第32話 不安定な足元でも進む

「足元がぐらついているような気がする。」

そんな感覚を抱く日がある。両親の病気、経済的な問題、将来への不安――これらはまるで、私の足元を揺らす大きな波のようだ。一歩踏み出そうとしても、地面が不安定に感じられて、前に進むのが怖くなる。


不安定な足元で立ち続けることは、思った以上に疲れる。どこかで足を止めて休みたいと思っても、「止まったら崩れてしまうのではないか」という恐れが私を支配する。その結果、無理をしてでも動き続けようとしてしまう。


でも最近、「不安定でも大丈夫」という考え方を少しずつ取り入れるようになった。不安定な状況にいることを否定せず、その中でどうやって自分を保つかを考えるようにしている。


ある日、散歩中に公園の砂利道を歩いていて、ふと気づいたことがあった。足元が不安定な道でも、ゆっくり一歩ずつ進めば転ぶことはないということだ。砂利道は平坦なアスファルトの道とは違うけれど、それでも進むことはできる。むしろ、一歩一歩を慎重に踏みしめることで、自分のバランス感覚が磨かれるように思えた。


それは、私の人生にも通じるものがあるのではないかと感じた。不安定な状況でも、その中でできることを一つずつやっていけばいいのだと。すべてを安定させようとするのではなく、不安定さの中でどう生きるかを考えることが大切だと気づいた。


例えば、両親の病気について。彼らの体調は日によって変わり、そのたびに対応を変えなければならない。それは確かに不安定な状況だけれど、「今日はこの方法で支えられる」という小さな選択を積み重ねていくことで、少しずつ安心感を持つことができるようになった。


また、自分の将来に関しても、「すべてを計画通りに進める必要はない」と考えるようになった。道が揺らいでいても、その中でバランスを取りながら進めば良い。どの道が正解か分からなくても、進むことでしか見えない景色があるはずだ。


不安定な足元を感じる日は、まだたくさんある。それでも、そんな日は「今日はゆっくり進もう」と決めることで、自分を追い詰めずにいられるようになった。不安定だからこそ、慎重になり、柔軟に対応する力が育まれるのだと思う。


人生の道は、常に平坦ではない。でも、不安定な足元でも一歩ずつ進むことで、少しずつ自信が生まれる。大切なのは、完璧に歩くことではなく、揺れる中でも進む勇気を持つことだ。


今日もまた、不安定な足元を感じながら、それでも進む道を探していこうと思う。その一歩一歩が、やがて自分の力になると信じているから。

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