第8話 お金の不安という現実
私の中で、常に頭を占めている大きな悩みのひとつに「お金」がある。両親の病気が悪化してから、家族の会話の中でお金の話題が増えた。医療費、生活費、これからの老後――そんな話を聞くたびに、私の胸にズシリと重たいものがのしかかる。
母が入院を勧められたとき、「お金がかかるから」という理由で断った姿が忘れられない。治療を受けることで少しでも楽になる可能性があったのに、その道を選べなかった母を思うと、何とも言えない悔しさと無力感が押し寄せてくる。私がもっと稼げる人間だったら、この状況を変えられたのではないか――そんな考えが頭をよぎる。
障害年金を受け取りながら生活している私は、経済的に余裕があるとは言えない。それでも、今はまだ家族が支えてくれているから何とかやっていけている。でも、両親がいなくなった後、障害年金だけで暮らしていけるのか、と考えると不安が止まらない。
一度、障害年金の支給額と生活費のシミュレーションをしてみたことがある。家賃、光熱費、食費、医療費――すべてを計算に入れると、余裕がほとんどないことがわかった。突発的な出費があれば、すぐに生活が立ち行かなくなるだろう。そんな未来を想像すると、目の前が真っ暗になる。
私の父は、若い頃からずっと働き続けてきた。それでも病気になってからは仕事を辞めざるを得なくなり、現在は年金とわずかな貯金で生活している。「働けるうちにもっと稼いでおけばよかった」と父が呟くのを聞くたびに、将来の自分と重ね合わせてしまう。
働きたくないわけではない。ただ、精神的な負担や体調の問題で、思うように就職活動ができない自分がいる。少しずつ動こうとしても、「できるだろうか」という不安が先立ち、一歩を踏み出せずにいる。それなのに、将来の生活費のことを考えると、何かしなくてはいけないと思いながらも、どうして良いのか分からない。
最近、福祉窓口で生活保護について話を聞いた。「もし本当に困ったときは頼ってください」という言葉が、少しだけ安心感を与えてくれた。でも、それを選ぶことが「自分の努力が足りなかった証明」になるのではないかという気持ちもどこかにある。
それでも、「頼れるものは頼る」という考え方を少しずつ受け入れようと思うようになった。家族や自分だけで全てを解決するのは難しい。公的支援や福祉サービスは、そのために存在している。誰かに頼ることで、心の余裕を取り戻すこともまた大切なことなのだと信じたい。
お金の不安はすぐに消えるものではない。けれど、それと向き合いながら少しずつ選択肢を広げていくことで、未来の見え方が少しずつ変わるのではないかと思う。
今はまだ、自分に何ができるのか模索中だ。でも、この不安を抱えたままでも、支えを求めながら歩いていけば、きっと何か道が見えてくると信じている。
ひとりっ子で、障害者で、両親が持病持ちの私が、考える悩み 星咲 紗和(ほしざき さわ) @bosanezaki92
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ひとりっ子で、障害者で、両親が持病持ちの私が、考える悩みの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます