第一章 1
1
月神教は主に山岳部と草原の地に布教されている。リッテンバウム王国はその山の上にある。山から下りてエリモス王国に行くには、馬で三か月かかる。
その間、お付きの侍女たちはずっと、日神教の男に嫁ぐ王女の身の上を嘆いていた。
なんでも、褐色に近い日に灼けた肌の色をしているらしい。まあいやだ。野蛮だわ。聞いたところによると、魔物のような赤い瞳の色をしているとか。それは、闇夜に妖しく光って人の喉笛を噛み切ると言われているわ。恐ろしいわねえ。それに、蛇の血を飲むんですって。ああ恐いわ。姫様、大丈夫かしら。
そんな噂話を聞いていると、うんざりする。
噂は噂でしかない。自分の目で確かめるしか、ない。
それより、とアリシアは思う。
エリモスという国は、砂と海に囲まれた国だという。
砂漠と海。
そのどちらも、アリシアは見たことがない。
本で読んだことはあるが、実際に見るとなると、まったくの未知のものだ。
どんなところなのだろう――会ったことのない男より、そちらの方に心惹かれた。
ゆらりゆらりと輿にゆられて三か月が経ち、乾いた風が吹いてきて、緑が絶え、砂漠地帯に入ってきた。
輿にかけられた紗のベール越しに見ても、よくわからない。海は、まだ見えない。
「姫様、見えてきました。あれが王城ですわ」
と、指差されて見てみれば、広い街並みが手前にあり、その奥には、大きな大きな樹が聳え、その根元に宮殿が堂々と建っている。
その不思議な設えに、アリシアは声を失った。
城壁のなかに入ると、途端に人々の注目を浴びた。
それは、悪意に満ちたものだった。
ご覧よ、月神教の連中だ。よくものこのことこんなところまでやっとこられたものだね。 ああ、あれが例の、王様と結婚するとかいう、王女だって。図々しいね。見なよ。あんなに色が白くて、まるで病人かねずみみたいだ。それに見なよ、目が青くて、まるで魔物みたいだ。あれじゃ化生だよ。王様を誑かそうって魂胆に違いないよ。
ぐっと拳を握る――。
わかっていた、わかってはいたけれど――こんなに害意に満ち満ちているだなんて、思ってもみなかった。ここが、日神教の本拠地。ここは、日神教のひとしかいないんだ。私はここでは、異端者なんだ。ここには月神教の人間は、いないんだ。
味方は連れてきた侍女たちだけ――小さな胸が、きゅっと締まる。
馬ですぐ側に乗っていたレオンは、その悪意に溢れた囁きの多くに、妹がこれから経験するであろう多くのことに胸を痛ませる。代われるものなら、代わってやりたい。その一心であった。
そうして長い長い街並みを抜けていき、ようやく王城に辿り着けば、お次はこれまたじぐざぐと巡る坂道である。それを上れば、入り口だ。
喇叭≪らっぱ≫が鳴らされ、王女の到着が知らされた。
王城の入り口では、エリモス国王自らが王女の到着を出迎えて待っていた。
「陛下、月神教の小娘程度に、そこまでされなくてもよろしいのでは」
宰相が言うのに、国王は小難しい顔をして返した。
「なにを言う。月神教とて、王族だ。花嫁が来るのに、私が迎えずしてどうする」
「は、失礼いたしました」
しずしずと、輿がやってきた。馬から続々と人が降りてきて、頭を下げた。
「花嫁が兄、レオンテウスだ。月神教と日神教とはいえ、これからは義兄弟の契りを交わす。教えの違いを越えて、よろしく願いたい」
「こちらこそ、よろしくお願い申し上げる」
国王は差し出された手を慇懃に握り返すと、軽く会釈した。レオンは肩透かしを食らった気になって、ちょっと意外に思った。なんだ、礼儀正しいじゃないか。とても日神教とは思いないな。
侍女に手を引かれて、王女が出てきた。
腰まで届く、波のような銀の髪。なめらかな象牙のような白い肌。明るい海のような、青い瞳。その青い目が、不安げに辺りを見回して、自分を見てびくりと止まった。
