第2話 笹内薫を堕とす事にしました

「よし!俺は笹内薫を堕とそう!俺の為にも薫の為にもな……」


 勿論俺はゲームみたいに平気で女子を傷つける様な事は出来ないし、するつもりもない。

 そんな訳で王豪海斗みたいに女子を支配するように生きる事はむりだ。

 俺は俺のやり方で笹内薫に惚れさせよう。

 勿論薫を傷つけないようにな。

 

「まぁ、今はまだ計画はないけどな……」


 俺はそう思いながら部屋に戻った。



 ――部屋に戻ると薫は着替えて待っていた。


 ちなみに俺は部屋を出る際にズボンだけ持って出たのでパンツは履いていないがズボンは履いている。

 一応言っておくが俺の股間は既に大人しくなっている。


「おかえりなさい……」


 薫は恥ずかしそうにそう言って来た。


 真面目な薫だったら本来なら自分に嫌悪する場面だと思うがどうやら昨日の俺……いや王豪海斗のおかげでそうなってはいないらしい。

 王豪海斗は性格的に最初は本当に優しく薫に接していて、抱いてる時も優しい言葉をかけまくっていた。

 どうしてそうするかと言うとその女性を本格的に自分の女にする時に有利に進むからだ。

 もし何回か抱いて気に入ったらそのまま自分の女にして、気に入らなかったら一気に距離を置いて捨てる。

 それが王豪海斗のやりかたなのだ……

 だから薫も恐らく海斗君って噂と全然違って良い人だし優しい人だなって勘違いしている事だろう……かもじゃなくて絶対だな。

 王豪海斗はそれ位人の心に付け入るのが上手いのだ。

 大体本当に優しい人は傷心に付け込んで初めて話す人を抱くなんてしないよ?って言いたいところだがな……


 まぁ、今回はその最悪な性格に助けられたのかもな。


「大丈夫だったか?初めてで無理させたかもだけど」

「うん……最初は痛かったけど優しくしてくれたし最後の方は気持ち良かったから……」

 

 俺の問いにそう恥ずかしそうに顔を赤くして言った。


「なら良かったよ……今は動けそうか?」

「まだちょっと違和感があるからもう少ししたら大丈夫になるかな……」

「やっぱり恥ずかしい?」

「は、はい……」

「そっか。じゃあもうちょっとゆっくり話そうか」

「わかりました……」


 俺は薫を堕とす為の計画も無いがとりあえずどんどん距離を詰める事にした。

 ゲームは結構やり込んでいたのでヒロイン達の性格は熟知しているからだ。

 薫は押しに弱く褒められなれていないので最初はそこを攻めようと思う。

 まぁ、押しすぎると逆効果になる事もあるから様子を見ながらだけどな。


 そう思って俺はベッドに座っていた薫の隣に座った。


「でも本当大丈夫だったのか?昨日話を聞いたが好きな奴がいたんだろ?」

「正直に言うとちょっと後悔はしてるかも……昨日は私も正気じゃなかったので……」


 薫は少し悲しそうな顔でそう言った。


「そっか……ごめんな。俺も薫が可愛すぎて自分を抑えられなくなっちゃってな……」


 俺は申し訳なさそうにそう言った。

 当然俺自身が抱いた訳じゃ無いが俺が抱いた体で話を進めるしかない。

 

「か、可愛い……」

 

