第3話 元ヤン×元ヤン

 After


 テレビ画面上で、鮮やかなブロックたちが積み上がる。

 積み上がって、積み上がって……右側の画面から消えていく。

 途端、テレビ前から上がる悲痛な叫び。

「あー! このクソババア! お前、何連鎖してやがる!」

 我が祖母・寅子の叫びである。

「はんっ。そう言うアンタもクソババアだよ。ちんたらしてんのが悪い。おら、昨日のマリカーのお返しだ! たんと食いな!」

 こちらは我が友・りなっちのババ様・辰子氏。

「あああぁぁあああぁあッ!」

 我が祖母の悲鳴を聞きながら、りなっちが呟いた。


「……うちのばあちゃんとアンタのばあちゃん、本当に仲良いよね」

「「良くないッッッ」」

 いやツッコミの息の合い方よ。

「毎日一緒にゲーム対戦しててよく言うよ……」

「ねー」

 私たちには、もう目もくれず。二人は、ギャアギャア騒ぎながら次の対戦に移っていた。私とりなっちは、顔を見合わせ苦笑する。いつもの日常、平和な休日だった。


 ……ちなみにババ様二人は、共闘すると息が合って死ぬほど強い(祖母コンビVS孫コンビ、勝敗三十五勝一引き分け)。だからまあ、そういうことだ。



 ※※※

 Before(ヤンキー×ヤンキー)


「こんにゃろっ……いいかげんっ、倒れろ……!」

 寅子さんの拳が、辰子さんの頬に入る。

「はっ、やなこった……、ねっ!」

 しかし辰子さんは倒れず、そのまま反撃のボディーブロー。

「っっっ! ぶっころ……っ!」

「こっちの科白……!」

 ガスッ バキッ ドカッ ゲシッ

 蹴りが入れば、拳で返し。拳が入れば、蹴りが返る。

 倒れそうで倒れない二人のやりとりを見ながら、

「……あの二人、仲悪いんスか?」

 新人が問うてきた。目に戸惑いをこれでもかと滲ませて。

「あ、新人はこないだの共闘しか見てねーんか。そうだよ。仲悪くって一番仲良いんだ」


「「仲良くねぇ、クソがッ!」」

 二人の声が綺麗にハモる。私の口元が生温く笑う。

「つまり、そういうこと」

「あー……」

 新人も温い温度で頷いた。


 ……この二人、共闘したら息が合って鬼ほど強い。だからやっぱり、そういうこと。

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