Chapter 004 新たな厄災の兆し
天使アラネルから説明を受けた私は、なんかこう……ふつふつとあのすごく懐かしい抽選会当日の惑星が当たった瞬間のあの歓喜に打ち震えた感動が再び蘇ってきた気がしてきた。
「みんな! 今日まで、本当によく頑張ってくれたねっ、ありがとう」
少し笑顔を取り戻した女神を見て、天使アラネルも口を開く。
「いえ、主の地球でのお噂は、私どもも聞き及んでおりました。その事故はおそらく冤罪なのではと……そのうえで今まで大変なご苦労をなされて、私どもの些末な苦労など到底及びもつきません……」
どうやら、各惑星に向かって出立していたアラネル達にも地球帰宅後のサクヤの動向が多少とはいえ入っていたらしく、その上で無実だと考えてくれていることや労りの気持ちを伝えてくれたことに、素直に喜びを感じる。
サクヤは画面モニター上の惑星を見る限り、かつて見たあの魔物がいたるところに蔓延り、暗鬱とした光景を目の当たりにしたが、今では、緑あふれる大地に海は鮮やかに青く輝き、本来の惑星メラに備わっていたパフォーマンスを取り戻していた。
多少、魔物が多く住む地域、海域等存在するが、惑星メラに移住してくれた種族達の手によって、この二百数十年で、魔物を駆逐しつつ、文明の領域を拡げ、開拓を進めてくれたお陰で、他の惑星とそこまで遜色がないと感じるくらいになっている。
うん?
ところで魔物が多く住むところにある、どう見ても惑星メラに相応しくない──明らかに時代錯誤な大きな黒い
なにこれ?
「あの黒いバカでかい
すでに監視室内の各持ち場で監視や、通信、恩恵等の業務を始めた天使達に質問したら返事はすぐに返ってきた。
天使たちが二百数十年前に他惑星の知的生命体とともに、惑星メラに到着した時にはすでにそこに存在していて、真っ黒で質量感がどこかおかしく、外見上、モニターで確認しても出入りのような開口部どころか一切の凹凸等もなく、一体、どういった目的を持った建物か憶測もつかず、明らかにこの惑星にとっては異物の存在だ。
さらに天使たちの話では、これまで、この黒い函に纏まつわる特別な事象は起きておらず、最初は気にしていた天使達もやがて、月日が経つにつれて、気にならなくなったそうだ。
神の箱庭側での直接的な調査はしておらず、たまに各種族の冒険者や探索者等が発見するものの、物理的な衝撃や魔法のようなエネルギーを放って照射してもそのすべてが「無かった」ことになるらしく、各種族も何もさせてもらえないまま現在に至っているとのこと。
うーん、なんか嫌な予感。
だとすると、黒い函って明らかに高次元の「何か」だよなぁ……。
契約書にも特に謳われている条項も無かったし、どうしよう?
私は直接は手を出せないし、天使ちゃん達ももう気にしてないみたいだし、そもそもアレが何なのか 私も見たことも聞いたこともない……。
アレが周囲の魔物を活性化していることは、点在している「黒い函」の周囲の魔物の状況を見ても限りなく
「黒い函」だけあって……ぷぷっ!
あっ私、今、ギャグが神懸った? 「神だけに……」
くぅぅ! 面白っ!!
憂いのある表情から怪訝そうな顔、突然、忍び笑いを漏らしはじめたりと、目まぐるしく変わる女神の様子を天使の何人かが気づき「まだ少し病んでるのかな?」と心配そうな視線をちらちらと向けている。
でも、まぁ惑星に住んでいる各種族に今のところ、大きな影響も無いようだし、あとで、天界通信網で調べたりするけど、しばらくはこのままでいいかな?
しばらく考えた後、サクヤは一旦保留することに決めた。
サクヤが地球を離れてしばらく経った頃、地球のとある神域でまた例の四柱の神々が内談している。
「あの例の小娘、我々の仕掛けた悪戯から開放されて、やっと地球を離れたようだぞ」
「あら? そんなことあったかしら?」
「おいおい……さすがにそれはないと思うぞ?」
男神がサクヤの話題を会話に上げると女神は打ち忘れているような台詞でとぼける。
「まぁ、もうよいじゃろうて? 儂はもう充分に気が晴れたわい!」
「いえ、まだよ……もっと……もっともっともっともっといたぶりつくして、絶望を味わわせてないとダメよっ!!」
「おぬし、相当な嗜虐者じゃな──どこまでやっても気が晴れぬじゃろう……というか、なんか別の違う感情が芽生えてはせぬか?」
「まあ、気にいらない神は徹底的に叩きのめさないと気が済まないから、お爺ちゃんの皮肉なんて一切気にならないわ!」
「誰がくそジジィじゃ!!」
老男神と気の強い女神改め「Sッ気女神」が、かみ合わない言い合いをしていると、計画首謀者の女神がそれとなく口をはさむ。
「そういえば、三百年近く前、頼んだもの置いてきてくれたかしら?」
「あぁ……あの良くわからない黒い函なら、魔物を撒いた後に、しばらくして例の業者に頼んで運びこんだぞ……そういえば黒い
「ふふっ、さぁ? 何だったかしら?」
先ほどは覚えていないと言っていたはずの女神はなぜかしっかり覚えていて、こちらが質問しても碌な返答もせずに魔性の笑みを浮かべて物思いに耽けり始めた。もう声は届かなさそうだ。
男神は、この何を考えているのか分からない女神の気まぐれに付き合ってずいぶん長いので、やれやれと両手の掌を上に向け軽く肘の高さまで上げてみせた。
他の二柱も、黙りこんだ女神のことは気に留めることなく他の雑談に移っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます