第11話 体液の搾取


「ちょっ///」

「動くなバカモノ。チカラを使うには男子おのこの体液が必要なんじゃ」


:これは……

:たたたた体液? それってつまり……

:勘ぐるな。たぶん違う


 ボクの首すじに浮かんでいる汗を舐めとっている。彼女の舌がボクの首に触れるだけでゾクゾクとカラダの毛が逆立つ。


:ちっ汗か

:ちっ

:いや、いいかも……


「ふぅ、満腹じゃ」


 そう言い残し、キュアはすぐにボクの左目のなかに戻っていった。

 

「セル、無事だったか?」


 すこし間を置いて、騎士や兵士たち、そしてうしろに妹のフェナがついてきている。


「ボクは大丈夫です」

「おにいちゃん」

「フェナ、無事だったんだね。母さんは?」

「一緒に教会に逃げたんだけど……」


 母は避難する途中に、近くにいた親とはぐれた小さい子をかばって、暴れはじめた馬に轢かれてケガをしてしまったそうだ。大ケガではなく、しばらく養生したらもとに戻ると村の医者に診てもらって今は教会で休んでいて、ひとりゴブリンの群れがいる方向へ走っていったボクを心配して、詰め所に駆けこんでくれたらしい。


「しかし、ゴブリンが集団で襲ってくるなんて、初めてだよ」


 騎士がボクにそう教えてくれた。たしかにボクがこの村に小さい頃にやってきてからは一度も村が襲われたことなんてなかった。


:気のせいかもしれないけど……


 神のひとりが、ことば……文字を流す。


:さっき木々のなかに怪しい人影がみえたわよ

 

(なんだ。オマエら気が付いてなかったのか? 森のなかからずっと尾けてるヤツがいるぞ)


 ──ぜんぜん気が付かなかった。森のなかから、なぜあとを尾けてきたんだろう? もしかして、ゴブリンジェネラル達が突然、襲って来たのって……。


 この日は、教会に母を迎えに行って、家に戻った。


 ──7日後。


「セル、なんだいこの糸は?」

「うん、森でたくさん魔物を倒したから魔石が余ってたから」


 ゴブリンの襲撃事件の翌日、万事屋に行き、旅に必要な道具と一緒に母のために隣町から高級な糸と機織り機を発注しておいたのが届いた。

 母は安価な糸と機織機を使っていたため、どんなに腕がよくても、大したお金にはならなかった。

 金額にすると、1,000ゴルドはするので、この糸で編んで、服をおろせば、数倍の値段で売れる。そのお金があれば、贅沢な暮らしをしなければ数年は遊んで暮らせる。


 それとボクらモティック家は、教会に多額の寄付をしたことにより、階級が“E”……工民になった。これからは母と妹が周囲から蔑まれることもなくなるはずだ。ちなみにボクの名前にある”G”という表記は貧民階級を表すものだったので、2段階もあがったことになる。一般市民や商人はF階級で、もっともくらいの高い階級は”A”階級の聖職者で、王族や貴族はこの階級制度にはあてはまらない。


 これでボクは安心して、旅に出ることができる。

 ボクの旅に必要なものとして注文したのは、できるだけ大きな剣と盾。鎧はすばやく動けるように革鎧に急所の部分だけを金属で補強したものを注文した。


 盾と鎧は申し分ないが、剣の注文の仕方を間違えてしまった。できるだけ大きな剣をたしかに注文したが、大人の男性が持ち上げるだけでもやっとぐらいのバカでかい剣が運ばれてきた。


 持ってみると、【怪力】スキルの補正を持つボクでも片手では振り回されるため、両手で持つはめになってしまった。

 

 さらに3日後。ボクは隣町イーヴェルの武器、防具専門店に寄っていた。

 盾が手で掴むタイプのひし形の盾を持っていたが、結局、この町に来るまでの道中、何度か魔物に襲われたが、盾を一度も使うことなくここまできてしまった。


 やっぱり、腕に通すタイプのものじゃないと大剣との相性が悪い。丸くて小さいけど、大剣をふるっても取り回しのきくので、買い替えた。


「まさか、アナタみたいな少年が”巨人殺し”を持つとは驚きました」


 この店からボクの大剣を取り寄せたのか……店主に聞くと、町の外れに住んでいる変わり者の岩人族の鍛冶師が打った珍品だそうだ。持つ者を選ぶ武器……「使えるモンがいるなら使ってみるがよい」というのはその偏屈な鍛冶師が吐いたセリフだそうだ。


 うーんこの剣って、背中に背負っているだけで悪目立ちするんだよな~。「そんな剣がホントに扱えるのか」って……いちおう使えるから使ってるけどいつかは交換しようかな?


 少し悩みながら武器防具店を出ると、ちょうど目の前を豪華な馬車が通り過ぎるところだった。いったいどんな人物が場所のなかにいるのかと想像を膨らませていると、突然、馬車に繋がれている馬が暴れはじめて、暴走し始めた。




 ──次話へつづく




【第11話時点のステータス】

 ─────────────────────

 セル・E・モティック 男 14歳

 階級:工民

 筋力  1.118(+0.336Up)+2.50(0.50Up)

 瞬発力 1.438(+0.326Up)

 耐久力 0.881(0.493Up)

 魔力  1.121(0.893Up)

<固有スキル>

【指し手(U)】

 発動型(効果:兵士3体の召喚※器の成長により変動あり)

 <スロットスキル>

【テラ・ストレージ(SSS)】

 保有中永続(効果:スキルスロット+5)

【忍の一族(B)】

 発動型(慣性力を10秒間キャンセル)

【模写(SSS)】

 発動型(指定条件を満たすと相手のスキルをコピーできる)

【残像(D)Lv1】:発動型

【無音歩行(B)】:永続型

【火炎(C)Lv3】:発動型

【蝕魂(AA)】

 発動型(魂を浸食すると、簡単な命令を与えることができる)

「空き」

「空き」

<能力スキル>

【怪力(AA)Lv3】:永続型 (筋力に補正)

<武器・防具>

巨人殺しジャイアント・キラー】超大型の剣(筋力が3以上で使用可)

【名の無い小盾】小さな丸い盾

【ハーフスタデッドレザーアーマー】鋲で補強された革鎧


<従魔>

チャーノズド・Ⅰ・キュア 女 ?歳

 筋力  Unknown

 瞬発力 Unknown

 耐久力 Unknown

 魔力  Unknown

<固有スキル>

月炯眼ザ・ホルス(SSS)】:本人が使う場合は永続型。セルの左目に宿っている場合は発動型となる。発動中は、観察力の細緻化、視力の超強化、動体視力の高補正、幻影破り、能力の開示ができる。

<スロットスキル>

【Unknown】

【Unknown】

【Unknown】

<能力スキル>

【Unknown】


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