第3話 未来の重さと向き合う
「将来どうするつもりなの?」
母からそう聞かれたのは、何気ない日常の会話の中だった。私の胸の中にあった漠然とした不安が、その言葉で一気に現実味を帯びた。母の問いに私は「なんとかなるよ」と笑って答えたけれど、その声はどこか震えていたと思う。
将来のことを考えるたび、頭の中に「もしも」のシナリオが無数に浮かんでは消える。もし両親が介護を必要とするようになったら?もし一人になったら?もし経済的に立ち行かなくなったら?どれも現実になり得ることで、そのたびに重たい蓋をして考えないようにしてきた。
でも、未来から逃げ続けるわけにはいかない。だからこそ、こうして少しずつ向き合っている。このエッセイを書くことも、自分と向き合うための一つの方法だ。まだ何も解決していないけれど、書くことで心の中にあったモヤモヤが少しずつ形を持つようになってきた。
最近、役所に問い合わせをしてみた。「両親が介護を必要とするようになった場合、どんなサービスを利用できるのか」「自分自身の生活を支えるために、どんな支援があるのか」。正直に言えば、電話をかけるまで何度も迷った。「どうせ大した答えは返ってこないだろう」と思ったからだ。でも、実際には想像していた以上に丁寧に話を聞いてくれて、具体的な支援の方法や制度を教えてくれた。
「これで不安がなくなった」とは言えない。でも、知らなかったことを知ることで、少しだけ未来が明確になった気がした。何もせずに悩み続けるより、少しでも行動することで、不安はほんの少しだけ和らぐものなのかもしれない。
一人暮らしをすることも、よく頭に浮かぶテーマだ。今のままでは、両親がいなくなった後の生活を想像することができない。どこに住むのか、どんな形で生計を立てるのか。自分一人ではどうにもならない問題ばかりだ。
でも、ふと思う。答えが出ないからといって、今から全てを決める必要はないのではないか。少しずつ調べて、少しずつ準備する。それで十分なのかもしれない。「考えることが不安を生む」というのは本当かもしれないけれど、「考えずに先送りすることが、もっと大きな不安を生む」というのも事実だ。
未来の重さは、まだ私にとって耐えがたいものだ。でも、この重さと向き合うことで、自分なりの希望の道筋が見えてくることを信じたい。すぐには変わらなくても、今日少しだけ勇気を出した自分を褒めてあげたい。
未来に踏み出すための一歩。それはまだ小さいけれど、確かにここにある。
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