第21話 煽りの天才


 いきなり『ドカッ』と部屋の扉を蹴破って男たちが侵入してきた。大半の者が、木を切り倒す斧や、農具を武器として握りしめている。


(【月炯眼ザ・ホルス】を発動っと)


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 ロンド:偽物 男 131歳

 悪魔(極劣種)

 筋力  3.317

 瞬発力 2.068

 耐久力 1.814

 魔力  5.136

 <固有スキル>

【変身(A)】人間や動物、魔物へ変身(変身条件は、洗脳に成功すること)

 <スロットスキル>

【洗脳(B)】

 発動型(目を合わせて、洗脳を行う。魔力量により成功確率が変動)

【精癒:低(B)】魔力が毎分0.01回復

「空き」


 <能力スキル>

【快術(B)】

 発動型:スロットスキルの効果を任意で1.5倍にする。

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(これでクエストの更新と模写条件が開示されたよっと)



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 偽物のロンドを含む悪魔を倒し、村を救う

 そのまま村から逃亡する


【村を救った場合の報酬】

 A~Dまでのスロットスキルを1つ獲得

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「ロンド:偽物」のスキル【精癒:低(B)】の模写条件

 洗脳された村人を傷つけずに悪魔をすべて倒す

 悪魔を森のなかへ引き込む

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 悪魔とは、この世界を破滅と渾沌に導く使者として、古の時代から魔人を使役し、幾度となく大厄を振りまいた。悪魔とは通常、ヒトでは抗しきれない存在とされているが、目の前の悪魔は能力がボクよりはるかに高いが、けっして手が届かないというわけではない。


 窓を突き破り、外へ出る。洗脳されているだろう村人は動きが遅く、取り囲まれていたが、難なく包囲網を抜け、森のなかへ逃げ込んだ。その過程で、動きに差があるため、ロンドと他悪魔2体がボクを追いかけてきた。


 武器も防具もなにも持っていない。おまけに相手は3体ともステータスが倍以上も開きがある……。


 さすがにキツイかと思いきや、やはり神プレイヤはすごかった。兵士4体……小ぶりの剣と盾を装備させて悪魔たちの外側に配置した。悪魔3体のうち2体が陽動に引っかかっているうちに目の前のジュノの父親ロンドに化けた悪魔に集中する。


 悪魔は大きな斧を軽々と振り回すが、ここは森のなか。木々に当たり思うように扱えておらず、その間に【内功チャクラ初伝(A)】を発動し、大幅なステータス差を縮め、素手による打撃で、圧倒する。すると突然、ロンドに化けた悪魔の目が赤く光った。


 だけど、すでに能力をのぞき見ていたので、引っかからない。【洗脳(B)】の影響を受けないように相手の目を見ないように戦う。考えてみると、相手をちゃんと見ないで戦うってとても至難の芸当に思えるが、神プレイヤはやすやすとやってのけた。


(いったん退却)


<眠れない板金屋>

:やっぱそうだよな

<腰痛天使>

:ここまで戦えてることがすでに神w


 ボクもそう思う。神プレイヤに操られなかったら、そもそも家のなかから脱出できていたかもかなり怪しい。他の洗脳された村人たちが、森のなかに入ってきたので、ロンドに化けた悪魔は倒せたが、あと2体残っているため、もう一度距離を取るべく森のなかを駆けだした。


(ちッそう来たか……)


 悪魔が追いかけてこない? 1体倒したので、森のなかは不利だと悟ったのか?


あおれ)


「え?」


(悪魔どもを煽って怒らせろ)


 ボクが? どうやって……。


<眠れない板金屋>

:オレ煽るの得意w いま書くから大声で読んでみ?


「おーい、ザコ悪魔くんたちィ。そんにオレ様がコワいのかな~~ッ? やっぱ底辺な悪魔はこれだから一生底辺なんだろうなw」


 ──なんて恐ろしい口汚いセリフを読ませるんだ……ボクって死んだら天国に行けるのだろうか……。


「■す、■す、■す、今すぐ■す」


 いやァァァァーーーッ。完全に怒ってるよ~~ッ。


(ジ……ジジ……)

(あ、やばいかも)


<腰痛天使>

:どした?


(猫が……中継器を……プツッ)


<眠れない板金屋>

:ダメだ。終わたw


 ガクンッと急にカラダが自由になった。これって……。「ヒュン」と目の端に拳がみえたので、低く転がりながら移動した。


 これって神プレイヤがボクを操れない状況? だとしたら、クエスト失敗どころか、ここでボクは死ぬ運命にあるのでは?


<腰痛天使>

:あきらめた?

<眠れない板金屋>

:いっこ教えてやるよ。〝あきらめる・・・・・ってのは、本当に最後まで頑張ったヤツだけに与えられる特権〟なんだぜ?

<腰痛天使>

:受け売り乙。でもいいんじゃない? 今のコイツにはw


 ボクは頑張ったのか……最後まで全力で……。


 ──ううん、まだだ。ボクはまだ「全力」を出し切ってない!?


「うぁぁぁぁぁぁ」


 チカラは思い切り。でも頭のなかは氷のように冷静さを保つ。

 するとボクのカラダのなかで何かが弾けたような音がした。


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