第5話 コピー条件
動く死体ってこんなに動きがはやいんだ? もっとこうゆっくり歩いてくるイメージがあったんだけど、めちゃくちゃ足が速い。
(ホラゲーはひさしぶりだな)
:いや、ホラゲーではないw
:この緊迫感はある意味ホラゲーともいえる!
(どうせならゾンビにショットガンをぶっ放したいな)
:わかる。でもリロード中にゾンビに襲われる悪夢を思いだすw
:集中して、セルくん死なせないでよ
大量に群がる動く死体……神々がいうゾンビは動きがはやい。だが、それ以上にゾンビの動きを予測して囲まれないようにすばやく移動している。そしてすべてを計算されつくしたかのように一体ずつ丁寧にゾンビの頭を斧で砕きながら、その数を減らしている。
あと、【指し手】の兵士は、移動しながら戦うという選択肢を知らないのか真っ向からゾンビたちを倒していたが、数が違い過ぎてあっという間に大量のゾンビに組みつかれ覆いかぶさり姿がみえなくなった。
(ユニークスキルなのに使い勝手悪いな……ハズレだったか?)
:いや見ろ。なんか増えたぞ?
ボクの隣に兵士が、時間を置かずにもう一度出現したが、今度は2体になった。
2体に増えただけでも格段に戦闘の幅が広がったみたい。2体でうまく連係しながら死角をなくし、包囲されても先ほどのように数に潰されることなく、ゾンビを屠っている。
──ようやく静かになった。
あたりにはピクピク動いている肉片が飛び散っているが、脅威になるようなものは残っていない。
『なかなかやりおる……ではこれはどうかな?』
墓の手前左右に配置されていた石像がパキパキとひび割れ、狼と鷲の頭を持つ獣鬼が動き出す。大きさは3メートル近くある。デカすぎる勝てるわけがない。
──ざぐッ。まだ完全に体表の殻が落ち切ってないのに、ボクのカラダがものすごい勢いで鷲の頭の獣鬼の頭部に両手斧を全力で叩き落とし、鷲頭の獣鬼が背後へと倒れた。
:うわぁ、めっちゃ引くわぁ~
:汚ぇ~ッ武士の風上におけんヤツ
:いや、
(動き出すのを待ってないといけないルールなんてないしな)
だけど、もう一体に奇襲を掛けようとしたら、石片が完全に落ちた狼の仮面の獣鬼は、手に持っている長い槍で串刺しにしようとしてきた。
(チッ、2体目はヤレなかったか……)
『なんと卑怯な。キサマ、この外道め』
(ばぁ~か、勝ちゃいいんだよ。勝ちゃぁ)
:ホントだ汚ぇーぞ
:負けちまえッ
:いやいやそれはダメでしょw
どっちが悪役なのかわからない台詞を応酬する。神々も面白半分で好き勝手に言っている。
ちなみに神プレイヤのこえは、この巨大墳墓の主には届いていないようだ。一方的な会話となる。
(リーチが長ぇな)
:これはさっき、先に1体始末して正解だったわ
:主のウデでも、キャラがザコすぎて無理ちゃう?
ひどい。ボクだって、カラダを張って頑張っているのに。
すごく動きがはやい上に遠くからでも攻撃が届くので、距離を一気に詰めて攻撃するのもリスクが高いようにみえる。
(ん? 別に苦戦なんてしてるつもりはないがな)
:いやいやいや
:まあムキになるなや
(しゃーないな。一回、ウインドウを開くぞ?)
神プレイヤのことばと同時に時間が止まる。もちろんあの狼頭の獣鬼もそうだけど、ボクもいっしょに止まっていて、まばたきすらできない。
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個体名「グオル」のスキル【蝕魂(AA)】の模写条件
グオルの攻撃を30回よける。
グオルの戦意を喪失させる。
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:こんなん狙ってたんだ
:よけるのはできたとして、戦意喪失なんてどうやるんだ?
:あきらめてはやく倒せば?
あの槍の先って紫色の煙のようなものが纏わりついてるけど、当たったらどうなるの? 蝕魂って響きがもう怖いんだけど?
(まあ、あわてんな。オレに考えがある)
──神プレイヤの悪そうなことばにボクは血の気が引いていくのを感じた。
『ちょッ、オマ……罰が当たるぞ不届きものォォッ』
(遠慮すんなや、次いくぞオラァァ)
いや、ボクが遠慮したいです……。
ボクのカラダを使ってあろうことか、墳墓のなかに侵入して、この墓の一族のものなのか、棺桶を次々と破壊していく。狼頭の獣鬼グオルは、一緒に墳墓のなかに入ってきたものの、この墓を守る番人であるためか、内部で暴れるのはできないらしい。オロオロと墓荒らしの行動を見守っている。
:ヤベェなコイツ
:狂人って単語、このひとのためにできたらしいよ?
(よし、戦意喪失したな? スキルゲットだぜッ!)
:いろんな方面に叱られそうなセリフを吐くなw
:なんか墓の守護者がかわいそうになってきた
用済みになった獣鬼グオルは、ボクの一撃であっさりと倒れて灰になった。
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模写条件を達成しました。
取得スキル【蝕魂(AA)】
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なんか神プレイヤの手にかかると、獣鬼が恐ろしい化け物にみえなくなるのが、ボクには怖い。目の前に文字盤が浮かび、スキルというものを取得したと書いてあった。
(お、なんだここ?)
『……そ、そこはなにもないぞ? 他を探そっ他を!』
奥の壁に正面から見てるだけではわからない窪みがあり、手を入れて横を触っているとカチリと音がした。
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