第9話 薫を迎えに行くそしてきららとの邂逅
薫に迎えに来てくれないかと頼まれた二日後、俺は薫が教えたくれた塾まで向かっていた。
「ここで良いんだよな?」
その塾は結構大き目な塾だった。
俺がスマホで時間を確認すると時刻は7:20だったので俺はもう少し待つことにした。
それにしても山崎は薫の事をどう思ってるんだ?
どう考えても薫より友達とのゲームを優先するとかありえないよな?
俺もゲームは好きだが薫と比べるまでもないし……
大体塾から薫の家までそんなに遠くないし迎えに行くために家からでたとして長くかかっても一時間かからない程度だろうに。
「まっ!俺と山崎は友達どころか話した事も無いし山崎の事は気にしないでおこうか」
それよりも薫に頼られた事を嬉しく思おうか。
少なくとも信頼してくれてる証拠だろうしな。
欲を言えば学校でも仲良くしたい気持ちもあるがそれはやっぱり難しそうだ。
俺と一緒にいて仲良くしている姿を見られたら薫の評判が下がるのは考えるまでもない。
最悪の場合を考えると薫は俺を庇う可能性すらあると思うし、そんな事をしたら薫まで孤立しかねない訳でそんな事は勿論俺は望まない。
そう言えば薫は両親にはどういったんだろうか?
山崎じゃないクラスメイトの男が迎えに来るって素直に言ったのかな?
俺が親だったらそれはそれで心配だけど……まぁ、後で聞いてみるか。
――それから10分近く待ったら薫が出て来て笑顔で俺に駆け寄って来た。
「あ!海斗君!」
「塾終わったか?」
「うん。来てくれてありがとう」
「あぁ、気にするな……それじゃあ帰るか」
「そうだね!」
そうして俺達は歩き出した。
「そう言えば親御さんには何て説明したんだ?」
「お父さんとお母さんにはそのまま説明したよ。海斗君が迎えに来てくれるってね」
「大丈夫なのかそれ?」
「大丈夫って何が?」
「いや、俺って一応悪い噂が多いし……ていうかそれ以前に両親からしたら全く知らない男だろ?」
「んー?どうなんだろう。一応海斗君が凄く優しい人って言う事はちゃんと説明したけどな。でも確かにお父さんは少し心配してたけどお母さんは私がそんなに信用してるんだったら私も信じるって言ってたかな?お父さんはそれだったらって感じだったっけ。それにナンパから助けてくれた人とも言ってるしね」
まぁ、確かに薫だったら常日頃から親に対してちゃんと向き合ってそうだし信頼も得てるんだろうな。良く分からないけどまぁ、両親も良いって言ってるんだったら問題もないか。勿論薫の事はちゃんと守るつもりだしな。
「そうか……まぁ、それだったら大丈夫か」
「そう言えば私と海斗君の関係を聞かれた時に一番信頼してる人って言ったけど大丈夫だよね?」
一番信頼してる人か……まだ最初に話してから間もないんだけどな……そう言われると滅茶苦茶嬉しいな。
でも両親に説明するんだったら普通に友達とかでも良かったんじゃないのだろうか?
その言い方だと両親に誤解されそうな感じだけどな……
「一番信頼してる人?」
「うん」
「山崎は違うのか?」
「信頼は海斗君の方かな……」
俺の問いに薫は顔を逸らしてそう言って来た。
信頼はと言う事はやっぱり山崎が好きなのは変わりないのかな……
でもまぁ、確実に進展してるし良いか。
「そっか。それは嬉しいな」
「そ、そう……海斗君も何かあったら私に言ってね……私ばっかり助けられてるから私も何かしてあげたいかな……」
薫は顔をそむけたままそう言って来た。
「いや、俺は薫が俺と一緒に居てくれるだけで凄く助けられてるぞ……」
「え?」
「だって俺みたいに良くない噂が多い俺を信頼してくれて一緒に居てくれてるんだ……俺からしたら凄く救われてるぞ」
これは本当だ。
前世から一人は慣れている……でも寂しい事に変わりはない。
この世界での俺は薫が居なかったら本当に独りぼっちだった訳で薫が居ると居ないとじゃ天と地ほどの違いがある。
「そ、そうなんだね……わ、私なんかで良ければこれからも一緒に居るから……」
一緒に居るか……そう言えば前世でもそんな言葉を聞いたのは子供の頃ぶりだな。
今の薫が友達としてそう言ったのかは俺としては良く分からないけど、今の俺は薫のそんな言葉に対してただただ素直に嬉しいと思った。
「ありがとう。薫」
「う、うん……私の方こそありがとう」
俺達がそんな話をしていた時横から声をかけられた。
「え?薫ちゃんと……海斗君!?」
「あ……弘識さん……」
きららは凄く驚いた感じになっていて薫は……特に変わった様子はないな。
「どうして二人が!?もしかしてそういう関係!?」
「あー、違う違う。付き合ってるとかでは無いからな」
「え?じゃあ何でこんな時間に一緒に???」
何て説明すれば良いのか……そのまま伝えても良いのかな?