国王は彼女の方へゆっくりと歩いて行った。
「エリモス国王、エルギリアド・ゴールドハートだ。そなたの到着を待っていた」
北国にはない、健康的な日に灼けた肌。見上げんばかりの高い背。月が浮かぶ闇夜のような、黒く長い髪。そして自分を映す、剃刀のようなするどい黒い瞳。その目にじっと見られて、アリシアは震えながらこたえた。
「アリシア・シルバーストーンでございます。アリシア、とお呼びください」
そこへ、宰相がすたすたとやってきて告げた。
「婚礼のご準備をなさってください。午後には儀式でございます」
「さあ姫様、行きましょう」
あちらへどうぞ、と王女は王城の奥の部屋へ連れて行かれた。月神教の他の親戚たちは別室へ案内され、時間は過ぎていった。
午後の鐘が鳴ると、大聖堂に人が集まってきた。
長方形のホールには市民の多くがやってきて、国王の姿を一目見ようとひしめいている。 国王エルギリアドは全身太陽の光の色、白地に裾を太陽を意味する金糸で刺繍したロープを羽織り、腰と肩にも日神を象徴する徴を金の糸で刺繍した白い服を着て、背には日輪を意味する容のものを背負っている。
そこへ、花嫁アリシアがひとり、歩いてやってきた。
月の浮かぶ闇夜を象徴する紺地に腰の部分だけが黄色の、裾には円を描いた金糸の刺繍を施したゆったりとした胴衣を纏い、地を這うほどに長い透けるベールは金と銀と紺色の月を象る円の刺繍がされている。
これには、月神教を忌み嫌う民衆も思わずほう、とため息をもらした。
やがて花嫁が国王の元へやって来ると、国王はアリシアの手を取った。
二人は共に三歩、歩いた。
そこには花嫁の父であり、月神教の祭祀長であるリッテンバウム王国の国王がいる。
「今日のよき日に、ここに婚礼を執り行うことを慶び祝う」
そして祭祀長は、銀杯を掲げた。なかには果実酒が入っている。
「エルギリアド・ゴールドハート」
祭祀長はゆっくりと、エルギリアドにそれを飲ませる。
「アリシア・シルバーストーン」
続いてアリシアにも、それを飲ませた。
レオンはそれを、複雑な思いで見守っていた。異国の、異教徒に嫁いでいく妹の身を、まだ案じていた。
続いて、王冠の交換である。
日神教の王室では王冠の交換、月神教の王室では指輪の交換をする。
これには、両王室でどちらにするか散々揉めた。
そちらが嫁ぐのだからそちらが譲れ、こちらの教えを軽んじるつもりか、と一触即発のかたちとなり、結局両方やる形で落ち着く流れとなったのである。
エルギリアドは金地に青い宝石の入った、小鳥の彫刻された冠をアリシアの額に被せた。 それが終わると、アリシアは銀地に赤の宝石の入った、大木の彫刻された冠をエルギリアドの額に嵌めた。
それがすむと、今度は指輪である。
これには、市民がざわついた。
指輪? 指輪だって。月神教の慣習を、うちの王様に押しつけようってのか。
しかし、儀式は続いた。
小粒の青い宝石の入った指輪がアリシアの左手に嵌められると、無地の指輪がエルギリアドの指にすっぽりと収まった。
「ここに両者は結ばれた」
月神教の祭祀長が声を張り上げると、戸惑いがちに拍手が起こった。月神教の親戚たちも、嫌々ながらに手を叩いた。
祝福の鐘が打ち鳴らされ、こうして婚礼は終わった。
その後は、宴である。
砂漠の国らしい食べ物が供され、異国の食事ながら贅を尽くしたもてなしに、月神教の親戚たちは面食らった。
なんとなれば、相手は日神教なれば、自分たちは厩にでも案内され、馬と共に飼い葉でも食べておけと言われかねないと思っていたからである。
ちらりと主の席を見てみれば、国王エルギリアドはにこりともせずに酒を黙々と飲み続け、赤くなることも陽気になることもなく、花嫁に話しかけることもなく時々食べる以外は、飲んでいるだけである。
しかし、あの男の恐ろし気な顔つきはどうだ。獅子王と呼ばれるだけはある。まるで剃刀のように、空間が切れてしまいそうにするどい目つきだ。
アリシアはどきどきしていた。どうしよう。いつ、話しかけよう。どんなお話をすればいいのかしら。私から話しかけたら、変かしら。そうこうする内に時間は経っていき、夕方近くなってきた。
「アリシア、私たちはこれで帰るよ」
親戚たちが発つ時間となった。
見送るアリシアと侍女たちに、宰相が驚くべきことを言った。
「お付きの侍女の方々も、どうかお帰り下さい」
「えっ……」
「なんですと」
「わたくしたちは、姫様のお世話を」
「当方にも侍女女官はおりますゆえ、その必要はございません」
冷たく言い放つ宰相の言葉には、にべもない。
「ですが」
「どうかお帰り下さい」
ぴしりと言われて、言い返す言葉もなく、侍女たちは顔を見合わせた。
「さあ」
それを聞いて、レオンは歯噛みした。これでは、月神教の慣習を知る者がアリシアの世話をできない。そうやって懐柔して、改宗させるつもりだな。
無言の重圧に耐えかねて、侍女たちはおずおずと輿に乗って帰っていった。
アリシアは一人、そこに残された。
「妃殿下、宰相のザイオンと申します。これより、城内をご案内いたします」
ザイオンはそう言って、城のなかを歩き始めた。
王城内は広く、一度では到底覚えきれないほど広大だった。客間に大広間、塔に噴水に中庭に書庫、侍女たちや騎士たちの暮らす生活棟に食堂、そして国王夫妻の寝間、数え切れないほどの部屋があった。
城の造りが複雑なのは、もしもの時に賊が入り込んでも容易に重要な部屋に侵入されないため、というのは、生まれ育った王宮とよく似ていた。
日が沈み、夜となった。
「湯を浴びて、お着替えください」
初夜の準備である。」
浴室には、誰もいなかった。おかしいな、と思って辺りを見回すと、控えの間に人の気配がある。いつもなら、侍女が共にいて世話を焼いてくれたものだ。身体を拭く布を渡してくれたり、髪を洗う手伝いをしてくれたり。
そこで、はっとなった。
月神教の娘の湯あみの手伝いなど、できないというわけか。
仕方ない。
浴槽の周りを探して、髪を洗うせっけんを探した。それで髪を洗って、次に身体を洗った。あらかじめ身体を拭く布を近くに持ってきておいて、それで身体を拭いた。
故郷の山は夏は短く、冬が長かったから、いつも火が焚かれていた。だから、髪は火の側で乾かしていた。
ここではどうやって乾かすのだろう。空気がからからだから、すぐに乾くのかな、と思っていると、案外すぐに乾いた。これはらくちんだ。
そして、置かれていた服を見た。これを着るのだろうか。どうやって着るのだろう。わけがわからず袖を通していると、扉がノックされた。
「あ、あの……」
驚いてみると、侍女が一人立っていた。
「お、お手伝いします」
その侍女は間違って着ていた服を正しく着せてくれて、裾を直してくれた。まじまじと顔を見ていたら、
「みんなには、言わないでください。ひどい目に遭わせられるから」
と、部屋を出て行こうとした。
「待って。名前だけでも聞かせて」
と言うと、、怯えたように、
「エミリーといいます」
と小さく言って今度こそ走って行ってしまった。しばらくすると扉がノックされて、
「お支度はできましたかな」
ザイオンが迎えに来た。
「は、はい」
着た服は太陽神の光を象徴する白である。月神教の初夜では、闇を象徴する紺を着るのに。
私は、月神教なのに。日神教じゃないのに。ここには誰も味方がいない。あの娘以外は。
ちょっと悲しくなった。
ザイオンはまっすぐ地下へ歩いていく。
「陛下もすぐにおいでになります」
「寝間ではないのですか」
