第7話 エロゲの世界ならナンパはつきもの

 ――それから数日後


 俺は外食を済ませて家に帰っていた。

 今の俺は一人暮らしだが王豪海斗の記憶を辿っても前世の俺自身も料理は全く出来ないので外食かコンビ二で買うかの二択だ。


「しっかし色々と大変だな……」


 お金を稼ぐノウハウは完璧にインプットされているので転生した俺でも何の問題もない。お金自体も使い切れない程あるので困らないが特に使い道もない。まぁ、その変は別に良いんだけど……家がちょっと大きいので手入れが大変だ。

 前世の俺はアレルギーがあったので一人暮らしをしてからは週に三回くらい掃除をしていたのだがアパート暮らしだったので全然大変じゃなかった。

 しかしこの家は違う。


 以前の王豪海斗は家政婦を雇っていたみたいだが俺はそう言うのがちょっと苦手というか知らない人が家を出入りする事にちょっと抵抗があったので雇うのを辞めた。

 そんな訳で掃除がちょっと……いやかなり大変なのだ。

 アレルギーの影響で綺麗好きになった俺からしたら掃除をしない選択肢もないしな。


 そんな事を思いつつ歩いていると見覚えのある子が大学生らしき人三人に囲まれていた。


「あれは……薫か?」


 どうしてこんな時間に……いやそう言えば薫は塾に通っていたんだっけな?

 成績は常にトップだし勉強を頑張ってたんだったな。


「っとそんな事言ってる場合でもないか」


 薫だったら押されてついていっちゃう可能性すらあるもんな……

 放って置く選択肢の無い俺はそう思い声をかけに行く事にした。



「ほら行こうよ!楽しませてあげるからさ」

「そうそう俺達ってこう見えても紳士だからさ」

「さ行こうか」

「い、いや……」


 近づくとそんな声が聞こえたので俺は近づき薫を自分の方にひきつけた。


「薫?こういうのはちゃんと断れよ?」

「か、海斗君?」


 俺が薫の顔を見ると赤くなっていて目は潤んでいた。

 ナンパをされて怖かったが断ったら酷い事をされそうで断れなかった……多分そんな感じだろう。

 

 俺はナンパしていた男達に目を向けるが知らない奴らだった。

 竿役なんてほとんどが顔すら出てなかった奴らばっかりだしな。

 まぁ、コイツらが竿役だった奴らであろうがそうじゃなかろうが関係はないな。

 エロゲの世界に転生してしまった以上今の俺にはこの世界が現実世界な訳で俺が後悔する選択肢を取るつもりはない。

 薫を堕とすと決めた以上守るのは当たり前だ。

 大体俺が竿役として機能してない以上ゲーム通りにも行かないのは考えるまでも無いしな。


 ……まぁ、今回はたまたま通りかかっただけなんだけどな……マジで良かった。


「あんたはこの子の彼氏って訳か?」

「まぁ、そうなりますね」


 王豪海斗の体はかなり強くて喧嘩の記憶もあるので戦う事は可能だろうが、俺は殴り合いとかは好きじゃないので出来るだけ穏便に済ませれるならそうしたい。

 勿論いざとなったら容赦するつもりはないけど……


 俺がそんな事を思っていたら後ろに居た男一人がひそひそ残りの二人に話し出した。

 小さい声で少し聞こえたのだが俺の名前を言っていた気がするな。


「そ、そうか……彼氏持ちなら諦めるか……」

「そ、そうだな」


 先ほどまで凄く強気だった男たちは何故かそう怯えた感じで去っていった。

 まぁ、俺というか王豪海斗がここらじゃ割と有名なのであの男とはあった事があったのかもな……凄くどうでも良いけど。 


「海斗君……」

「大丈夫か?」

「うん……」


 今の薫は泣いてはいないが少し落ち込んでいる感じだった。


「さっきも言ったけどちゃんと断れよ?俺が来なかったらあいつらについて行っただろ?」

「ご、ごめんなさい……断ったら何かされそうで怖くて……」


 まぁ、そんな事だろうと思ったけどさ……ついて行ったら更に酷い事になっていたかも知れないんだぞ。


「でもついて行ったら最悪の場合どうなったかも分かるよな?」

「う、うん……」


 凄く落ち込んでいるしあまり言うのも良く無いかな……


「まぁ、帰ろう。家まで送るぞ」

「ありがとう……」


 ――それから俺達は歩いていた。


「それじゃあ塾の帰りにって感じか」

「うん……私も心では断らないとって思ってたのに勇気が出なくて……」

「まぁ、そう言うのは直ぐに直せる事でも無いから結局はゆっくり直していくしかないしな……だからゆっくりで良いんだよって言いたいけど流石に心配だぞ?」

「う、うんごめんね」

「謝る必要は無いからもう謝るのは止めような。でもまぁ、やっぱり遅い時間に一人で出歩くのは止めた方が良いんじゃないか?ちゃんと断れるようになるまではさ」

「でも塾があるから……」

「んー、親に迎えに来てもらうとかは出来ないのか?」


 そうは言ったけどそう言えば薫の家族ってゲームで見た事なかったな。

 まぁ、俺が通ってないルートもいっぱいあるだろうから何とも言えないけど。


「お父さんとお母さんはどっちも夜遅くに仕事から帰って来るからそれは難しいかも……でもそうだね、今日みたいな事があると怖いし聞いてみるね」

「それが良いな。そうだ!連絡先交換しておこうぜ。何かあったら直ぐに連絡してくれて良いからさ」


 俺はそう言ってスマホを出してLUNEを開いた。

 薫もそれを見て自分のスマホを開いて連絡先を交換してくれた。


「よし!これで良いな。それじゃあどんなことでも良いから困った事とか相談したい事があれば気を遣わないでいいから直ぐ連絡してくれて良いからな」

「う、うん!ありがとう」

「あぁ」

「海斗君!私の家ここだからもう大丈夫だよ」


 薫はそう言って一軒家を指さした。


「そっか。それじゃあまた明日な」

「うん!また明日ね。助けてくれてありがとう」

「良いよ。俺は薫が無事ならそれでいいからさ」

「う……うん……」


 俺が笑顔でそう言うと薫は顔を赤くして少し俯いた。

 うん、照れた顔も凄く可愛いな。


 もう少し押してみたらいけるんじゃないかとも思ったが、ナンパされた事もあって怖かっただろうから今日は早く休ませた方が良いんだろうなと思い俺はそのまま帰る事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る