ひとりっ子で、障害者で、両親が持病持ちの私が、考える悩み

第26話 涙を流す意味

「泣いたっていいんだよ。」

そう言われたとき、私はぎゅっと堪えていた涙が一気に溢れた。涙を流すことは、どこか弱いことだと思っていたからだ。でもその日、私は涙の意味を少しだけ理解したような気がした。

両親の病気、経済的な不安、自分の将来――こうした問題が積み重なると、気づかないうちに心が硬くなってしまう。感情を表に出すことは、なんとなく「負け」だと感じて、私はずっと我慢してきた。だから、泣くことすら「弱さの象徴」のように思えて、涙が出そうになっても必死に堪えていた。

でもある日、友人にふと本音をこぼしたとき、「ずっと辛かったんだね」と言われて、気づけば泣いていた。その涙は止まらなくて、自分でも驚いた。でも、不思議と泣き終わった後、心が少し軽くなった。

「涙には意味がある」と聞いたことがある。涙を流すことで、心に溜まった感情が浄化されるのだと。それは、悲しみや悔しさだけでなく、ずっと抑え込んでいた不安や孤独が形を持って外に出ていく行為なのだと思う。

泣くことを「弱い」と思っていた自分に伝えたい。涙は、むしろ心が頑張りすぎているサインなのだと。そしてそれを流すことで、心は新しい一歩を踏み出す準備ができるのだと。

母もまた、泣かない人だ。どんなに体が辛くても、経済的に苦しくても、母は「大丈夫」と笑ってみせる。その姿を見るたびに、私も「強くならなきゃ」と思っていた。でも、ある夜、母が一人で小さく泣いている姿を見てしまった。気づかなかったふりをしたけれど、その日から私は「泣くこと」を少しだけ許せるようになった気がする。

誰かに涙を見せることは勇気がいる。でも、涙は「もう頑張れない」と叫ぶだけではなく、「ここからまた頑張るための時間をください」と心が訴えているサインなのだと思う。

今は無理に涙を堪えないようにしている。辛いとき、悔しいとき、不安でどうしようもないとき――そんなときは、一人の部屋で静かに泣くこともある。そして、泣いた後は少しだけ自分に「よく頑張ったね」と声をかけるようにしている。

涙を流すことは、決して弱さではない。それは心が強さを取り戻すための大切な時間だ。涙とともに不安や疲れを外に流し、空いた心の隙間に少しずつ新しい希望を入れていけばいい。

私は今日もまた、自分の心と向き合いながら生きている。涙を流す日もあれば、笑う日もある。そんな日々の中で、少しずつ自分を受け入れながら、前へ進んでいきたいと思う。

涙の後には、きっとまた、穏やかな日が訪れるから。