第25話 自分らしくあるために
「自分らしさって何だろう?」
最近、この問いをよく考えるようになった。両親の病気や将来の不安に向き合いながら、自分が「どう生きたいのか」という根本的な部分を置き去りにしていた気がする。それを思い出させてくれたのは、何気ない友人との会話だった。
「最近さ、自分が本当にやりたいことって何だろうって考えるんだよね。」
友人がそう言ったとき、私ははっとした。私にとって「やりたいこと」や「自分らしさ」というのは、ずっと後回しにしてきたテーマだった。まず両親を支えること、まず生活を成り立たせること――そればかりを優先してきた結果、いつの間にか自分自身のことを考える余裕を失っていたのかもしれない。
自分らしさとは何だろう。それは、自分の好きなことや大切にしたいものを正直に選び取ることではないかと思う。子どもの頃、私は絵を描くのが好きだった。夢中でクレヨンを使い、紙いっぱいにカラフルな世界を広げていた。その感覚を思い出すと、不思議と心が軽くなる。
最近、久しぶりにスケッチブックを開いてみた。特別なテーマがあったわけではなく、ただ思うままにペンを動かしてみた。線が紙の上に形を作り、少しずつ色が加わる。完成した絵は誰かに見せるものではなかったけれど、それでも「自分だけの世界」がそこに広がっている気がした。
「自分らしくあるために何ができるだろう?」
そう考えるとき、私は日々の小さな選択が大事だと思うようになった。やりたくないことを無理にやらないこと。やりたいことを少しずつでも始めてみること。完璧を目指さなくても、自分が「これでいい」と思える時間を作ること。
もちろん、現実の問題はすぐには消えない。両親の健康のこと、経済的な不安、将来の見通し――それらと向き合いながら、自分らしさを見つけるのは簡単ではない。それでも、日々の中で自分にとっての「これが私らしい」と思える瞬間を大切にしたいと思う。
友人との会話の最後に、私は「最近、絵を描いてみたんだ」と話してみた。すると友人は、「いいじゃん!また描いてみたら?」と笑顔で言ってくれた。その言葉に背中を押されて、私はまたスケッチブックを開こうと思う。
自分らしさは、他の誰かに決められるものではない。それは、自分自身が選び、感じ取るものだと思う。これからも、自分らしくあるための時間や選択を少しずつ積み重ねていきたい。そして、それが私の人生にとってささやかな光となることを願っている。
「これが私だ」と胸を張れる日はまだ先かもしれない。でも、その道を歩むための小さな一歩を、今日もまた進んでいこうと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます