第34話 立ち止まる勇気

「止まるのが怖い。」

そんな思いが、ずっと私の中にあった。何かをし続けていないと、自分の価値が失われるような気がして、いつも動き続けなければならないと思っていた。両親の病気や将来の不安に押しつぶされそうになりながらも、「頑張らなくては」と自分を追い立てていた。


でも最近、少しだけ「立ち止まる勇気」を持つことができるようになった。それは決して簡単なことではない。「立ち止まったら、もう動けなくなるのではないか」「誰かに遅れをとるのではないか」という不安が、何度も私の心を揺さぶるからだ。


けれど、無理に進み続けているときの私は、実はどこにも向かっていなかったのかもしれない。ただ足を動かしているだけで、心はどんどん疲れていく。そんな自分に気づいたとき、「止まること」への考え方が少し変わった。


「立ち止まることは、進むための準備期間だ。」

ある日、福祉窓口で相談員の方がそう言ってくれた。その言葉が、私にとって大きな救いになった。止まることは後退ではなく、むしろ未来に向かうための大切な時間なのだと。


立ち止まることで、私は自分を見つめ直す時間を得ることができた。たとえば、両親にどんなサポートができるのか、自分自身にとって何が一番必要なのか――それを考える余裕が生まれた。そして、無理をして進むよりも、少し休んでから進むほうが、結果的には効率的なのだということも分かった。


最近では、「今日は何もしない日を作る」ことを自分に許すようにしている。その日はあえて目標を持たず、好きな音楽を聴いたり、本を読んだり、散歩をしたりする。ただ自分のために過ごす時間だ。


そんな日を持つことで、心に少し余裕が生まれ、また新しい一歩を踏み出す力が湧いてくる。立ち止まることで、私は自分をリセットし、未来に向けたエネルギーを蓄えることができているのだと思う。


立ち止まることに罪悪感を持つ必要はない。むしろ、それは自分を大切にする行動だ。休むことも、進むことと同じくらい価値があるのだと、今では思えるようになった。


今日もまた、必要であれば立ち止まろうと思う。それは、未来に向かってより確実に進むための時間だから。立ち止まる勇気を持ちながら、自分のペースで歩んでいきたい。


「休むことも前に進むための一部。」

その言葉を胸に、私は今日も心のままに過ごしていこうと思う。

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