 薫は顔を赤くしてそう呟いてから言った。


「わ、私も拒めたのにそうしなかったから、海斗君は悪くないよ……」

「そっか、ありがとうな……そう言ってくれると気が楽になるよ」


 俺は笑顔でそう返した。


「う……うん。」

「薫?一応俺も薫の事が心配だし何かあれば頼ってくれよ。何があっても助けるからさ」

「……良いの?」

「うん。頼ってくれると嬉しい」


 それから薫は数十秒間黙ってから言った。


「海斗君って全然噂と違うんだね……」

「まぁ、どうだろうね。実際に中学生の頃は荒れてたからな……全部が嘘って訳でもないけど誇張はされてるかもね……」

「中学生の頃は荒れてたの?」

「あぁ、面白くはないけど俺の過去を聞くか?誰にも話した事は無いんだけど薫にだったら話しても良いかな……」

「昨日までは海斗君の事が凄く怖かったけど、話してみると凄く優しいし落ち着くから今はもっと海斗君の事が知りたいって思ってるの……だから聞いても良い?」

「あぁ、実は俺って孤児だったんだ……」


 そうして俺は自分(王豪海斗)の過去を話した。

 一応俺がお金持ちって事は伏せて話す事にした。

 自分の事では無い……しかし実はこれは前世の俺にも通ずるのだ。

 だって前世の俺も小学生の頃に両親を亡くしていたからだ。

 王豪海斗が孤児って事はゲームでは知らなかったが、正直親近感を感じている所はある。

 それに王豪海斗は常に寂しかったって事は間違いないみたいだしな。


「そんな過去があったんだね……」


 薫は涙ぐんでそう言った。


 そんな薫を見た俺は涙が出て来た。

 これは王豪海斗の記憶があるからじゃないと思う。

 ただただ前世の悲しい記憶が話している時に鮮明に浮かんできたからだ。

 大学生になっても時々両親の写真をみて思い出しては泣いていた……そんな過去を。


「よく頑張ったね……」


 薫はそんな俺を見て抱き着いて頭を撫でて来た。

 それから俺は数分間薫の温かさを感じながら黙って心を落ち着かせた。

 俺はその時、今までの王豪海斗がやっていた事をこれからは俺がちゃんと背負って生きて行こうと思った。


 ――それから数分後


「ありがとう。薫……」


 女子の前で泣くとか正直に言うと滅茶苦茶恥ずかしい……

 

「うん。大丈夫だよ。私も昨日慰めて貰ったから」


 薫は笑顔かつ優しい声でそう言った。

 心なしか数分前と比べても明らかに心を開いてくれている気がするな……


 そんな薫を見て俺は自然と笑顔になった。

 この世界に慣れるには時間が掛かると思うけど俺も大概チョロいな……


「そっか。それで薫はこれからどうするんだ?」

「どうするって?」

「山崎真(やまざきしん)の事だよ」


 山崎真とは主人公であり薫の幼馴染の事である。

 薫は主人公がヒロインのギャルと仲が良く自分をおろそかにされた事が今回王豪海斗に抱かれる事になったきっかけだ。

 俺に抱かれたが主人公への想いはまだ変わっていないはずだ。


「そうだね……どうしようかな……」

「まぁ、俺は薫と寝た事は勿論内緒にしておくから薫は薫がしたいようにしなよ?後悔しないようにね。さっきも言ったけど俺もサポートするからさ……」

「うん。ありがとう。私はやっぱりまだ真の事が好きなんだと思う……」


 ここで俺がアタックするのは当然悪手だ。

 押しに弱いが彼女は一途ではあるのだ。

 押しに弱い事を利用して攻め続けるのも悪く無いが、バランスを見て信用を得るのも重要だ。


「そうか。でも悲しい事があればいつでも来いよ?愚痴でも何でも聞くからさ。その方が気も紛れるだろ?昨日みたいに外が暗いのに道端で泣いてたら俺も心配だからさ」

「分かった。海斗君って本当に優しいね……でもどうして学校で訂正しないの?今の海斗君だったら皆に影口を言われるような人じゃないじゃん?」


 薫は少し不服そうにそう言って来た。


「まぁ、いいんだよ。噂は本当でもあるんだしな……」

「海斗君は私に頼れって言ってくれたよね?だったら私が海斗君は変わったんだよって皆に言おうか?」

「いや。それは大丈夫だよ。こういうのは人に言って貰うんじゃなくて自分で少しずつ変えて行くべき事なんだよ……」


 俺がそう言うと薫はちょっと笑顔になっていった。


「かっこいいね海斗君って」

「え?」

「勿論見た目の事じゃないよ。その考え方がだよ……あっ!だけど見た目も凄くかっこいいからね……」


 慌てて訂正するが流石に話の内容から言いたい事は分かって居るので大丈夫なんだけどな。

 まぁ、顔を赤くして慌てる薫も可愛いから良いんだけどね。

 ていうか好きなのは山崎って宣言されたとはいえかなり心を開いてくれたんじゃないだろうか……

 初日にしては悪くない収穫だったな。


 それから俺達は暫く話してから解散した。

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