第41話 神代遺物品(アーティファクト)
「で、動機はなんじゃ?」
「……その男が、『コタの蔓』を借金の担保として預けていたのに、全額返済して契約通りの利子も払ったのに追加の利子だと言って返さなかったんだ」
「ほう、コタの蔓か」
シロワが髭を撫でながら説明する。コタの蔓とは、あのローグ・グリフォンの爪と並ぶ『賢者の石』の素材のひとつでこの大陸では、大陸中央にある「
「それで、その蔓はどこにあるのじゃ?」
「ああ、あの変な蔓のことね……それなら主人が金庫の奥に大事そうにしまってあるわ」
事実確認をするため、金庫からその蔓を取ってくるよう賢者シロワが、店主の奥さんに頼んだ。
「きゃぁぁぁ~~ッ!」
男が逃げないようにシロワがカラダを鉄線でぐるぐる巻きに拘束していると上から店主の奥さんの悲鳴が聞こえた。あわてて階段を駆け上がり開いた扉のなかに突撃すると、空っぽになった金庫を見下ろしたまま、店主の奥さんが立ったまま硬直していた。
「こ、これ……」
彼女の指差した方向をみると、金庫の扉に小さな伝言用紙が挟まっていた。
────────────────────
3日分のお給金をもらっていきまーす。
あと店主の●ッチな発言に対して、傷ついたので慰謝料も♡
怪盗妖精ミーミー
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「あの女、泥棒だったの⁉」
「もしかして……最近、巷で騒ぎになっていた怪盗妖精だったとは」
女性従業員がいつの間にか姿を消していた。
彼女は偽名で、3日前にこの店に雇ってほしいとやってきたが、店主の奥さんに無断で、スケベな店主が彼女を雇ったそうだ。
<猿トピ佐スケ>
:きっと最初から素材狙いだったでござるな
<user3720517596>
:スゲー、名推理、●ナン君みたい!
(じいさん、全然当たらんかったなw)
<ムフフ99【司会者】>
:賢者でも、推理は苦手な模様w
「ごほん、まあ、事件解決じゃな」
「あははッ」
賢者シロワの引きつっている顔にあわせて笑ってごまかす。
なにはともあれ事件は解決したので、石斧を売ってもらいたかったのに、店主の奥さんに「今日は店じまいだから出て行って」と言われ、追い出されてしまった。
やむなく、明日にでもお店に行こうとどこか適当に宿を見つけようと視線を看板を見上げながら歩き始めると「おぬし、今回、神プレイヤに選ばれた使徒じゃな?」と賢者シロワに言い当てられた。
(素直に答えていいぜ)
「……はい、そうです」
「まあ青い小鳥の耳飾りなんてつけてるのは、使徒くらいしかおらんからの……」
「そうなんですか?」
「ついてこい」
神プレイヤに許可を得て素直に答えたボクに賢者シロワは、背後へ振り返り、ボクに指で、くいくいっと合図をした。
「あの……こんなところに何のようでしょうか?」
人通りの少ない通りから、さらに細い路地へと曲がり、
「なに
賢者シロワの家って、たしか東の海に浮かぶ島にあるんじゃ……。
指で複雑なカタチを描き、立体魔法陣を起動させると、中に縦長の光の扉が現れ、シロワが中に入ったので、あとを追いかけた。
これは星空のなか?
真冬の雲がない澄んだ空に浮かぶ無数の星々……。
砂粒みたいな光を頼りにふわふわと浮いている手で水をかき分けるように前に進むと、大きな光の柱が見えてきた。
その光の柱の根元には扉があり、そこをくぐると現実世界に戻ってこれた。
──ここは?
部屋のなか……書斎、というのだろうか? 本が壁いっぱいに収納されていて、石床にはびっしりと読めない文字と模様が刻まれている。開いた本が何冊か宙に浮いていてその中の一冊に指を触れると、本と指との間で波紋のようなものが広がり、本がひとりでに閉じて、一冊分空いていた書棚に収まった。
「どうした? はやく上がってくるとよい」
部屋の端にある登り階段の上の方からシロワが姿を少しだけみせた。
「ちょっとそこに座って待っておれ」
階段をあがると、シロワが木の箱を漁っていて、こちらに視線をやらないまま、指で部屋の真ん中にある椅子とテーブルを指し示した。
「ここはいったいどこですか?」
「うむ? ここは〝
管理塔ってなんだろう? はじめて聞く名だ。
「まあ、
細くて短い帯で真ん中に黒い光沢のあるものがついている。木箱のなかから取り出し、ボクに投げて寄こしてきた。
「これは?」
「それは、ワシとおぬしの先々々先代の使徒で、みつけた
(スマートウォッチだな)
<ムフフ99【司会者】>
:ホントだ。スマートウォッチにしかみえんw
<user3720517596>
:心拍数とか、歩数とか?
(さあな、なーんか変だよな……こんなのがあるなんて)
神プレイヤや他の神が悩んでいるが、ボクにはよくわからない。おとなしく賢者シロワの説明を聞く。
「〝ちゅーとりある〟とやらを攻略した使徒に渡してほしいと頼まれておったのでな。たしかに渡したぞ?」
『ちゅーとりある』を攻略した証は、青い小鳥を描いたコイン付きの耳飾りが目印だそうで、ボクが48年ぶりにこの耳飾りをして、賢者シロワの前に現れたそうだ。
用途は不明で、48年前の使徒と一緒にいろいろと試してみたが、結局、どのように使うのかさえ、この大陸を救った英雄達ですら、わからずじまいだったそうだ。
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