第31話 期待しすぎない勇気
「期待しすぎない方が楽だよ。」
そう言われたことがある。初めはその言葉の意味が分からなかった。期待を持たないなんて、未来に希望を持たないようなものだと思ったからだ。でも最近、その言葉の奥深さを少しずつ理解するようになってきた。
私は、これまで多くのことに期待してきた。自分に対しても、周りの人に対しても、将来に対しても。「こうなってほしい」「これができるはず」という思いが強い分、それが叶わなかったときの落胆も大きかった。自分を責めたり、周りの状況に失望したりするたびに、心が疲れていった。
ある日、友人と話しているとき、私はふと「自分にはできることが少なすぎる」とこぼしてしまった。そのとき友人は、「できることが少ないんじゃなくて、できる範囲を超えた期待を自分に持ってるだけじゃない?」と言った。その言葉が、胸に深く刺さった。
期待しすぎることは、自分を追い詰める原因になる。完璧を目指したり、結果にこだわったりすることが、むしろ自分の可能性を狭めてしまうことがあるのだと気づいた。それから私は、期待を少しだけ手放す練習を始めた。
「期待しすぎない」というのは、諦めることではない。それは、自分のペースや状況を受け入れながら、柔軟に目標を持つことだ。たとえば、目標を「今日はこれだけやろう」と小さく設定する。結果が思うようにならなくても、「それでもいい」と自分を許す。
すると、少しだけ心が軽くなった。期待を手放すことで、自分の中に余白ができ、その余白が新しい気づきや柔軟な考え方を育ててくれるのを感じた。
両親に対しても同じだ。病気を抱えながらも頑張る二人を見ていると、「もっと楽に過ごしてほしい」「もっと健康でいてほしい」と強く願う自分がいる。でも、それは私がコントロールできることではない。できるのは、今の二人を受け入れ、その中でできる支えを少しずつ提供することだと分かった。
期待を少し手放すことで、不思議と感謝の気持ちが湧いてくるようになった。「こうであってほしい」という思いを脇に置くと、「今、ここにあるもの」への感謝が自然と浮かび上がってくる。
未来に期待を持つことは悪いことではない。でも、その期待に縛られることで自分を苦しめるのなら、少し手放してみる勇気を持つのも一つの選択だと思う。
これからも、期待しすぎず、自分のペースで進んでいきたい。思い通りにならないことがあっても、「それでも大丈夫」と思える自分を育てていきたいと思う。
期待を少し軽くすることで見える景色がある。私はその景色を楽しみながら、今日もまた新しい一歩を踏み出していこうと思う。
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