第33話 小さな変化に気づく力
「何も変わらない毎日だな。」
そう思っていたのに、ある日ふと気づいた。実は、少しずつ変わっていることがあるのだと。変化は劇的なものばかりではない。むしろ、ほんの小さな違いが積み重なって、やがて大きな流れになるのだと思う。
私はこれまで、「何かを変えなければ」と焦ることが多かった。両親の病気や経済的不安、自分の将来――どれも解決できていない現実に対して、自分は何も進んでいないのではないかと感じていた。だからこそ、変化を起こすために大きな行動をしなければと思っていた。
でも、大きな変化を期待しすぎると、それがうまくいかなかったときの失望も大きい。そんな中で私は、小さな変化に目を向けることの大切さを知った。
たとえば、最近母が私に「ありがとう」と言う回数が増えた。以前は当たり前のようにしていた家事や買い物を、今では少しでも手伝うと感謝の言葉が返ってくる。そんな小さなやりとりが、私たち親子の関係を少しずつ変えているのだと気づいた。
また、自分自身の変化にも気づくようになった。たとえば、悩んだときに「これは自分では解決できない」と思えたとき。それは、以前の私なら無理をしてでも抱え込んでいた場面だ。少しずつ、「できないことを認める」力がついてきたのかもしれない。
小さな変化は、最初は見過ごされがちだ。でも、それを見つけることで、自分が前に進んでいることを実感できる。たとえば、福祉窓口に初めて相談したとき。話を聞いてもらうだけで気持ちが軽くなり、「次はこれをやってみよう」という小さな行動を起こせた。それが積み重なり、今では自分から情報を調べたり、相談することが少しずつ自然になってきた。
変化は急ぐものではない。むしろ、日々の中で「これが少し変わった」と気づける力が、未来を形作るのだと思う。大きな目標を追いかけるのも大事だけれど、小さな変化を楽しむことも、同じくらい価値がある。
今日もまた、小さな変化を探してみようと思う。それは、親子の会話の中にあるかもしれないし、自分が気づかぬうちに成長した部分にあるかもしれない。変化はいつもそこにあって、それに気づくことで、自分の未来が少しだけ明るく見えてくる。
「何も変わらない」と思える日々の中でも、きっと変化は起きている。それに気づく力を育てながら、今日もまた、小さな一歩を積み重ねていきたいと思う。その積み重ねが、いつか大きな変化を生む日を信じて。
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