第30話 大谷さん、ガスマスクを使う
うーん、これはいったい。
とても広大な空間に出た。周囲の様子をうかがっている間に隣の通路から聖女ミイやカナヲ、バフォンが入ってきた。それはいいとして部屋の奥をみると、ケーケー、エルフの戦士アルメ、兎人ルゥが、巨大な鉄でできた鳥かごのような檻に閉じ込められ、空中へぶら下がっている。この空間はほぼすべてが地底湖になっているので、もし鳥カゴが落ちてしまったらケーケー達が溺れ死んでしまう。
地底湖の水面には数人くらいは乗っても大丈夫そうな大きな蓮の葉が大量に浮かんでおり、足場となるが素早く移動したりとかはできなさそう。
この広大な空間のほぼ中央に男がひとり立っている。さきほど戦ったグードモールよりも頭に生えた角が大きくて美丈夫だったりする。
人質になっている3人の近くにも同じ魔族のシンボルである角を生やした女性が蓮の葉に立っている。敵のはずだが大谷さん達が入ってきてもこちらをみることもなくただずっと手鏡を使い、ギャルメイクに集中している。
「よく来たな、異世界の創造者よ」
中央に立っている男が口を開く。
「我が名はログローム、魔族第20,948師団の師団長をしている」
大谷さんとアピは先ほど聞いたが他のものはおそらく初耳だと思う。
「それで人質を取ってるつもり? 残念でした~。私たちがそんな脅しに屈すると思ってんの?」
聖女ミイが魔族師団長ログロームへ言い放つ。それはいいとしても3人に危険が及ぶような言い方は控えた方がいいと思う。
「人質ではない。だが、余興もよいであろう」
3人が閉じ込められている大きな鳥かごはロープによって吊り下げられているが、地面に固定されたフック状の金具にロープが結ばれており、その下に灯火台があり、ログロームがパチンと指を鳴らすと灯火台に火がついた。
「オータニ様、眷属に迎えてくださり感謝します」
「子方ですけどね」
「それは承知しております。あの男を討たせていただけますか?」
「ええ、問題ありません」
父親や龍人族全体の
そうなれば、人質の奪還に注力したいところだが、魔族の女性に気づかれることなく近づくのは難しいと思う。
「オータニ様かたじけないっす」
ケーケーが申し訳なさそうに謝ってくるが3人とも無事ならそれでいい。ただ、あの3人がやすやすと捕まった理由がわからないとこの先危険だと感じる。
「下にいるペダという人の煙には気をつけてくださいっす」
煙? 発動条件はわからないが、それでだいたい3人が捕まった理由が大谷さんは予測できたかもしれない。
人数はこっちの方が多いが、それだけペダという配下に信頼を置いているという証なのか、特殊な能力を持っているかのどちらか。
アピが羽を広げて師団長ログロームと戦闘に入った。その間に他の4人……オータニさん、カナヲ、聖女ミイ、バフォンは蓮の葉を飛び移りながら近づいていく。
「めんどくさいし、こっち
ペダがようやく大谷さんたちに視線を向けた。表情は明らかに迷惑そうな顔をしている。
「これでも
ペダがそう言いながら、右手に力を込める。すると手のひらに砲丸の球みたいなのが、浮き出てきた。
ペダが近づきつつある大谷さん達に向かって、砲丸の球を投げると空中で破裂して、爆発するように一瞬で煙が広がった。
「3人とも目を瞑ってじっとしてて」
大谷さんは聖女ミイたちにそう言い残し、ペダに接近していく。
「術が効いてねーし」
「はい、残念」
良かった。ペダは戦闘要員ではないらしい。あっさりと大谷さんが捕まえて、両手を後ろに向けて、縄で縛って拘束した。
「ひゃん!」
「え、なに?」
「な、なんでもねーし」
どことなく嬉しそうな表情をしているペダを転がしておく。スキル〝チェーンソー〟を使って鳥かごの鉄格子を焼き切ってなんとか3人を解放できた。
「オータニ様、それは?」
「これは、防塵・防毒マスクとゴーグル」
エルフの戦士アルメに質問されたので答える。ケーケーが先ほど煙に気をつけるように教えてくれたのと砲丸の球のようなものを投げる直前にペダが言い放った「
煙が拡散して薄くなっていくと、やはり睡眠作用のある煙だったらしい。聖女ミイやカナヲ、さらにバフォンまで蓮の葉のうえで眠りに落ちていた。
戦士アルメの話によると、気を失う前に大量のペダの姿を見たという証言から煙には幻覚作用も含んでいたと思われる。
防塵・防毒マスクはリフォームなどを手掛けるときに
綿で粉塵の吸入をおさえ、活性炭で徐毒する。活性炭の表面には
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