第20話 自分を受け入れるということ
「自分を受け入れる」という言葉を、何度も耳にしたことがある。でも、それがどういう意味なのか、本当に理解できたのは最近のことだ。受け入れることは、自分の欠点や弱さを許すこと。けれど、それが思った以上に難しい。
私はずっと、自分に厳しい人間だった。「もっと頑張らなければ」「自分がしっかりしないと」と、いつも自分にプレッシャーをかけてきた。それは、両親が病気で大変な思いをしている中、自分も何かを犠牲にして支えなければならないという思い込みがあったからだ。
でも、その思い込みは私を苦しめるばかりだった。どんなに頑張っても、「十分」と感じることはなく、いつも「これでは足りない」と自分を責めてしまう。それが、心に疲れを溜め込む原因だったのだと思う。
ある日、友人にそんな話をしたことがある。「私なんて、全然ダメだ」と漏らしたとき、その友人は驚いた顔をして言った。
「あなたは、自分をダメだなんて思う必要ないよ。むしろ、すごく頑張ってると思う。自分に優しくしないと、倒れちゃうよ。」
その言葉は、私にとって衝撃だった。自分が「ダメだ」と思っていた部分を、他人は「頑張っている」と見てくれるのだ。そのとき初めて、自分に対して優しくしてもいいのかもしれないと思えるようになった。
「自分を受け入れる」というのは、「弱さも含めて自分を許すこと」だと気づいた。それは、完璧でなくてもいい、何もできない日があってもいい、と自分に言い聞かせることだ。
最近は、あえて自分に「今日はこれだけでいい」と言う練習をしている。たとえば、掃除をしようと思っていたのにできなかった日があっても、「今日は休む日だった」と自分に言い聞かせる。少しずつ、それを繰り返すことで、自分を責める気持ちが薄れていくのを感じている。
もちろん、完全に自分を受け入れられるようになったわけではない。でも、「許せる部分」を少しずつ増やしていくことで、自分の中に余裕が生まれてきたのは確かだ。その余裕が、不安や悩みを和らげてくれる。
自分を受け入れることは、簡単なことではない。でも、それは自分を大切にする第一歩だと思う。誰かに頼ったり、何かを諦めたりしても、それは弱さではない。それもまた、自分を守るための大切な選択だ。
これからも、自分に少しずつ優しくなれるように努めたい。自分を受け入れることで、周りの人たちとももっと穏やかな関係を築ける気がしている。そしていつか、「これが私だ」と胸を張って言える日を迎えたいと思う。
今はまだ道の途中。でもその道のりを、一歩ずつ進んでいきたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます