Chapter 003 8つの種族



 西暦2017年、日本時間11月23日6時30分。


 終わった……。


 本当に……やっと終わった……。

 もう、身も心もボロボロっ……。


 あれから二百九十年とちょっと。

 何とか頑張って十年くらい期間を縮められたけど、それももう限界……。


 夜勤明け……。

 女神サクヤは、職場へ退職の挨拶を済ませ、建物を出て行こうとすると入口のところで同僚の女神に「ちっ」と舌打ちをもらうも、それでも何も言い返せなく、ひどく疲れた身体で、社宅に戻り、自分の新居への引っ越しの準備に取り掛かり始めた。


 んー……。

 嬉しいはずなんだけど、なんか素直に喜べない。


 こんなに長い時間がかかっちゃうと、いざ惑星メラに転送門で向かおうとしたら、惑星行きのゲート自体無くって 惑星の当選自体がそもそも私の夢でした。という結末だったりして……。


 それに、また地球で何かハプニングが起きるんじゃないかと思うと気が気じゃなくなる。

 うぅ……なんで私こんな目に遭ってるんだろ?


 寝不足、心身の疲労が極限に溜まり、あまり回らない頭のせいでネガティブな思考に陥り、自問自答を繰り返す。

 目には大きな隈ができ頬がこけ、以前の彼女と違って、だいぶ憔悴しているように見える。


 でも、ほらっ!? 

 契約書はあるし。 

 やっぱり夢じゃないんだよ? 

 アブちゃんとも百年くらい前にオープンチャットしたし! 

 うん……確かに話したよね?


 自分のことが信じられず、友達の女神アブンダンティアと会話したことも夢だったのかとふと疑念に駆られる。


 月の裏側の地球の神役所で転出届を提出し、無事受理され、天界に転送門ゲートで移動し、天界中央広場で、惑星メラ行きの転送門が目に留まった。そこをくぐると、惑星の衛星軌道上を周回している神の住まう地「神の箱庭」内の正門前の転送扉へと繋がった。


 正門から入り、更に歩を進め、箱庭の中央に建つ監視室のある建物の中に入った。監視室入口の自動扉を開くと、中には八人の天使が控えており、サクヤの入室とともに、全員深々とほぼ直角になる形で拝礼してきた。


「主よ、ようこそご無事でご帰還されました。我々天使八人、心よりお待ち申し上げておりました。」


(ハッ! この子たちは、確か副賞の特典の天使ちゃん達!? ホントにいたんだ……)


「主よ、どうかなさいましたか? よろしければ、こちらにお掛けになって我々とお話でも如何でしょうか?


 八人の天使のうち、ほぼ中央に立っている天使にそう促され、監視室の中央にあるサクヤ専用の席に腰を掛けた。


 僭越ながらと先に話を始めることについて断わりを入れ、先ほどからサクヤと接している天使「アラネル」が、各天使達を紹介していき、次いで、サクヤが、彼女達天使に天界通信郵便で指示を送った後の各天使の行動経緯の説明に移った。


 天使アラネルの説明によると、サクヤより指示を受けた天使達は各自、任意の惑星に行き、そこに住んでいる知的生命体に接触、移住交渉を行ったそうだ。八人いるので、それぞれ別の惑星を回ったそうだが、その時サクヤは、交渉に行くように指示しただけで行く箇所が別々になるとは思っていなかった。


 いくつかの惑星は、明らかに惑星の移住条件を満たしていない知的生命体や、凶悪な性質を持つ不適合知的生命体などいる惑星もあり、そこを管理する神役所でも交渉許可自体得られなかったり、交渉はしたものの、考え方が違ったり、嫌がられたりしてうまく行かなかったケースも結構あったそうだ。


 何年もの時間をかけて各天使たちはそれぞれ、各惑星の移住条件を満たし、かつ惑星間移住に同意した知的生命体の一部の者たちを、ポータブルゲートを使って転送を行ったそうだ。

 ちなみに簡易転送装置はリースらしく、使用料もその都度発生して何かとお高いらしいが、抽選特典として期間限定で無償貸し付け、無料使用ができたらしい。


 それにしても、普通は大神と呼ばれるような神力の高い神ひとしか持てないような天使の中でも、上位にあたるこの子天使達が八人も私の部下になるなんて、本当に夢みたい……。


 もしかして、すべて夢でしたパターン……。

 なんてことが起こり得そうで泣けてくる。


 サクヤが凹んでいるのを察してか、天使アラネルは、ゆっくりと丁寧にわかりやすく説明してくれる……。

 なんて有能!? 

 やっぱり夢なのか?


「主よ、それではこれから、この惑星へ移住した異星人についてご説明いたします」


 アラネルがそう言うと、彼女たちが移住させた知的生命体の惑星や種族について、説明を受けた。




 惑星 アルマニ

 種族 海人族

 特徴 人型と外において、ほぼ変わらず、耳の後ろにヒレがある。水中での活動性が高く、陸上では各能力に一定の制限を受ける。雨天時は能力の制限が大分緩和される。


 惑星 タイニー

 種族 巨人族

 特徴 身長十メートル、体重七トン程度

 知性は人族と変わらず、極めて温厚、草食で森の奥深くに家族単位で居住、数は非常に少ない。純粋な力では惑星最強を誇る。


 惑星 地球

 種族 人族

 特徴 他種族と比較すると知力以外、全体的に能力は低めだが、非常に繁殖力が高く、知的生命体の半数を占める。他種族と違い好戦的で人族同士で過去に何度も戦争を起こしている。


 惑星 ピークビット

 種族 小人族

 特徴 身長一三〇センチメートル程度、力は弱いが、その分素早く器用で弓が得意な種族


 惑星 ダイム

 種族 魔人族

 特徴 人族の容姿に尾が生えており、尾の色でそれぞれ大まかな能力に相違があり、赤尾は平民、青尾は貴族、黒尾は王族とのことで、人族に次いて人口多く、能力全体も人族より高め。


 惑星 ドラグーン

 種族 龍人族

 特徴 惑星に移住した知的生命体中、最強の能力を誇る。人型で背中に角が生えた翼の姿だが、上位種が存在していて、龍に変身できる個体も存在する。


 惑星 レジンリレス

 種族 獣人族

 特徴 聴覚に優れる兎人、素早さが売りの猫人、夜目や視力が段違いの梟人、力自慢の猪人、知力の高い羊人と六つのタイプがいて、人族の外見からそれぞれ特徴が体の各所にみられる。三番目に多い種族で、他種族と共存する形で生息


 惑星 ギアニア

 種族 鬼人族

 人族の容姿。頭部に角があり、赤、青、黒の角の色で能力に相違がある。器用で勤勉。




 おぉっ、こんなにいっぱい。

 えーとまず海人族、うんいいねっ!


 次に巨人族は……と。

 あぁ神にもいるわぁ体の大きいひと

 いつも思うけど食事って大変そうだよねー。


 人族かぁ……見慣れた子達、特に感想なし。

 小人族は、もう存在自体が可愛いねこの子達♪


 魔人族ってなんか勝手なイメージで尖っていそうだけどそうでもないんだぁ……。

 むしろメチャ優しい。

 この子たちもいいねっ!


 龍人族。

 名前からしてカッコいい!? 強そうだし……。


 獣人族。

 イカツイのもいるけどモフモフ系の種族もいるんだ。

 モフモフ、モフモフ♪


 最後に鬼人族、見た目と裏腹に真面目ってギャップ萌えかな? 

 この種族……。



 まあ、なんにせよ、なんだかテンションが上がってきたぁぁ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る