しい。


 薫ちゃんはとにかく可愛い。

 女の私から見ても可愛がりたくなるしね。

 それにものすごく優しくていい子だ。

 まだ付き合いは短いけど私は薫ちゃんといるのが楽しいし好きだと思う……関わったきっかけは真だけど実は入学式の日から可愛いなって思って気になってたんだよね……友達になれればいいなって。

 

 真に関しては正直最初はただ隣の席だから話しかけてみただけなのだが、話してみるとちょっと面白かった。

 薫ちゃんという可愛い幼馴染がいるのに私が話しかけると恥ずかしそうにするし反応が面白くて揶揄っちゃう事もたまにあるくらいだ。

 勿論友達としてだが私は真のことも結構好きだ。

 

 私は恋愛感情云々かんぬんは今は考えていない。

 大体私に恋をする余裕はないから初恋もまだだ。

 告白は今まで数えきれないほどされてきた。

 高校一年生になってからまだ間もないが既に数人にされてるしね……当然全員断ったけど。

 バイトで忙しいのに恋人なんて作れないし、もしかしたら私が貧乏だと知ったらと思うと怖いし……それに仮に恋人を作っても一緒に居られる時間がほとんどないと思うし申し訳ないから。

 

 ていうか真が薫ちゃんの事好きじゃないのは本当に意外だったな。

 あんなに可愛くて良い子と幼馴染で昔から一緒に居るのに好きにはならないんだなぁって思っちゃったよ。

 私が真の立場だったら絶対に好きになると思うしね。

 幼馴染って関係がどんな感じか分からないから何とも言えないか。

 

 まぁ、大体私は好きとかは良く分からないんだけどね。


「ていうか意外といえば海斗君だよね」


 海斗君とは違う中学校だけど私の中学校にも軽い噂程度できたことがあった。

 高校で海斗君と同じクラスになった時は正直結構ビビったんだよね。

 それはクラスメイト全員がそう思っていたんだろうなって感じだった。


 クラスメイトの女子の中には関わったら人生終わるんじゃないかってまでいう人もいたくらいだしね。

 それといくら見た目が良くても中身が終わってるからなーとも言ってたっけな。

 まぁ、流石にそれは言い過ぎなんじゃないとは思っていたけどね。


「にしても薫ちゃんすごい笑顔だったな」


 私が二人を見つけた時の薫ちゃんは海斗君と楽しそうに話していて凄く良い笑顔をしていた。

 薫ちゃんがあそこまで笑顔になれるんだったら海斗君は本当に悪い人ではないんだろうな。


「ていうか塾の迎えを頼むくらいだし当然か」


 そういえば海斗君自身は噂が本当の事もあるって言ってたけど過去に何かあったのかな?

 良く分からないけど色々と大変だったんだろうな。


「って、それは私も同じか……」


 今の私に他の人の心配をする余裕はないしね。


「よし!明日もバイトだしもう寝よう」

 

 私はそう思ってベッドに寝るとあっという間に眠りについていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る