そんな事を俺が考えていたら冷静に薫が言った。
「えっと。実は海斗君には私からお願いして塾の帰りに迎えに来てもらったの」
「まぁ、そうだな」
「どうして海斗君!?薫ちゃんだったら真に頼りそうなのに?」
俺と薫にきららは不思議そうにそう聞いて来た。
「真にもお願いしたんだけどね……友達とゲームの約束があるから難しいって言われたんだ……」
「そ、そうなんだ……でもそれだとしても海斗君と薫ちゃんって仲良かったの?接点は全く無さそうだけど」
「実はこの前塾の帰りに私がナンパされて断れないでいた所を海斗君に助けて貰ったの。それでその流れで真に断られたから頼んだら良いよっていってくれたんだ」
そう話す薫はどこか嬉しそうな顔になっていた。
「なる程……やっぱり海斗君って噂とは違いそうだね……」
「そうだよ。海斗君って優しいんだよ」
「そっか。薫ちゃんがそう言うならそうなんだろうな……やっぱり噂なんてあてにならないんだねー」
「いやまぁ、噂も本当の部分はあるぞ……ただ今は違うってだけだ勿論それを信用して貰う事は難しいと思うけどな」
「ふーん。まぁ、噂なんてそこまで気にして無いんだけどねー」
「そうなの?」
「うん。だって海斗君に言われたしね、自分の目で見て判断してくれってね。そう言われて私思ったんだよね、噂を丸呑みするのは良くないなってねー」
俺的にはそこまで考えて言った訳じゃないんだけどそんな事を考えてくれていたのか。
まぁ、きららっぽいと言えばきららっぽいのかな。
そんな事を思っていたらきららが続けて言った。
「二人は薫ちゃんの家に向かってるんだよね?」
「そうだよ」
「それってどっち方向?」
きららがそう言ったので薫が家がある方向を指さした。
「私も同じ方向に家あるから一緒に帰っても良い?」
「俺は……薫が良いなら大丈夫だけど……」
「私は大丈夫だよ。断る理由もないから」
薫は嫌がる素振りが全くなくそう言ったのがちょっと意外だった。
山崎の事があり少なくとも薫はきららに思う事があると思っていたんだけどな。
俺は薫が断らないだろうと思ってはいたけど、嫌がる素振りくらいは見せると表地たので、少しでも難色を示す様だったら俺からやっぱり二人の方がって断るつもりだったんだけどその必要もなさそうだ。
それから俺達は三人で歩いていた。
「そう言えば弘識さんはどうしてこの時間帯に?」
現在の時間は20時近くできららは部活に入ってる訳でもないので外に居るのも夜遊びを疑われかねない時間帯だ。
まぁ、勿論そんな事は無くただただバイト終わりなんだろうな。
きららはバイトの許可を貰っていないだろうから言わないと思うけど。
「え……えっと。私はちょっと買い物にね」
「そっか。買い物だったんだね」
「そ、そうだよ!」
きららは明らかにおどおどして言っていたが薫は疑ってはいなさそうだな。
いやまぁ、言いたくなさそうだから聞かないだけって方が可能性の方が高いか。
ていうか薫は笑顔だしいつの間にか仲良くなってるなこの二人……
弘識さん呼びだけど明らかに数日前教室で見た時と比べて薫は柔らかくなっていみたいだ。
そういえば確かに学校でもちょくちょく一緒に居るのを見てたな。
「そう言えば二人ってどのくらい仲いいの?学校では話した事すら見た事ないけど」
きららが俺と薫に対してそう聞いて来た。
「どうだろうね。でも少なくとも私はかなり信頼してるよ」
「俺も同じ感じかな……まぁ、俺からしたらまともに話せる人が薫しかいないからってのもあるけどな」
「そうなんだ……でも何で学校では話さないの?」
「あー、それだったら俺から言ったんだよ。俺と話してると周りから変な目で見られるだろうから学校では話さない様にしようってな」
「なる程ねー。確かに周りは混乱しそうだね」
「私は別に良いと思ったんだけどね……」
その後も会話をしつつも俺達は歩いていた。
やっぱり薫の様子を見てもきららに対してマイナスな事を思っている様子は全くと言って良いほどなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます