第3話 ゲーム開始


:おいおい大丈夫か?

:開始1秒でゲームオーバーとか前代未聞すぎる



(まあ見てなって、オレ様レベルになると、これくらいの危機は逆に心地がいい)



:出た。オレ様発言w

:いや無理だろ?

:これはお約束発動の予感



 頭のなかに響くことばと連動するかのように、視界の端っこに文字が右から左へと流れている。


 次に大きな文字板が現れた。


────────────────────

  Autoモード

 ➡Manualモード

────────────────────


(マニュアルモードでここから逆転しちゃいまーす)



:お手並み拝見

ぬし、視聴者数がスゴいことになってるぞ?



 いったいなんなの?

 頭のなかに響く声は本当に神プレイヤなのだろうか? それにしてはずいぶんと下品な物言いをしてるけど。


 ズドン、と大きな音とともに視界が、とんでもない速度で横にブレた。

 ──よけた? このボクが?


 オーガの表情なんて、ボクには読み取ることなんてできないはずだが、明らかに怪訝そうな態度が動きに現れた。


(装備は……布の服。ってコイツ武器を持ってねェェェェーーッ!?)



:詰んだな……

:あれを避けたのはガチですごい。けど詰んだな……



(くそ……いや、諸君、みたまえ、あそこに落ちているのを)



:お!

:いけるんちゃう?



 神プレイヤが頭のなかで叫んでいる。

 視界の端っこの文字も絶え間なく流れていくなか、ボクのカラダが勝手にオーガの元へ突撃する。


「た、助けてッ」


 ボクの悲鳴を無視して、カラダが軽快に動く。唸りを上げて巨大なオーガの拳がボクの胸から腹あたりをとらえようとした瞬間にふたたび、視界が揺れた。


 オーガの巨拳を掻いくぐったボクのカラダは、奥に落ちていた傭兵のひとりが持っていた両手斧を片手で握りしめながら、立ち上がる。


 けっこう重いけど、なんとか片手で振り回せそう。ってボクってこんなに力が強かったっけ?



:コイツ、ヤバない?

:初期ステで、オーガを相手に熟練度上げをするって……

:主って「宇宙ジン」ってプレイヤー名、ずっと使ってる?



(いんや、元々は「コケコ13」ってネームを使ってた)



:コケコ13って、イカタコOnlineで世界3位になったヤツじゃね?

:マジか? プロやん

:キルしまくるが、自分は絶対にキルされないっていうあの伝説の……

:チャンネル登録してきた?

:オレは友だちにチャンネルをシェアしてきた



 神プレイヤが、他の神と思しきもの達と会話をしているなか、ボクはずっと目の前に少しでも当たれば命を落とす拳の暴風にさらされ続けている。


 先ほどから、目の端っこで神々の文字の帯とはまた別の帯のところで、「瞬発力:0.005Up」といった文字が大量に横に流れていく。



:スゴっ、もうスロットスキルを手に入れてるし

:【忍の一族】? たしかにw



 なにを言っているのかわからないが、急にカラダのキレが増した気がする。オーガの拳を余裕をもってかわせるようになってきた。


(もう伸びないか……じゃ)


 ものの数十秒もしないうちにオーガは、ボクが持っている両手斧により、傷が増えていき、動きが鈍ったところで、喉元に斧が深く食い込んだ。


(Manual解除)


 あ、自由に動ける。

 足元には、灰となって散ったオーガが残した魔石が転がっている。


:ステータスはよッ



(ほらよ)


 ─────────────────────

 セル・G・モティック 男 14歳

 階級:貧民


 筋力  0.561(0.011Up)+1.50

 瞬発力 0.875(0.065Up)

 耐久力 0.312

 魔力  0.09


 <固有スキル>

【指し手(U)】:発動型(効果:Unknown)


 <スロットスキル>

【テラ・ストレージ(SSS)】

 保有中永続(スキルスロットが5増加)

【忍の一族(B)】

 発動型(慣性力を10秒間キャンセルできる)

(空き)

(空き)

(空き)

(空き)

「空き」

「空き」


 <能力スキル>

【怪力(AA)LV1】:永続型 (筋力に補正)


 ────────────────────


:たった一戦でけっこう上がってるし

:やべーな、これだからプロは……



 またボクの目の前に光る文字板が現れた。どうやらこの文字板は他の神々にもみえているみたいだ。



:で、そこどこなん?


(んー知らね)


 えぇぇぇッ、なんでボクがプールヴの森のなかにいることを知らないのぉぉぉ!?



:んで、これからどうするん?


(Autoモードにしたからキャラが勝手に街とか村に帰るんじゃね?)


:ふーん。じゃ、みとくか



 ものすごく適当だ。この神々……。

 ちなみにウグノさんが死んでしまったいま、ボクは自分がどこにいるのかが把握できていない……。


 うしろに行けば、帰れるよね?

 来た道を引き返すが、途中ですぐにどこからきたのかわからなくなってしまった。



:なんか迷ってるぞ、このキャラw

:迷子になるAuto機能って正直どうなんだ?

:主、どうすんのよ、これ?


(うん? 今、カップラーメン食べてるとこ)


:ダメだこりゃ

:いきなり魔物に襲われたら、このキャラすぐ死ぬなw



 そんな勝手な神々の言葉を聞いて、ボクは背筋に冷たいものを感じた。

 ──ボクってもしかして、このまま死んじゃう?



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