「初夜の儀は、寝間ではなく地下の儀式の場で執り行われます」
それは、先程も案内された場所である。神聖な、方陣の描かれた場所であるという。
「他にも儀式を執り行う場所はあるんですか」
「いくつかございます」
「どんなことをするんですか」
「陛下がその内おっしゃられるでしょう」
「その内っていつですか」
アリシアの質問攻めに、ザイオンはいらいらとした。月神教の小娘が、あれこれとうるさい。
「とにかく、あなた様はつつがなく儀式を執り行えばそれでよろしいのです」
そうしてやってきた地下の扉を開ければ、なかは灯かりもない真っ暗な空間である。
これでは、どこになにがあるのかもわからない。
「……陛下?」
手を伸ばして、恐る恐る声をかける。夫となる男は、もう来ているのか、まだなのか、それすらもわからない。
「……どこ?」
後ろで、誰かが近づく気配がした。ほっとして振り向こうとすると、突然口元を押さえられた。
「――」
「静かにしろ」
首に、冷たいものが当てられた。刃だ。くぐもった声が耳元で聞こえる。その声はこちらに回ってきて、自分を覗き込んで言った。
「王はもうすぐここにやって来る。月神教と手を結ぶ軟弱な王など、こっちから願い下げだ。この手で亡き者にしてくれる」
暗闇に、刃がにぶく光る。アリシアの明るい青の瞳が見開かれた。あの王様が、殺される? どうしよう。
咄嗟に、手が出た。アリシアは精一杯の力で、刃を持つ手を突き返した。
まさか抵抗されるとは思っていなかったのだろう、曲者はちょっと怯んで、それから、
「月神教の雌犬一匹殺したところでなんとも思わぬ」
とアリシアの首めがけて刃を突き立てようとした。
そこへ、間にやってきた誰かの掌が刺さって止めた。
「誰だ」
曲者は手の持ち主の方向へ目をやった。
「せっかくの初夜の邪魔をして誰だとはご挨拶だな」
「陛下……!」
エルギリアドだった。彼は掌から刃を抜くと、その刃を手繰ってあっという間に武器を奪い、男の肩を刺した。
「ぐっ」
「誰に頼まれた。言え」
「誰が言うか」
「じきに言うようになる」
エルギリアドは男から目を離し、顔を上げた。
「ザイオン、賊が侵入した。衛兵を呼べ」
慌ただしく扉が開かれ、ザイオンが入室してきた。
「陛下、こ、これは一体……」
「月神教との融和を快く思わない一派の仕業と思われる。牢に入れて尋問せよ」
「はっ」
「儀式が血で穢れた。今日はこれで終いだ」
「陛下、これには折から怪しんでおりました例の一味の者たちが絡んでいるものと思われます。ご出来≪しゅったい≫をお願いいたします」
「うむ」
礼服のまま、エルギリアドはザイオンと出て行ってしまった。
「王妃殿下、寝室までお送りいたします」
「あ、え、はい」
衛兵に言われて、アリシアはほっとした。これで一人で帰れと言われても、どうやって戻ればいいかわからなかった。侍女たちは頼りにできないし、宰相はあんなだし、味方は誰一人としていない。
ようやくのことで寝間に到着すると、ばかでかいベッドがでん、とあった。そういえば、部屋をちゃんと見ていなかったな、と思い、ちょっと探検することにした。扉が二つついているのであちらについている方を覗いてみると、薄暗いなかに本棚がぎっしりとあって、机がついている。これは陛下のお部屋だな、と思い、そっと扉を閉めた。
反対側の扉を開けると、こちらはがらんどうの部屋だ。ただ、故郷から持ち寄った服や小道具などの一式の荷物が無造作に置かれている。そうか、ここが私の部屋だ。ほんとは、侍女たちが荷解きするはずだったのね。
あの様子じゃ陛下はしばらく帰って来そうにもないし、暇だし、荷物の整理でもしていよう。
