第15話 有翼魔獣
──外が騒がしい。
廊下では、用心棒の男達3人が、兵士ふたりを腕力と頭数にものを言わせて圧倒しているが、技術面では兵士の方が優れているので、かろうじて防衛線を破られずに踏みとどまっている。窓を破った弓を持った兵士も後ろからサポートしようとするが、通路の幅はそこまで広くないため、誤射を起こし、仲間にあたる危険があるため、手を出せないでいる。
ボクはというと、トロム会長が逃げ出さないように首すじにナイフを当てたまま、戦いの行方を静観している。他、ウランや女の子たちは、ボクらの後ろで固唾を飲んで見守っている。
時間がボクたちの味方をしてくれた。遠くの方で建物の正面とみられる扉が蹴破られ、十数人ほどの衛兵が、なだれ込んできた。
先ほど、弓兵が窓を割ったのは、外に待機しているマークス卿と事前に示し合わせていた突入の合図となる
「マークス卿。よくもオレを罠にかけやがったな」
「トロム会長。残念ながらアナタはここまでだ」
上階と1階に衛兵を二手に分けて、マークス卿はこちらに向かって歩いてくる。用心棒の3人はそれをみて、武器を捨てて投降したが、「くそっ」と悪態をついて、レオナルドが先ほど弓兵が割った窓から逃亡を企てる。
(オッサンは置いとけ、追いかけるぞ)
神プレイヤは、トロム会長を兵士に預け、レオナルドを追って、窓を乗り越え庭へ出る。
どんどん庭の奥へ逃げていくレオナルドを追いかける。すると大きめの小屋のなかへ逃げ込んだのをみて、手前で立ち止まる。
──人間用の小さな扉と、その倍以上はある大きな扉。そして大きな扉が開くと、レオナルドの後ろに魔法の鎖と首輪で繋がれた巨大な魔獣が姿を現した。
(えーとどれどれ……)
─────────────────────
個体名なし オス 7歳
ローグ・グリフォン
筋力 0.577 (封印解除時5.778)
瞬発力 0.167 (封印解除時1.674)
耐久力 0.355 (封印解除時3.557)
魔力 0.100 (封印解除時1.000)
<固有スキル>
【飛翔(A)Lv1】
<スロットスキル>
【麻痺爪(C)Lv1】
永続型(神経麻痺をあたえる)
【羽矢(B)Lv1】
発動型 (翼を羽ばたき大量の羽矢を飛ばす)
「空き」
<能力スキル>
【
<暗き夢の制約>
固有、スロットスキルの封印。全能力90%減少
────────────────────
「おまえら、コイツに引き裂かれるといい」
(おい、そのバカを止めろ!?)
レオナルドが首輪の開錠スペルを唱えると、グリフォンの首輪が外れた。そして1秒も経たないうちに彼は斬り刻まれ、肉片が足元まで飛び散ってきた……。
:おーR18指定
:まあ自業自得ということで
:ってか強すぎん?
(グリフォンの亜種か……ステがレべチ負けしてるが、余裕だな)
:なにコイツ、イキり屋くん?
:初見ニキ? 主は強ぇーぞ?
:へぇー、どの程度かみてみるわ
マニュアルモードで、兵士を3体とも呼出し、2体は武器を持たず、大盾装備。支援の1体は弓矢持ちにした。
やっぱり、ボクのカラダはとんでもない動きをみせる。【残像】と【火炎】のスキルを上手に使い、能力差を埋める。当たればOUTな麻痺爪や、羽矢をことごとく避けて、盾で弾き、剣で撃ち落とす。そして接近してタンク役となった兵士2体をうまく壁として使い、攻撃の合間に大剣でダメージを与えていく。相手からしたらいちばん厄介なのは間違いなくボク。そして完全にローグ・グリフォンの意識がボクに向いたところで、弓兵が片目を矢で射抜き、勝敗を決定づけた。
条件を満たしたのか、グリフォンにトドメを刺す直前になって、4体目の兵士が出せるようになった。
:ゴメン、めっちゃ強かった……
:わかればいい
:許す
いつものごとく神々の意味のない談笑が文字として目の端で流れていくなか、足元に見慣れぬものが転がっていた。
(ドロップ品か、まああとで鑑定してもらうとするか)
グリフォンの黒い爪。さっきステータス画面で麻痺爪とか書かれていたから触るのはやめた方がいいと思う。麻でできた袋を取り出して、なかに入れた。
(よし、屋敷のなかも片付いた頃か……クエスト報酬が楽しみだ)
:偽善者w
:〝やらない善〟より〝やる偽善〟
:いや、やる善でいいじゃんw
ボクは、神プレイヤや神々の考えていることはわからない。でもこうやって誘拐された女の子たちを助けることができた。だから口がすこし悪い神さまたちだけど、これからも神の使徒であり続けたいと思う。
(おいマイキャラ。この商会は潰れる。今のうちに屋敷に忍び込んで金目のモンを奪ってこい)
──どうしよう? 改宗しようかな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます