第16話 大谷さん、インフラを整備する
大谷さん達がパラメア大森林内にあるホームに戻って1か月が経った。
その間に大きな動きがあり、カンデナ獣王国が大谷さんを国主とした〝パラメア王国〟を国として認めると諸外国へ表明したという連絡を受けた。
街に戻ってすぐにエルフや元ゴブリン、ドワーフ、オーガの各種族の長へ相談し、カンデナ獣王国との同盟を正式に回答した。それはいいとして大谷さんが国王だったり、国名がパラメア王国というのはカンデナ獣王国が一方的に決めたことだが、大谷さんのまわりの人たちは「まあ、それでいいんじゃないですか」と異論を唱えるものはひとりもいなかった。
こうして大谷さんの意志に関係なく建国したパラメア王国は現在、1200人前後。元ゴブリンが1,000人あまり、ドワーフが100人程度、エルフが23人、元オーガが11人。そして異世界人が2人という構成になっている。他に水人族や獣人族のルゥもいるが、国民としてはカウントしていない。
リクエルトスの街並みと奥にあった建物をみた大谷さんは、文明レベル的に追いつけるどころか追い越せると確信した。その確信を元に街づくり……今や国づくりの方針を決定した。
大谷さんは戦争なんてしたことないし、やりたいとも思ってない。だが向こうが仕掛けてくるなら話は別……ケンカ上等、鉄拳制裁を加えるつもり。パラメア国内に侵略してきた場合は、他国へのアピールのために見せしめとして、完膚なきまでに叩きのめす。それでアチラは少なくとも数年以上は停戦に応じると考えている。
そういうわけで、国内の文明レベルをもうワンランク上げようと、いろいろと新しいことに着手した。
大谷さんはもっとも忙しいが、次に忙しいのは大谷さんの同郷である聖女ミイ。彼女は〝学校〟を運営するための教師陣の育成と薬草生成、魔獣使役のためにモンスターボックスの大量生成で、毎日、大変忙しそうにしている。昨夜は焦点が定まっていないグルグル
それにしても、聖女ミイの能力は大谷さんと違ってずいぶんと戦争向きだった。薬草生成というのは調合するための薬草を生み出し、調薬することで怪我が回復するポーションや魔法のエネルギー〝魔力〟を回復するマジックポーション、病気を治すものまである。獣王国から大使としてきている兎人のルゥから聞いた話だと、この世界には回復薬というものはないそうだ。似たような効果があるのはグリゴール教の高位以上の司祭が使える治癒魔法の奇跡のみ。なので薬草生成スキルだけでも世界の均衡を崩しかねないスゴイものだと思う。
そして決定的なものは〝モンスターボックス〟と呼ばれるスキルで生成されたテニスボールくらいの大きさの黒い四角い箱……この箱を魔獣に投げて成功すると箱のなかに閉じ込めることができるそうだ。そして次に魔獣を箱から出すと命令に従うようになる反則的なスキルだそうだ。
もし、これを勇者のために聖女ミイが使っていたら、いつかこの世界に現れる魔王も苦戦していたかもしれない。魔王が現れた時はたぶん人間とか魔物とか亜人とか関係なく一致団結せねばならないので、それまではこの国でありがたく使わせてもらおうと考えている。
大谷さんの方はというと、帰ってきて真っ先に始めたのはインフラ整備に着手した。パラメア大森林の南半分をひとつの国土として捉えた国づくりなので、いくつかのグループを立ち上げた。
まずレンガを使った道づくりを担当するグループ。レンガ道は迷宮のように入り組んだ構造を考案し、時にはあえて行き止まりを作った。
この迷宮道路には隠し通路を作る。けもの道のようなものなので人間側は気づかないし、たとえ気づいたとしてもそこも迷路のようになっているので自由には移動できない。その隠し通路を使って、人間たちが進軍してきたら、ゲリラ戦法で叩こうと考えている。
次にトイレ整備グループ。これまでは街の南端の川下にあたる部分に桟橋上の構造で張り出した仮設トイレを使っていたが、街の中心からはかなり距離があるため、不自由していた。街の縦に走る大きな3本の道路に川の上流側から水路として引き込み、公衆トイレを各地の道路の端へ設置した。
以前、人間が住んでいるラクエリトスの街でみた埋め建て式トイレだと異臭や細菌の繁殖、土壌の汚染が気になるので下水路をコンクリートでしっかり固めることにした。
ただ、道路の方は目測で造っても自動車が通るわけではないので問題ないが、下水道の方は勾配にかなり気を使わなければいけなかった。でも大丈夫。大谷さん実は日本でも特殊な能力を身につけていた。距離や高さなどの長さを数メートルくらいなら1ミリの狂いなく目測することができるので他の職人さん達に神だと崇められていた。
その特殊ともいえる能力で、1メートルの縄を作ってそれを伸ばしていき、巻き尺のような糸巻きを作った。あと、水路や下水路は勾配がやはり大事なので、
そして、もっとも大事なのは水準測量と呼ばれる高さを測るもので、A地点の三脚につけたレンズでB地点の高さが記された棒で高さを読んで、レンズと棒の高さを引いて、A地点のB地点の高さの差を求める古代の人たちもやっていた原始的な方法だが精度は非常に高い。これを行わないと、水路の下流側をすごく掘って深さを合わせたり、フラットになって水の流れが止まったりするので、とても重要で基本的な作業だったりすので大谷さん、ここは時間をかけて念入りにやり方を教えた。
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