Chapter 025 ご降臨なさる?
──時は数日遡る。
「あのー……皆さん聞いていい? 天使教というのが信仰されてるのはわかった……」
神の箱庭監視室で女神サクヤは天使達に質問する。
「それで……ちなみに女神って、この惑星でどういう位置づけなのかな?」
「私たちは、女神サクヤ様の代行者として、彼らに接しておりますので当然、主を敬っております。そうですよねぇ? 皆さん?」
天使アラネルからすぐに返事が返ってきて、アラネルは振り返り、他の天使達にも肯定を促す。
「「「「「「「・・・・・・・・・」」」」」」」
あれ? 皆さん黙ってるけど……。
「あの……、ボスひとついいですか?」
よく天使アラネルの後ろにくっついているボクっ娘天使が、手を上げ質問する。
いや、ちょっと待て……。
今、私を『ボス』と呼んだか……?
すごぉぉぉっっく、私の呼称が気になる……。
だがしかし質問を先に進めることとし、質問について先を促す。
「ボスからもらった天界メールには『任意の惑星に行って、ある惑星で魔物がうじゃうじゃいて困ってるから助けてくれるなら惑星に住んでいいよ~という条件で交渉してきて』って確か書いてありましたけど、ボスのこと布教しておいてねって書かれてなかったっす……」
他の天使達もコクコクとアラネル以外が肯いている。
「ちなみに僕は獣人族担当だけど、移住の時も天使ってしか名乗ってないし、自分のことを
何人かは首を縦に振ったが、
だがまあ、今は気にするまい。
「ということは、アラネルが担当した鬼族以外は私のことを知らないと……」
おぉ! なんということでしょう!
神であるこの私が、かわいい我が子らの記憶にすらないなんて……。
なぁぁーーんてねっ! そこは別にいいや……。
ちなみに鬼族の皆さん、結構、閉鎖的で鎖国のようなことやってるから、他種族の皆さんとほとんど交流はないため情報がほとんど流れ出ないらしい。
ただ、物流を取引するための場所はあるみたいだから、完全な鎖国とは言わないのかな?
まあいずれにしても私の知名度は限りなく低いというわけだ。現状は仕方ないにしても、なんとかしたいと考えている……。今から天使ちゃん達に「女神信仰」を啓示してもらうのはあまりにも恰好悪い。
となると、自ら行動を起こさないといけない訳だが、契約条項のこともある……。
さて、どうしたものか……。
「ねえ、君達の中で、惑星メラに直接行った、あるいは
サクヤの質問に数人の天使が手を上げた。
おいおいマジかよ!?
学院長室前に飾られている歴代学院長の中でも特に伝説が数多く残り、世界的に超がつく有名だが、その実、その正体はほとんど謎に包まれているって言われているあの「初代学院長……ザ・ナート」が目の前にいる。
それも一年生の実技時間に、実技担当の教師の後ろで傘を差して黒いメガネを掛けて椅子に腰かけ、ミラーたちの実技を眺めているなんて……。
百年前の偉人が突如現れる……そんなこと本当にあるのか?
ただ魔人族に一人だけ”不死”を獲得したものもいる……。
本物であればあながち”嘘”とも言い切れない。
実技担当教師は、元S等級依頼可能冒険者で、引退後にこの学院で実技を担当している大ベテランと聞いているが、後ろに“伝説”が授業を直接見ているので、舞い上がって緊張しているのか、表情も固く動きもぎこちない。
(王子、あの方は本当に本物の初代学院長なのでしょうか?)
(ノビリス、念話はやめろ……)
(いくらお前のレアスキル【暗号念話】でも本物なら暗号を解読して傍受しかねない……)
いったい、何が起きてるのか理解できない。
初代学院長の噂は瞬く間に広まったらしく、実技場の外周にはたくさんのギャラリーが集まってきている。
本物だとしても、なぜ一学年の実技なんて見てるんだ?
いったい何が目的なんだ……。
黒い眼鏡を掛けてて、いまいち表情が読み取れない……。
ん? ちょっと欠伸をした……気のせいか?
「えーではさっそくだが、今日は初代学院長であるザ・ナート様がみておられるので、お前らにはいきなりで悪いんだが、三人で一組の模擬戦をやってもらう」
これはまた結構な無茶ぶりを言ってくる実技担当教師。
いくら何でも調子に乗り過ぎではないか?
「先生、よろしいでしょうか?」
「うん? なんだ?」
ひとりの女子学院生が手をあげた。
実技担当教師は返事をすると。
「ちょっといくら何でも“乱暴”ではないでしょうか? 本来なら今日は、想力を高めるためのイメージトレーニングのはずだったと覚えておりますが……いきなり三対三で模擬戦するなんてまだ入学して半年も経たない一年生には早すぎではないでしょうか?」
俺含め、この場にいる学院生のほとんどの者が思ったことを言ってくれたのは、No2の「ローズ」さんだ。
まわりにはやたら必要以上に親切なのだが、ノビリス(ロレウ)にだけはやたら対抗心を燃やしていて、かなり挑発的に接していく。ノビリスと仲の良さげな俺にもたまに絡んでくるおっかない女性だ。
だが今は我々、他学院生の英雄だ。
「とんでもないですよ先生、僕たちはそんなことをこれっっっぽっちも思ってませんよ」
もうひとり手を挙げ勝手に喋り出す生徒がいる。
「むしろ あの“伝説”の
おいぃ──っ
「先生、つきましては、そこのミラー君達と僕たちで最初にザ・ナート様にお披露目したいと思いますがいかがでしょう?」
うわっ……こいつはこいつで、俺のことをノビリスの恋敵って設定になってて、俺にだけ好戦的だったんだ……面倒くせぇぇ!!
よし、ここはローズさんの意見に同調しつつ、うまくオブラートに包んだ返事をしよう。
俺が口を開きかけたその時、先に初代学院長が口を開いた。
「あーあーえーっ─テステス……っといかん……ウォッホン、そこの君ちょっと……」
俺に顔を向けてこちらに来いと手招きされ、初代学院長に近づくと手を添え耳打ちされた。
「……先生、やらせてください」
俺は実技担当教師にそう返事をして、模擬戦の準備のため、シュートとドクターの元に戻った。
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