第16話 デート
2週間が経った。
ミタニア商会の人身売買および臓器売買の現行犯で捕まった元会長トロムは、王都ファルカに護送され、通常は死刑。軽くても終身刑の判決が下るだろうといわれている。
ミタニア家にはもともと母親が数年前に他界しており、長兄レオナルドも魔獣のエサとなったため次男のウランが若いながらミタニア商会を継ぐことになった。裏稼業をしていた連中は全員、捕縛されたため、かなりの逮捕者に上った。また、判明している限りの被害者とその家族にたいして、私財をすべて投じて賠償費を支払ったことから、もとの小規模な組織に戻った。
だけど、ウランは笑顔で「これから健全なミタニア商会として生まれ変わります」と意欲を口にした。以前からウランが信を置いていた商才のある人材も何人か残っており、また、先に救出したリー・ミュールさんをはじめとした被害者の女の子たちの学費を援助し、彼女たちさえよければ、卒業後、ミタニア商会で雇用することを約束したそうだ。
ボクの方はというと、グリフォンの爪を鑑定士にみてもらったところ、希少な回復アイテム「賢者の石」を生成するための素材になることがわかり、またドロップした爪には麻痺毒などは含まれていないことがわかった。
あと旧ミタニア商会潰しの報酬は、【
効果はAAAまでのスキル2つを融合させてワンランク上位のスキルを生み出すというもの。ランク違いのスキルを融合させる場合は、上位な方のスキルランクから上位になるため、このスキルを引き当てたボクを見た神々が、チーターとなにやら呼んでいた。
最近、キュアの機嫌がわるい。
どうしたらいいのか、わからず悩んでいると、神々のひとりから「でぇと」をしたら機嫌がよくなるはずだと教えてもらった。でぇとは、男女で、買い物に出かけたり、外でごはんを食べたり、散歩をしたりすればいいそうだ。
「なぁんだとぉぉッ! ふたりで買い物に行く? なんと不埒な」
「え……あっゴメン、じゃあ」
「しょうがない。行ってやらんでもない」
「いや、無理にではないから……」
「おまえがどぉぉぉぉしてもと、土下座して頼むからしかたない」
「……うん、じゃあ行こうか?」
すごく嫌がっているようにみえるが、行くことになった。なんで?
ボクの左目から出た彼女は、すこし跳ねるように歩いててなんだか楽しそう。だけどボクと目が合うと、「ふんッ」とそっぽを向かれた。
とりあえず、大通りに店を構えている飲食店で食事をする。入口は通りに広く間口を開けていて、外から中がまる見えになっている。やけに視線が気になる。道行くひとも、店内の他のお客さん、はたまた従業員までも、その視線の先にはキュアがいる。
まあそうだよな。〝ひと〟としては、あまりにも〝美〟が抜きんでている。ボクもふだん左目に宿っている時は気にならないが、栄養補給で体液を求められる時は、今でもすごくドキドキする。
ピンク色の薄い唇。だれもが羨望のまなざしを向ける存在は、その唇でボクのことを激しく求めてくる。昨晩も夜中にボクが寝入っている間に襲われた。着ていたシャツを剥かれ、うつ伏せにされて、ぺちょぺちょと音を立てて舐め上げられた。ボクは脇や背中が、痒がるポイントなので、「あ……」とか「──うっ」などと声を漏らしていたと思う。
食事を終えたあとは、近くの雑貨店に立ち寄った。神々いわく、贈り物をすると、どんなに氷土のような凍てつく壁も一瞬で溶けてなくなるだろうと教えてくれた。
「ここですこし待ってて」
「どうしたのじゃ? こんなところで」
街中を流れる川の橋のうえでキュアに待ってもらって、河原におりて探し物をする。キュアは退屈そうにしながらも、町の景色をぼんやりと眺め時間を潰している。
──みつけた。
これで当たっているのかな?
多少時間がかかったが、目的のものを手に入れ、次の場所に向かう。
「ここは?」
「アクセサリーショップだよ」
大通りから一本外れた通りに小さいながらもお店自体に
棚はあえて整然とされておらず、一見乱雑に並べおかれた商品が入った小箱がむしろお洒落さを演出している。店内全体に木と香草のニオイが鼻を刺激する。
店内は森のなかをイメージしているのか緑とこげ茶の色で統一されており、店のなかにいるだけで心が安らぐのを感じた。
「これでお願いできますか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
「ん?」
キュアが不思議に思ってるようだけど、この数日でいろいろと調べて彼女に最適な贈り物をみつけた。お店のひとに河原で拾ったあるものを渡して、一度、店を出る。今日は日が沈むと同時に「仮面祭」というお祭りがあると聞いている。
仮面祭は、自然に宿る精霊をイメージしており、五穀豊穣を祝うために「風」、「水」、「太陽」とみっつの精霊の仮面が人気となっている。
ボクは太陽、キュアには水をあらわす精霊の仮面を露天商で買った。
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