灯かりをつけて、アリシアは黙々と荷物を出し始めた。まさかこんなことをするとは、夢にも思っていなかった。服を出し、手鏡や櫛や小物などの細々したものを取り出して、本を本棚にしまってしまうと、途端にすることがなくなった。
アリシアは三人は横になれそうな巨大なベッドの脇で、膝を抱えて国王の帰りを待った。 結婚した夜に一人で眠る気になど、とてもなれなかった。
夜半を告げる鐘が鳴る頃、疲れた顔をしてエルギリアドが帰ってきた。彼は部屋の灯かりがついているのに気づくと少し驚いた顔になり、アリシアがまだ起きていることに気づくともっと驚いた顔になった。
「……まだ起きていたのか」
アリシアは立ち上がり、
「お疲れかと思いまして」
そして自分も礼服のまま、辺りを見回して、
「でも、私は日神教の作法を知らないので、お酒を用意すればいいのかどうか、わからなくて」
エルギリアドは彼女がなぜ礼服のままなのか不思議に思って、
「なぜ着替えておらぬ。侍女は来ていないのか」
「あ、えと、あの……」
アリシアが言い淀んでいると、なにかを察したのか、エルギリアドは渋い顔になった。「……それはすまなかった。気がつかなかった」
「いいえ、いいのです。故郷に帰って立場が変わっても、同じことが起きるでしょう。仕方のないことです」
「そういうことをなくしたくて、そなたと結婚したのだ。仕方がないですませられることではない」
手を叩いて誰か呼ぼうとしたエルギリアドを、アリシアは止めた。
「もう遅いですから、誰も呼ばないでください。自分で着替えます」
なんで気がつかなかったんだろう、あれだけ時間があったのなら、着替える時間くらいあったはずだ。やはり、気が動転していたのだ。
「そうか。私も着替える。その後、少し話そう」
互いの部屋へ行って、そこで着替えた。
アリシアは夜着に着替えて、寝室に戻った。エルギリアドはしばらく待っていると入ってきて、机の上にある小瓶から杯に酒を注いだ。
「月神教の戒律では、酒は飲めるのか」
「果実酒なら飲めます」
「そうか。ならこれは平気だな」
渡された酒は、葡萄酒だった。ほっとしてそれを口にすると、一気に緊張が解けた。
「あの……」
「なんだ」
「陛下のことは、なんとお呼びすればよろしいですか」
エルギリアドは黒い瞳を少し見開いて、
「……陛下、ではだめなのか」
「せっかく結婚したのに、陛下では味気ないです。お互い名前があるのに」
エルギリアドはすい、と目をそらし、
「母は私をギリアド、と呼んでいた」
アリシアは笑顔になった。
「では、ギリアド様とお呼びしますね」
エルギリアドはそれをまぶしげに見た。
「手、大丈夫ですか」
アリシアはギリアドの手元を見た。先程の賊の刃に貫かれた、彼の左手である。
「痛かったでしょう」
「どうということはない」
「利き手じゃなくて、よかったですね。利き手だと、公務に差し障りがありますものね」「その代わりに、指輪をしている手だ。月神教の王室は、結婚すると指輪をするのだな」「はい。父も母も、祖父も祖母も指輪を交換したと聞いています」
「私には新しい習慣だ」
「月神教の習慣を聞いてくれて、ありがとうございます」
「そなたも日神教の習慣を聞いてくれた。おあいこだ」
「月神教の戒律を破るものではないので、なんてことはないです」
それは、頑なに自分の戒律は破らないということを暗示してもいた。
ギリアドはそっと息をついて、
「さあもう寝よう。今日は色々なことがあり過ぎた。そなたも疲れただろう」
と言って立ち上がった。
「ベッド、大きいですね。こんなに大きいの初めて」
「ああ、嵩の大きい身体をしているからな。特注で作らせたのだ」
と言って、二人で横になり、眠った。
そうして夜が明けた。
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