第6話 両親への感謝と申し訳なさ

「無理しなくていいんだよ」

母がそんなふうに私を気遣う言葉をかけてくれるたび、私は胸が締め付けられるような気持ちになる。母が本当に言いたいのは、「無理しないで」と言いながら、実は「もう少し頼れる人になってほしい」なのではないかと感じてしまうからだ。


両親はいつも私を心配してくれる。障害を抱えながら生活している私にとって、彼らの存在がどれだけ支えになっているか、言葉では言い表せない。それなのに、私は彼らに何かを返せているだろうか。むしろ、私は彼らの負担になっているのではないか、そう思うことのほうが多い。


母は糖尿病のせいで食事制限をしているが、料理好きだったこともあり、食事作りに手を抜かない。「これ、あなたの好きなやつだよ」と笑顔で料理を差し出してくれる母の姿を見ていると、私にはその優しさが痛いくらいに伝わる。それでも、「おいしい」と答える以外に、私ができることがないことが悔しい。


父は透析のために週に何度も病院に通う。疲れているはずなのに、「仕事と違って体を動かすだけだから」と言って、家事の手伝いをしてくれることもある。そのたびに、「本当はゆっくり休んでほしい」と思うものの、自分が何もできていないことへの情けなさに押しつぶされそうになる。


感謝の気持ちは確かにある。でも、その感謝と同時に、私は申し訳なさを感じる。両親に対してもっと何かできるはずだという気持ちと、自分の無力感が混ざり合って、どうしても心が晴れない。


特に夜、布団の中で考え込むことが多い。「これから、どうしたらいいのだろう」と。それでも答えは出ない。答えを探しているつもりなのに、考えるほど自分の未熟さや無力さを思い知らされるだけだ。


最近、母に「ありがとう」と言葉にしてみた。「いつも助けてくれてありがとう」と。その一言を伝えるだけで、母は少し笑ってくれた。「なんだか気恥ずかしいね」と返されたが、その笑顔を見て、私は言葉にすることの大切さを改めて感じた。


両親に対する感謝をもっと素直に伝えていきたい。それが、私にできる小さな恩返しの一歩になる気がする。そして、その「ありがとう」の積み重ねが、いつか私をもっと強くしてくれるのではないかと思う。


申し訳なさを完全に消すことはできないけれど、感謝の気持ちを言葉や行動に変えていくことで、少しでも自分自身を前に進めたい。この気持ちを大切にしながら、今日もまた両親と向き合っていこうと思う。

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